【速報】マグニチュード9.9(M9.9)緊急地震速報 千島列島 気象庁から取消通知(筆者は初めて見た)誤報か?強震モニタには反応なし
さっき、緊急地震速報が鳴りました。しかも練馬区のスピーカーからも「大地震です」とアナウンスが流れた。
強震モニタを開くと、千島列島でM9.9、最大予測震度7、深さ140km。第36報まで出ています。でも、赤い円が広がっていくのに、全国の観測点の色が、全く変わらない。
これは、誤報ですね。
12時49分、気象庁から取り消しの通知がスマホに届きました。この通知は、初めて見ました。通知音は「チーーーーン」。あまりに間が抜けていて、まさにチーーーンな顛末です。
※速報です。2026年10月16日午後の時点で、気象庁は原因を確認中で、今後詳しく説明するとしています(報道)。原因の部分は、過去の公式な事例からの推測です。分かり次第、追記します。
【追記】10月16日13時30分ごろ:続報と訂正
本文は公開時のまま残し、分かったことをここに追記します。
実在の地震があった。12時38分ごろ、カムチャツカ半島付近でM6.9、深さ約160kmの地震が観測されていました(日本経済新聞、気象庁の観測による)。函館市では最大震度1を観測しています(ケータイ Watch)。
本文で「観測点は一つも反応せず」と書きましたが、千島列島のM9.9に見合う揺れはなかった、という意味では変わりません。ただ、小さな揺れ(函館で震度1)はありました。12時46分の画面で、北海道の南側に黄色い点がいくつか出ているのは、この揺れかもしれません。
時刻。発表は12時40分ごろで、報道は一致しています。取り消しは12時48分〜50分ごろと、報道によって幅があります(私のスマホは12時49分)。
原因。気象庁は原因を調査中で、日本経済新聞によれば、16日午後2時から記者会見で説明する予定です。会見の内容は、分かり次第追記します。
推測の更新。ケータイ Watchは、カムチャツカ半島付近の地震を「受けて」緊急地震速報が出たと書いています。そうだとすると、今回は「地震がないのに出た」のではなく、遠くで起きた実在の地震を、近くで起きた巨大地震と取り違えたことになります。本文の推測2(2020年の鳥島近海、遠い観測点で震源と規模を外した)に近い型です。本文で引っかかった「発生」と速報の約3分半のずれも、遠い震源からの揺れが日本の観測網に届くまでの時間で、説明がつくかもしれません。
そして、実在の地震が引き金だったなら、本文で問題提起した不正アクセスの可能性は、さらに低くなります。それでも、M6.9の地震がM9.9・最大震度7の警報になり、北海道から東海までのスマホと防災無線を鳴らした、という事実は残ります。入力と処理の信頼性の問題だ、という問題意識は変わりません。
SNSの反応。
- 首相官邸(災害・危機管理情報)の公式アカウント(@Kantei_Saigai)が、12時40分の緊急地震速報を7分割のスレッドで投稿。1本目の表示回数は約469万、リポストは約5,900(13時25分ごろ確認)。確認した時点では、同じアカウントに取り消しの投稿は見当たりませんでした
- Xのトレンドに「緊急地震速報」「マグニチュード9.9」「地震警報」「緊急速報」が並んだ。アスキーによれば、Xは一時アクセスしにくくなった
- サイバー攻撃を心配する声も。落合陽一氏は「緊急地震速報がサイバー攻撃されたら嫌だ...」と投稿。ニコニコニュースによれば、ニコニコ実況には「揺れてないぞ」「ロシアからのハッキングか」というコメントが流れた
- 取り消しの通知でも警報音が鳴ったことに、驚く声が出ています。端末によって、取り消しの音が違うという投稿もありました。私のiPhoneは「チーーーーン」でした
【追記】10月16日14時の気象庁会見:M6.9をM9.9と過大推定、サイバー攻撃は否定
気象庁が14時から会見しました。報道(マイナビニュース、日本経済新聞)から、要点です。
- 原因:カムチャツカ半島付近のM6.9(深さ約160km)を、緊急地震速報の処理で「千島列島でM9.9」と過大に推定した。観測点の機器ではなく、観測データの処理に問題があった。どこがおかしかったのかは、まだ調査中
