不正アクセスで長期停止するサービスたち。ぽすれん(GEO宅配レンタル)、銀のさら、ツイキャス
私がよく利用していた「ぽすれん」が、1週間以上サイトを閉じています。
11月4日にサイトを開いても、表示されるのはメンテナンスの案内。10月15日の不正アクセスを受けた対応で、終了時期は未定のままです。DVDを借りようと思っても、新しい注文を入れられない。
この前はSmartNewsが止まりました。普段いちばん使っているニュースアプリなので、朝から困りました。そちらは日常使う機能がかなり戻りましたが、宅配レンタルも、寿司のネット注文も、ライブ配信も、まだ止まっているところがある。
不正アクセスのニュースでは、どうしても個人情報が何件漏れたかに目がいきます。でも、いつも使っているサービスが何週間も使えない、という被害もあるんですよね。
※以下は2026年11月4日に確認した公式案内に基づきます。停止している機能や再開状況は変わるため、利用時にはリンク先の最新情報をご確認ください。
ぽすれんとGEO宅配、止まった日は同じではない
ぽすれんのメンテナンスは10月24日11時から。GEO宅配レンタルは、それより1週間早い10月17日21時からです。どちらも終了時期は未定。GEO宅配は既に2週間以上、ぽすれんも10日以上になります。
両方の案内が挙げているのは、10月15日に発生した第三者によるシステムへの不正アクセスです。ゲオは外部の専門機関と調査した結果、個人情報・機密情報の外部漏えいは確認されなかったと説明し、セキュリティ対策を強化するためにサービスを停止しています。
ただ、物流まで全部止まっているわけではありません。新しい注文と登録情報の変更はできませんが、メンテナンス前の注文や月額レンタルの自動発送は処理する、返却も通常どおり受け付ける、という案内です。
借りているディスクは返していいし、自動発送も続く。ただ、新しく選んで借りることはできない。長く使っている人ほど、次は何が届くのか、登録している内容を変えられないのか、と気になるところでしょう。
それにしても、ぽすれんの掲載文書は10月24日付、GEO宅配は10月19日付。復旧の見通しが立たないのは仕方がないとしても、その後の状況を知りたい。今も同じ段階なのか、作業が進んでいるのか、待つ側には見えないんですよね。
サイトは止まっているのに、メルマガとXは平常運転
しかも、私のところには10月24日13時33分に、ぽすれんから普通の販促メルマガが届いています。件名は「旧作全品【60円】の大特価!準新作割引クーポンも!」。メールには10月27日13時までのキャンペーンが載っています。
サイトを閉じたのは、その日の11時です。注文できなくなった後に「安く借りられますよ」。いや、借りられないんだがw
公式Xでも10月25日にハロウィーン特集を紹介し、同日には11月6日レンタル開始作品の告知をしています。サイトはメンテナンス中なのに、届く情報は平常運転。利用者としては「え、借りられるの? 止まっているんじゃないの?」となります。
セキュリティに関わる問題では、社内でも共有する情報や相手を絞ることがあります。販促を担当する部署や、広告代理店、業務委託先まで状況が伝わるには、さらに時間がかかることもある。予約済みのメールや投稿だけが、そのまま出てしまうこともあるでしょう。
今回のメールや投稿がどう運用されていたかは分かりませんが、利用者に届いたものはこの状態です。
攻撃の手口や調査中の情報まで販促担当に渡す必要はないでしょう。でも、「新規注文は停止中。通常の販促配信も止める。この案内へ誘導する」という業務上の連絡は必要です。利用者には社内の情報統制も委託先との分担も見えません。同じぽすれんから、矛盾する案内が届いているように見えるんですよね。
歴史のあるサービスは、おそらく大変
ぽすれんは、旧ライブドアが始めたサービスです。2008年にゲオが買収し、2009年に始まったGEO宅配レンタルも株式会社ぽすれんが運営していました。ゲオの別サービスと並んでいるけれど、もともとはそちらの宅配レンタルも、ぽすれんが担っていたんですよね。
私のところには、今年10月16日にも「livedoorID」から「ぽすれんID」への切り替えを勧めるメールが来ています。livedoor IDによるログインは2021年3月31日に終了した、登録情報やマイリスト、レンタル履歴などは引き継げる、という内容です。終了から5年以上たっても、会員の移行案内が続いているんですよね。
長く続けているサービスには、昔の会員、昔の契約、残っているポイントや履歴がある。ログイン方法を変えるにも、お客様の情報は引き継がなければならない。「新しくしました。昔のは忘れてください」とはいかない。中の人は、おそらく大変です。
このメールでサーバーまでライブドア時代のままだと分かるわけではありません。ただ、長年の利用者を抱えたサービスを維持する仕事の一端は見えます。
