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[セカンドライフ] 創造の限界 陽明門作りに挫折しそうな中、モダン建築と人工美の模倣について考えてみた

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Secondlifeで初めに構想したのは世界遺産「日光東照宮」をこの世界に構築してみることでした。「日光を見ずして結構というなかれ」といわれるように、世界でもっとも美しい神社として君臨するこの建造物を、SecondLifeのツールを使って完璧に再現してみようとスタートしたわけです。

僕はもともと工業意匠(インダストリデザイン)の道を選ぼうとしていたこともあり、写実的な細かいイラストなどを描くのは得意で、どうにかなるだろうと思っていました。しかし、これがななかなか困難だったのです。SecondLifeのツールが使いにくいせいにはしたくないのですが、陽明門の複雑な曲線や彫刻の優美さ、そして細かいパーツがきわめて高い完成度で絡み合う、この建築物は、単なる直線と曲線を並べてどうにかなるというものではなかったのです。


その後、手つかずだったGINZAの事務所を取り急ぎ組み立てることとなり、おかげでSecondLifeツールのテクニックが向上しました。陽明門でうまくいかなかった部分もいくつかクリアになったのですが、やっぱりなかなか思うようにはいかない。どうしても写真だけでは再現できない、構造をもっとよく知る必要がでてきたのです。

それで、分厚い資料を図書館で借り、あらゆる角度から構造を知るためにプラモデルを購入しました。それで、大分様子が分かってきたのですが、それでも造ってみると、実際見たときの美しさは再現できない。設計図通りでも、美しくないことがあるのです。理由は彫刻が足りないとか、色が十分でないとか。そして現在、挫折寸前のところまできました。完成するまでは辞めるつもりはありませんが。

具体的に何が難しいかというと、まず屋根とか、灯籠の曲線ですね。パーツを組みあわせて形を似せればいいというわけじゃないんですね。その質感、配置、すべてが完成されないと陽明門にはならないんです。彫刻も非常に難しいです、サグラダ・ファミリアのように彫刻も建築の一部なので、テクスチャを張っただけだと十分じゃないのです。さらには、その細かい配置も重要でした。

これらを知るためには設計図だけでなく、歴史とか謎解きの本も必要になってきました。あと、当然、SecondLifeにはオブジェクトを構成するプリムという構成要素の単位があり、土地によって配置する要素の数が制限されていますので、細かければいいという訳でもありません。この点から考えると、かえってプラモデルとか模型の方が造りやすいと思います。実際、簡単でした。手触りでこの曲線は表現できるのです。

この「SecondLifeで人工美を再現する」というあたりが、SecondLifeの物作りの最大の壁といえるでしょう。現代建築のような「コンピュータで設計して、物に落とす」という流れは、SecondLifeではやりやすいのです。逆にコンピュータのツールを使って設計されたであろうモダン建築の資料をよく見ると、いかにもSecondLifeにありそうな曲線と直線の建物ばかりです。おおざっぱな話ですが、モダン建築というのは、今までの人工美的建築ではなしえなかった発想を、机上というかコンピュータのツール群で構築し、高度な建築手法で実現していといってもいいのかもしれません。SecondLifeはモダン建築には適しており、モダン建築はコンピュータを使ったデザインといってもいいような気がします。

陽明門のような人工創作物の至高のようなものは、逆にコンピュータ内の設計思想には合わず、再現するのがとても難しいということが今回よくわかりました。単にレイアウトを整えるようなデザインではなく、複雑かつ多数の要素が絡み合い、技によって構築される創造物は、やはりそれに近いプロセスを踏まないとならないのだということです。無駄に思える技は、じつは創造性の源泉であったのではないか、そんなことを考えました。

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