- 取り消し:12時48分。発表から8分。地震波は観測されているのに揺れがない、と分かった時点で出した。「深さ160kmで、このあたりは観測点が少ないこともあり、過大であると判断した」
- 警報の取り消しは、今回が初めて。「筆者は初めて見た」どころか、全員初めてでした
- サイバー攻撃:「当該時間帯に外部からのアクセスを確認しておらず、サイバー攻撃ではないと断言できる」(日本経済新聞)
- 取り消しでも警報音が鳴った件:20年以上前に決めた仕様で、いまのところ変更は検討していない(マイナビニュース)
13時30分の追記で書いた推測(遠くの実在の地震を、近くの巨大地震と取り違えた)が、ほぼそのまま当たりました。本文で問題提起した不正アクセスの線は、気象庁がはっきり否定。よかった。ただ、M6.9を3も盛ってM9.9にする処理って、何をどうやったらそうなるんですかね。原因の続報を待ちます。
本文の訂正。
- 本文で、取り消しまで「約13分」と書きました。12時36分を起点にした計算で、誤りです。発表(12時40分)から取り消し(12時48分)まで、約8分です
- 本文で、気象庁が取り消すのは誤報(地震以外の現象を地震と誤認したもの)に限るので、「取り消しが出た=気象庁自身が『地震ではなかった』と判断した」と書きました。気象庁のサイトには、確かにそう書いてあります。ところが今回は、実在の地震(M6.9)を過大に見積もった警報を取り消しました。マイナビニュースによると、会見では、警報を出した後に実際の最大震度が2以下だった場合も取り消す仕様だ、と説明しています。サイトの説明と会見の説明が違う。どっちなんだよ。少なくとも今回は「地震ではなかった」わけではありません
取り消しの音は、末尾の追記で、なぜ人によって違ったのかを書きました。気象庁は「仕様」だと言いますが、私のiPhone SE(ソフトバンク)は、その仕様どおりに鳴らずにチーン。20年前の仕様、見直した方がいいですよ。
何が起きたのか:緊急地震速報、M9.9、最大予測震度7
確認できた経過です。
- 12時36分27秒:強震モニタが示した、地震の「発生」時刻(推定)。震源地は千島列島、深さ140km、M9.9、最大予測震度7
- 12時40分:私のスマホに、気象庁の緊急地震速報が届いた。「千島列島で地震発生。強い揺れに備えて下さい(気象庁)」。地元局の記事は「12時36分、千島列島の地震で緊急地震速報を発表」と書いているが、スマホに届いた速報は12:40だった。強い揺れへの警戒が必要な地域として、道央、道南、東北、関東、東京都の一部、伊豆諸島、中部の一部などが挙げられた
- 12時41分51秒:強震モニタの画面は第22報。予測の円は東北に差しかかっているが、各地の観測点は変わらない
- 12時46分29秒:第36報。表示は第22報と同じ。観測点は変わらない
- 12時49分:気象庁から、「先程(12:40)の緊急地震速報を取消します。」という通知がスマホに届いた

私のスマホに届いた通知です。下が12:40の速報、上が取り消し。取り消しは、本文に「先程(12:40)の」とあって、どの速報を取り消すのかが書いてあります。

12時41分51秒、第22報。赤い円(予測の揺れの到達範囲)が東北に差しかかっています。でも、円の内側の観測点は、静かなままです。(出典:防災科研 強震モニタの画面、筆者撮影)

12時46分29秒、第36報。表示は、第22報とほぼ同じ。観測点の色は、ほとんど動いていません。(出典:防災科研 強震モニタの画面)
強震モニタ(防災科研)の観測点は、実際に揺れを測っている地震計です。予測がどれだけ「大地震です」と言っても、その地震計が反応しないなら、地面は揺れていません。M9.9なら、北海道の観測点が真っ先に揺れているはずです。1か所も変わらなかった。
M9.9とは何か:観測史上最大のM9.5をさらに超える数字
M9.9がどれだけ異常な数字か、計算してみました。マグニチュードが1上がると、エネルギーは約31.6倍になります(式は、エネルギー(ジュール)= 10の(1.5×M+4.8)乗)。
- M9.9のエネルギー:約4.5×10の19乗ジュール。TNT火薬に直すと約107億トン
- 東日本大震災(M9.0)との比較:エネルギーは約22.4倍。揺れの波の大きさ(振幅)は約7.9倍
- 観測史上最大のM9.5(1960年チリ地震)との比較:エネルギーは約4倍