求人から分かる、内部の技術事情
こういう会社の裏側は、エンジニアの求人を読むと結構見えます。何で作っているのか、何を保守するのか、どこを作り直したいのか。採用するには、入ってくる人にその仕事を説明する必要がありますからね。
旧ゲオネットワークス、現在のセカンドリテイリング・テクノロジーズの募集終了したWebプログラマー求人には、保守・新規開発の対象として「ゲオ宅配レンタル」「ぽすれん」が明記されています。開発環境にはPHP、Perl、CodeIgniter、Zend Framework、Smarty。データベースにはMySQL、PostgreSQLが並んでいます。
言語の名前だけではありません。検索エンジンのApache Solrの調整、ゲオ会員認証基盤のOpenIDの保守・開発、AWSやIIJ GIOを使ったインフラ構築まで仕事内容に載っている。データを一時保存して処理を速くするMemcachedも環境欄にあります。求人票、思ったよりシステムの手掛かりが多いw
この求人は更新日表示が2019年で、会社紹介の方には今年の社名変更も反映されています。複数サービスの募集でもあるので、そのまま現在のぽすれんの構成図にはできませんが、検索、会員認証、データベース、キャッシュと、保守する範囲の広さが分かります。
もう少し新しいものを見ると、10月27日更新の2028年卒向けWebエンジニア求人では、主要開発技術はPHP・Laravel。ほかにSymfony、Zend Framework、MySQL、AWS、Linux、Apacheが挙がっています。担当には宅配レンタルなど10サイト以上と、決済・ID認証・基盤システムを含むとあります。
さらにグループ公式の社内SE求人には、EC・POS・流通システムを数年単位で刷新し、新旧両方を稼働させるための人員が必要だ、と書いてあります。別の店舗システム刷新の募集では、Java・Spring BootやReactの経験も求めています。こちらは店舗・社内システムの話なので、ぽすれんの構成図には混ぜられませんが、グループで刷新に取り組んでいることは読み取れます。
「新旧両方を稼働させる」というのが、まあ現実ですよね。営業中の店と動いているサービスを抱えながら、中身を取り替える。新しいフレームワークを採用すれば一丁上がり、とはいかない。
古い技術名を見つけたから今回の原因もこれだ、という話にはなりません。バージョンも修正状況も分からない。ただ、求人の仕事内容や募集背景まで読むと、使う側には見えない保守と刷新の仕事が、かなり具体的に出てきます。
銀のさらは約4週間。寿司は電話で頼めるけれど
宅配寿司の「銀のさら」「釜寅」「すし上等」も、公式サイト・公式アプリからの注文が長期間止まっています。
ライドオンエクスプレスホールディングスの10月13日の第3報によると、10月5日以降の不正アクセスを調査していたところ、10月7日早朝に一部サーバーで障害が発生。サーバー運営会社からランサムウェア攻撃の報告を受け、システムを停止しました。
11月4日に銀のさらの公式サイトを見ても、注文再開の案内ではなく、店舗への電話注文を案内しています。10月7日の停止から約4週間です。
電話、店頭のテイクアウト、出前館、Uber Eatsでの注文は受け付けています。サイトにも店舗検索とメニューが用意されています。寿司を届ける商売そのものは続けながら、公式のネット注文が戻っていない状態です。
自前の注文システムが止まっても、別会社のサービス経由で注文を受けられる。出前館やUber Eatsという別ルートがあってよかった。もちろん、それがどこまで受注や配達を補えているかは外から分かりませんが、お客様が注文する道は残っています。
第3報では、最大約650万件の個人情報が漏えいした可能性も公表しています。これは漏えいが確定した件数ではありませんが、氏名・住所・注文履歴などを対象に挙げています。注文できない不便と、自分の情報は大丈夫なのかという心配が、同時に続いているわけです。
ツイキャスは約1週間、視聴も配信も停止
ツイキャスの公式メンテナンス画面には、10月28日10時40分から緊急メンテナンスを実施し、視聴・配信を含む全サービスを利用できないと表示されています。こちらは約1週間です。
公式説明では、不正アクセスの痕跡を検知して停止。10月30日の案内で、侵入された箇所以外にもセキュリティ対策を追加し、再開は11月4日以降の見込みとしています。11月3日21時45分の更新では、次回の案内を11月4日正午過ぎに出す予定としています。11月4日に必ず復旧する、という発表ではありません。
ライブ配信は、その時間に見たり話したりするサービスです。後でサーバーが戻っても、ハロウィーン当日の配信がそのまま戻ってくるわけではない。実際、予定していたハロウィーン限定アイテムの提供は中止になりました。
