No.0 これからインターネットと匿名性の話をします
「匿名性」「匿名」という言葉をGoogle アラートに入れておくと、毎日のようにいくつものニュースが手元に届きます。匿名の寄付だったり、匿名の相談窓口であったり、はたまた匿名によるいじめであったり、ニュースの種類は多岐に渡っています。
実際、匿名性に関する研究は、一世紀以上にわたって行われてきました。Rainsらの論文によれば、ジャーナリズムと匿名性、政治活動と匿名性、意思決定と匿名性、心理学と匿名性など、匿名性の研究分野は大変広く、しかも匿名性の定義や扱われ方は断片的です。1990年代に入ってからは、インターネットと匿名性に関する研究も数多くなされてきました。一方で、匿名性についての議論の難しさは、それが「匿名性は善か悪か」という是非論に陥ってしまうところにあると感じています。昨年初頭には毎日新聞による「ネット君臨」で強い問題提起がされていますが、これも匿名性についての研究というよりは、匿名性の是非を問う記事でした。また、匿名は無責任か否か、というテーマについては、数多くの意見がブログなどで書かれています。
しかし、自分がネットに何かを書く場合には、どうでしょうか?
このブログを読んでおられる方の多くは、なんらかの形でブログや掲示板、SNSなどと言ったコミュニティに参加しておられることと思います。そこではどんな名前を使っていますか?実名、お気に入りのハンドル、仲間にしか通じないニックネーム。時には「通りすがり」と書き込むこともあるかもしれません。ブログに関して言えば、Blog 定期リサーチ(25)(2006年5月26日)では、実名のブログは6.5%にすぎないといいます。
私自身も、実名のブログのほか、友人にのみわかるニックネームで書いているブログを持っています。いずれのブログも記事が蓄積されていますので、いまさら書き逃げもできないと思っています。
匿名vs実名、という議論は現実に即さないのではないか、というのが私の問題意識です。個人が特定されることへ抵抗感は、必ずしも発言の無責任さとは結びつかないでしょうし、時には実名の人間関係に対する配慮が理由のこともあるでしょう。一方で、ころころと名前を変えられては、同一人物だとわからないという見方もあるでしょう。
インターネットがもたらす匿名性について、これからしばらく書いて行こうと思います。
参考資料:
Rains, Stephen A. and Scott, Craig R.: To Identify or Not to Identify: A Theoritical Model of Receiver Resposes to Anonymous Communication. Communication Theory 17 pp61-91,2007
Blog 定期リサーチ(25):2006年5月26日――「Blog は匿名で作成」9割以上
http://japan.internet.com/research/20060526/1.html
毎日新聞社 (2007/10/20)
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ひろゆきのインタビューが長くなっていた