身近なもので並べると、こうなります。
- 広島の原爆(約15キロトン):約71万発分。東日本大震災のM9.0でも約3万2,000発分です
- 人類史上最大の水爆「ツァーリ・ボンバ」(約50メガトン):約214発分
- 世界の1年間の一次エネルギー消費(2023年、約620エクサジュール):約7%。つまり、M9.9は人類が使う1年分の7%を、数分で放出する計算です
- 日本の電気事業者の年間発電量(2023年度、約8,264億kWh):約15年分
そもそも、観測された最大はM9.5です。それを超えるM9.9が、深さ140kmの千島列島で出た、という時点で、数字がおかしい。もし本当に起きていたら、北海道や東北は、いまごろ大変なことになっています。
緊急地震速報の仕組みから、誤報の原因を推測する
先に、気象庁の公式な説明を確認します。
- 緊急地震速報(警報)は、2点以上の観測点で地震波が観測されたときに発表する。落雷などによる誤報を避けるため
- 気象庁が「誤報」と呼ぶのは、落雷など地震以外の現象を地震と誤認して発信された速報。取り消すのは誤報に限る
- 1点だけの観測で発表した場合、所定の時間内に2点目が来なければ、地震以外の揺れ(ノイズ)と判断して、数秒〜10数秒でキャンセル報を出す
つまり、取り消しが出たということは、気象庁自身が「これは地震ではなかった」と判断したということです。
ここで、おかしい点が2つあります。
- 警報だった。警報は2点以上の観測点が必要です。1か所のノイズだけでは出ない仕組みになっている
- 取り消しが遅い。典型的なノイズなら、キャンセル報は数秒〜10数秒。今回は、第36報まで続いて、約13分後
この2点から、「落雷が1か所の地震計に落ちた」型の単純な誤報ではなさそうです。過去の公式な事例から、考えられる原因を並べます。
推測1:複数の観測点(または中継局)に、同時に異常なデータが入った
2013年8月8日、和歌山県北部の地震で、実際より過大な震度予想が出ました。気象庁の調査では、原因は海底地震計のデータを中継する陸上中継局(静岡県御前崎市)の不具合でした。光受信装置の障害で不正な時刻が付けられ、そのデータが処理の不具合で大きなノイズになった。気象庁は、このノイズを地震の揺れとして計算に使ってしまった、と説明しています。
1か所の地震計が壊れたのではなく、データの経路の途中で壊れた。この型だと、複数の観測点のデータが同時におかしくなるので、「2点以上」の条件を、すり抜けます。
推測2:震源の位置とマグニチュードの推定が、大きく外れた
2020年7月30日、鳥島近海のM5.8の地震を、速報はM7.3と過大に推定して、震源も房総半島南方沖と誤りました。気象庁は、震源から800km以上離れた小笠原諸島の母島の観測点のデータを使ったため、規模を過大に推定したと説明しています。再発防止として、マグニチュードの計算には震源から700km以内の観測点のデータだけを使うように改善しました。
千島列島は、日本の観測網から遠い場所です。震源の近くに観測点が少なければ、遠くの観測点のデータで推定するしかなく、推定の誤差が大きくなります。M9.9という、ありえない数字は、この「遠い観測点で、桁を外した」型と相性が悪くありません。ただ、これだけでは、地震が起きていないのに警報が出たことは説明できません。
気になる観察:「発生」から速報まで、約3分半かかっている
通知の画面で、もうひとつ、おかしな点に気づきました。強震モニタが示す地震の「発生」は12時36分27秒。でも、私のスマホに速報が届いたのは12時40分です。発生から約3分半、あとです。
実際の地震なら、緊急地震速報は、発生から数秒〜十数秒で出ます。主要動(S波)が来る前に知らせるための仕組みなので、3分半も遅れたら意味がありません。今回、地震の「発生時刻」と、速報が出た時刻が、これだけ離れている。
推測ですが、これは、古いデータや、時刻のずれたデータを、いまの地震のように処理した可能性を示しています。2013年の和歌山の件で、気象庁が原因にした「不正な時刻が付与されたデータ」を思い出させます。ただ、これは、2枚の画面と1枚の通知から、私が考えたことで、確かめる手段はありません。
気になる観察:第22報と第36報で、中身が全く同じ