有料配信やメンバーシップへの対応も気になります。公式画面では、利用できなかった期間への対応は詳細が決まり次第案内すること、受付済みの振込申請は予定どおり処理することなどを説明しています。配信者にとっては、遊び場が止まるだけでなく、仕事や収入にも関わる話です。
なお、同社は今回の件を、その前にあったPHP脆弱性への対応とは無関係と説明しています。時期が近い障害を、全部同じ攻撃でひとまとめにするのも違います。
クラウドが被害を受けると、その上のサービスも止まる
IDCFクラウドでは10月7日にランサムウェアによる障害が発生しました。IDCフロンティアの10月27日の報告では、影響を受けた東日本リージョン1の4ゾーンを利用していた企業・自治体は495。仮想サーバーを管理するポータルの認証システムへの侵入から、仮想化基盤の管理者権限を奪われ、一部の仮想サーバーが停止・暗号化されたと説明しています。
対象外の仮想サーバーは稼働していますが、被害を受けた顧客には代替環境への移行やバックアップの取り出しを案内しています。その基盤を使う会社も、自社サービスを動かし直さなければなりません。
例えばファイバーゲートは、IDCFクラウドへの不正アクセスに伴うサービス停止について、11月2日の第4報で、別環境に再構築し、フリーWi-Fi認証サービスの一部を除く全サービスを再開したと発表しました。
普段意識しなくても、サービスはほかの会社の基盤の上で動いている。その基盤が被害を受ければ、自分たちも止まるし、別の場所で動かす準備が必要になります。
ランサムウェアの復旧は、なぜ何週間もかかるのか
ランサムウェアの被害は、復旧が長引きやすい。昨年から今年にかけても、商品を受注して出荷する物流の現場が、大きな影響を受けました。
アスクルは2025年10月19日にランサムウェア攻撃を受け、段階的にサービスを再開しました。今年1月21日の第17報で、ASKULは停止前の全商品の注文を再開、LOHACOも全面復旧したと発表しています。途中で再開した機能や出荷もありますが、ここまで約3か月です。
アサヒグループも、2025年9月29日のランサムウェア攻撃で受注・出荷システムが停止し、手作業での対応が続きました。今年2月18日の公式報告では、電子受発注は昨年12月に再開し、配送リードタイムの制限も今年2月までに通常化して、物流業務全体が正常化したと説明しています。Web画面が開かない、では済まず、商品が届くところまで影響する。
暗号化されたデータを戻せば、それで終わりとはいきません。侵入経路を塞ぎ、盗まれた認証情報や権限を見直し、ほかに不正な仕掛けが残っていないか調べる必要があります。警察庁も、バックアップまで暗号化される事例が多数あることや、侵入経路・侵害範囲を調べる必要性を説明しています。
バックアップがあっても、戻したシステムの安全性を確かめ、注文・在庫・決済・配送の連携が正しく動くかを確認する作業が残る。安全に戻せるデータがなければ、さらに厳しい。いつもの機器故障と同じ感覚で「再起動すれば戻るだろ」では済まないわけです。
なお、ぽすれんやツイキャスの今回の不正アクセスについて、ランサムウェアだったという発表は、この記事で参照した公式案内にはありません。長く止まっているからランサム、と決めつける話ではないです。
元に戻すより、イチから組み直した方が早いこともある
攻撃された環境をそのまま直し続けるより、安全な別環境にイチから組み直した方が、早く、確実に復旧できる場合もあります。
アサヒの報告にも、影響を受けた全サーバーを再構築した後に健全性を確認し、安全性を確かめたバックアップから復旧したとあります。先ほどのファイバーゲートも別環境に再構築しています。
今年10月の日水物流の障害も、その例です。委託先のIDCFクラウドの被害により全拠点で入出荷業務ができなくなり、10月9日に一部を再開。ニッスイの10月14日の発表では、IDCフロンティア以外のサーバーで新たなシステムを構築していると説明しています。
ここでいう再構築は、業務アプリのコードを全部ゼロから書き直すこととは限りません。安全なサーバーやネットワークを用意し、信頼できるプログラムと設定、確認済みのデータでサービスを組み直すことも含みます。攻撃された環境は調査用に保全し、サービスを動かす環境を別に作る。
ただし、「作り直した方が早い」を実行できるのは、何を作ればいいか分かっている場合です。サーバー構成、業務要件、外部との接続、夜間に動くバッチ、データの持ち方。技術部門がそれらを把握し、構築手順やソースコード、使えるバックアップ、動作を確認する手段を持っている必要があります。
「この処理は誰も知らない」「昔の担当者しか分からない」「仕様書はないけど動いていた」から始めたら、作り直す前に発掘作業になる。しんどい。日頃から自分たちのシステムと業務を理解し、再現できる状態にしているかどうかが、こういうときに効きます。
