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テレビのデジタル化がドライビングフォースとなり、全ての情報メディアが一旦、収縮する時代の羅針盤

ソーシャルテレビ考、グーグルとソニーのアンドロイド・テレビが何故、凄いのか!!スマートフォンにも影響し、CATVと衛星テレビが滅びる

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<序文>

2010521日付けの日経朝刊のトップ記事にも取上げられていましたが、「スマートテレビ」と命名されたグーグルとソニーのアンドロイドテレビが2010年秋に登場します。スマートフォン、更にキンドル、アイパッドのようなタビュレット型電子端末の次はいよいよコネクトテレビ(その視聴形態としてのソーシャルテレビ)としてテレビがインターネットに取り込まれる時代です。

 

去る518日ロンドンで行われたコネクトテレビサミットの議論を参考にコネクトテレビ(その視聴形態としてのソーシャルテレビ)の動き、そしてアンドロイド・テレビの持つ意味を解説しますね。

 

<アンドロイド・テレビを支えるコンセプトはコネクトテレビ>

 

コネクトテレビとはインターネットに接続するセットトップボックス内臓のような付加装置を持ったテレビのことを言います。これまでヤフーなどが対応ソフトを出してきました。

インターネットとテレビが一体化するテレビの完全デジタル化の時代は、当然、テレビでネットコンテンツを見たいというニーズが出ています。これまでのアプローチ法はネットコンテンツとテレビ信号をバラバラに見る方式でした。その中心がHTML5と呼ばれる汎用ブラウザーでした。しかしでは汎用ブラウザーでは複数のコンテンツを同時に見るには、複数のブラウザーを同時に立ち上げなければならず、実用的ではありませんでした。こういう形ならば「動画は全てパソコンで見る」といらちな日本国民はテレビから離れていきました。その典型がニコニコ動画とかustreamですね。

  2009年秋、ニコニコ動画がニコニコ実況掲示板をコネクトテレビ用に立ち上げましたが、この点が大きな阻害要因でした。(テレビ番組全体のニコニコ化の試み)

 

それを解決するのがアップストアの成功に刺激されたアップス方式です。これはHTML5と呼ばれる汎用ブラウザーに代わる独自アプリの販売方式でした。コネクトテレビサミットの議論ではフランスのトップテレビ局TF1などが、アップの販売はテレビ局の収益チャンスと述べている点から見ても今後の主流となるでしょう。欧州の独仏連合によるオープンソースのHbbTVHybrid Broadcast Broadband TV)や英国BBCのProject Canvasの実施もコネクトテレビの実現形態です。そしてそこにオープンソースのアンドロイドテレビがソニーとインテルにより販売開始されます。

欧米は歴史の大きな方向性には辛抱強いですねえ。日本のように目の前に現世のご利益が無ければ見向きもしない歴史認識の弱い人々とは異なるようです。

 

 ★ BBC offers connected vision for Olympics 2012

 

★★ Google says Google TV coming this fall


 

 ★ Playboy can keep 80% of Connected TV revenues

 

<アンドロイドテレビとアップス方式はスマートフォンの覇権にも影響する>

 

これまではソニーのような消費者メーカーとかベライゾンコミュニュケーションのファイオステレビのような各テレビ事業者が勝手にアップストアを立ち上げて独自企画の上にアップス開発を促してきました。しかしこれではアップス開発のコミュニティにはあまりうま味は無い為、アップスの数が増えません。しかしこのコネクトテレビの議論は欧米では凄まじく盛り上がっており、対応テレビも売れています。

 

例えばドイツのHbbTVの場合は以下の通りです。ドイツではバンクーバーオリンピックの中継を視聴者が主体的判断でフェースブックやツイッターのタイムラインを出してソーシャルテレビ(ソーシャル視聴)を楽しんでいました。こんな動きはドイツでは1936年のベルリンオリンピックのテレビ放映以来と言われています。メディア論はアナログテレビが戦後の民主主義体制を支えるコミュニティを作ったと言っていますが、いよいよデジタルテレビがテレビ視聴のライフスタイルにも影響し始めた訳ですね。

★★ <ソーシャルテレビ> ドイツのHbbTVは売れ行き絶好調


 

ドイツのHbbTVは200910月販売後、三ヶ月で546,000 connected TV sets 売れたそうです。これは20091年間で売れたテレビの14%に当たります。従って2010年には少なくともこの23倍程度は売れそうですね。

 2010年の販売予想は 2百万台
 2011年は        4百万台

状況はアメリカでも同様です。

 

 

 スマートフォンやiPadのようなタビュレット端末でアプルとアンドロイドの凄い争いが始まっています。これまでアプル有利と見られていた点は第三者と呼ばれるその多くがネットベンチャーである開発事業者のコミュニティの差でした。アップルは既に20万件の登録をアップストアにしており、圧倒的でした。しかしアンドロイドが(タビュレット端末とか)更にデジタルテレビ=コネクトテレビ=ソーシャルテレビにまで広がるとなれば、アンドロイド上でのアップス開発のコミュニティは一挙に膨れ上がる可能性があります。筆者はタビュレット端末にまで広がるアップストアの勢いをこれまで評価してきましたが、テレビをアンドロイドが押さえ始めたとなるとかなりこの形勢は変わってくるかもしれません。

 

 重要なのは開発者コミュニティの支持だと考えられます。零細なITベンチャーの人たちが「これは儲かる」と思えばアンドロイドのアップスを一斉に作りははじめ、スマートフォンもテレビもそしてタブレットもと言う話になれば圧倒的にアップスの本数が増え、魅力が増します。

 嘗てパスカルと言う優れたプログラム言語が登場しましたが、伝統的なフォートランの牙城は揺らぎませんでした。それはフォートランは圧倒的なクラウド(コミュニティ)の支持があったためです。

 アンドロイドテレビは上記の理由によりスマートフォンなどにも大きく影響します。

<衛星テレビやCATVのコードカットが促進される>

 

ロンドンで行われたコネクトテレビサミットの議論ではアップスの販売だけではなく、コンテンツのマイクロ取引に近い話をプレイボーイテレビ(雑誌のプレイボーイです。)がしていました。伝統的なプラットフォーム(CATVや衛星テレビ)では、レベニューシェアで8割がプラットフォーム、2割がコンテンツ提供元(プレイボーイテレビ)だそうです。これを思えばソーシャルゲームのZyngaとフェースブックの仮想通貨を巡るレベニューシェアの対立(Zyngaの取り分7割、フェースブックの取り分3割)など、ずっと全うな話なのかなと思います。

 

一方コネクトテレビの時代になれば、メーカーはコンテンツ販売や決済機構に興味が無い為、プレイボーイテレビのようなコンテンツ提供元が実施するそうです。そうなれば、プレイボーイテレビの主張するレベニューシェアで2割がプラットフォーム、8割がコンテンツ提供元(プレイボーイテレビ)がインターネットでは常識と言うことになります。

 

現在、逆流の報告が出ているCATVや衛星テレビを止めてインターネットでの見逃し放送へというコードカットの流れですが、アンドロイドテレビが出れば、アップスが大幅に増えて魅力が増し、コードカットが促進されるかもしれません。

 

日本では殆ど議論されていないコネクトテレビの活用ですが、またぞろ黒船によるインパクトで動き出すでしょう。20117月にはコネクトテレビ、ソーシャルテレビへの関心が不可避的に盛り上がります。今回の黒船には欧州、アメリカの経験からソニーだけではなくシャープや東芝、パナソニックも乗船している点に注意してください。日本では殆ど情報を出さなかった彼らですが。

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