普段から業務とシステムを理解している技術部門には、こういうときに踏ん張ってもらわなければならない。日常の保守や手順の整備は地味だけれど、復旧するときにゼロから調べなくていいのは大きいです。
システムが戻るまで、商売をどうするか
もう一つ、技術部門だけに任せておけないのが、システムを止めている間の商売です。復旧するまで全部休むのか。一部だけ続けるのか。続けたいとして、現場で本当にできるのか。事業継続計画、BCPはここまで考えておく必要があります。
銀のさらには、電話や出前館、Uber Eatsから注文を受ける道が残っていました。ただ、別の入口があれば必ず大丈夫、というわけでもない。その先の在庫確認、調理、配達、会計が同じ止まったシステムに頼っていたら、そこで詰まります。
電話で受けた注文を誰がどこに書くのか。在庫が分からないならメニューを絞るのか。配達先をどう渡し、代金をどう受け取り、復旧後に注文や売上をどう突き合わせるのか。「あとは現場で手作業でよろしく」は、さすがに無茶です。
受けられる件数も普段とは違います。全部を維持しようとして現場を潰すより、地域や商品、受付時間を絞る判断が必要になるかもしれない。安全に提供できないなら止める。その判断を誰がするかも、障害が起きる前に決めておきたい。
社内メールもチャットも社員名簿も開けない。クラウドに置いたBCPの文書にもログインできない。そんなときに、誰へ連絡し、誰の指示で動くのか。電話番号や最低限の手順をシステムの外でも参照できて、実際に試したことがあるかどうか。立派な計画書が、落ちたシステムの中にしかないのでは困ります。
これは今回挙げた会社が何も準備していなかった、という話ではありません。別の経路で営業を続けている例を見て、自分の仕事ならどうするかと考えます。システムが止まると仕事が止まる、その状態を普段からどこまで引き受けているのか。
次のお知らせがいつなのか。それだけでも書いてほしい
安全を確かめずに再開して、また侵入されたらたまったものではないので、復旧に時間がかかること自体を外から雑に叩く気にはなりません。対応している人には、ちゃんと攻撃者を追い出して戻してほしい。
ただ、「終了時期未定」の画面を毎日見に行く側もしんどい。次のお知らせはいつ出るのか。何が使えて、何が使えないのか。月額料金、購入済みの商品、ポイントの期限などは後でどう扱うのか。まだ決まっていなければ、そのことと、案内する予定を載せてほしい。
ツイキャスの「次は11月4日正午過ぎに案内する」という告知は、復旧日が決まっていなくても出せる情報です。こういう広報・お知らせは大事です。
この前のSmartNewsでも、利用者として状況を知りたくて、アプリや公式発表を何度も確かめることになりました。「次は何時に案内する」と書いてあれば、そこまで待てる。時間になっても復旧していなければ、進捗と次の案内予定を知らせてくれればいい。
次がいつか分からないと、利用者は何度もアプリを開き、サイトを再読み込みし、SNSを探します。何も変わっていない画面に何度も付き合わされる。こちらの時間は無駄になるし、サービス側にも確認のための余計なトラフィックが増える。
「復旧までお待ちください」だけで、いつまで待てばいいか分からないのがつらいんですよね。復旧時刻を約束できなくても、次に説明する時刻は示せる。利用者の時間を無駄にしないためにも、次回発表の予定は書いておいてほしいです。
『サバイバルファミリー』になったら、どうするか
映画『サバイバルファミリー』は、突然あらゆる電気が使えなくなる話です。電話も電車も使えず、明日には戻ると思っていた日常が、翌日になっても戻らない。
あそこまで全部止まったら、出前館もUber Eatsも使えません。別のアプリを入れれば解決、もできない。会社のシステムが一つ落ちる場合から、認証も通信も決済もまとめて使えなくなる場合まで、どこまでなら仕事を続けられるのかは違います。
中の人としては、システムなしでできる仕事、やってはいけない仕事、止める判断と連絡手段を用意する。利用者としては、いつものアプリに頼れないときに、どこで情報を得て、何を使い、何なら後回しにできるのか。注文履歴も連絡先も支払手段も、全部スマホを開かないと分からない状態で大丈夫か。
DVDが借りられないだけなら待てます。でも、同じことが仕事の発注や、日々の食料の調達で起きたら。「明日には戻るだろう」が1週間、1か月と続いても、それぞれの生活と仕事は続きます。
便利に使っているものほど、なくなると困る。ぽすれんの復旧を待ちながら、自分の仕事や暮らしにも、止まったときの手段をちゃんと残しておきたいと思いました。
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