2枚の画面を並べると、おかしなことに気づきます。第22報(12時41分51秒)と第36報(12時46分29秒)で、表示が全く同じです。千島列島、M9.9、深さ140km、最大予測震度7。約5分たって、速報が14回増えたのに、推定の数字が1つも動いていません。
実際の地震なら、観測点のデータが増えるたびに、震源やマグニチュードの推定は更新されていきます。実際の揺れが一切観測されない状況で、観測の裏づけがないまま同じ内容が出続けた、という形です。処理の側で、同じ推定が繰り返し出ていた可能性があります。これも推測です。
推測3:システムや運用側の不具合
2025年4月には、静岡県の東伊豆町で、研修中の人為的ミスにより、「震度7」の緊急速報メールが誤って配信されました。これは気象庁の速報ではなく、県の防災情報システムの訓練中の操作ミスです。
今回も、地震計のデータではなく、処理や配信の側で何かが起きた可能性は、排除できません。取り消しが13分後だったのも、気象庁が自動のキャンセルではなく、手動で状況を確認してから取り消した、と考えると筋が通ります。ただ、これは根拠のある推測ではなく、可能性のひとつです。
強震モニタのデータが、役に立つ
もうひとつ、手がかりがあります。強震モニタの観測点の色は、防災科研の強震計が、その場で測っている実測値です。一方、緊急地震速報の「M9.9」「震度7」は、気象庁が計算した予測値です。予測だけが「M9.9」で、実測が静かだった。
少なくとも、強震モニタに映る観測点には、異常が見えません。この「実測は静か、予測だけが暴走」は、センサーが一斉に壊れたというより、予測を作る処理の途中か、そこに入る一部のデータで、何かが起きた可能性を示しています。
不正アクセスの可能性はないのか:個人的な問題意識
ここからは、結論のない、私個人の問題意識です。
この秋、国内では不正アクセスの話が続いています。政府は10月8日に関係省庁会議を開き、JPCERT/CCも注意喚起を出しました。9月には、デジタル庁が運用する政府の共通基盤(GSS)が、VPN機器の脆弱性を突かれて不正アクセスを受けています。政府のシステムも、例外じゃありません。
だから、つい考えてしまいます。今回の誤報に、不正アクセスが絡んでいる可能性はないのか。
同じ速報が、別々の経路で一斉に届いた
今回、同じ内容の速報が、経路の違う複数の場所に出ました。スマホの緊急速報、練馬区のスピーカー(防災行政無線)、強震モニタの表示、テレビ局の速報。どこか1つの配信経路だけが乗っ取られたのなら、こうはなりません。
つまり、もし不正アクセスがあったとすれば、配信の末端ではなく、もっと上流です。速報を作る処理の側か、そこに入るデータの側。
不自然な点は、どちらとも矛盾しない
ここまで並べた不自然な点を、もう一度見ます。
- 警報なのに、地震がない
- 「発生」から速報まで、約3分半のずれ
- 第22報から第36報まで、中身が全く同じ
- 取り消しまで、約13分(手動とみられる)
これは、機器の故障や処理の不具合でも説明できます。同時に、外から偽のデータが入った場合とも、矛盾しません。どちらとも言えない。
それでも、故障のほうがずっと自然
公平に書いておくと、いまのところ、不正アクセスだと考える根拠はありません。過去の誤報は、すべて、機器の障害、処理の不具合、運用のミスでした。いま手元にある材料では、故障のほうが、ずっと自然な説明です。
それでも気になるのは、緊急地震速報が、1つの判断で、広い範囲のスマホと防災無線を一斉に鳴らせる仕組みだということです。原因が何であれ、「地震がないのに、震度7の警報が出た」こと自体が、入力と処理の信頼性の問題です。もし誰かが、狙ってこれを起こせるなら、パニックも、オオカミ少年も、作れてしまう。
気象庁は、原因を確認中だと報じられています。その説明の中で、外部からの不正なアクセスの可能性を調べたのかどうかにも、触れてほしい。それが、私の問題意識です。
初めて見た「取り消し」の通知
12時49分に届いた通知は、初めて見ました。文面は「先程(12:40)の緊急地震速報を取消します。(気象庁)」。通知音は「チーーーーン」。間が抜けています。
気象庁は、取り消す対象を、誤報に限っています。震度5弱の予測が震度3以下に変わった程度では取り消しません。だから、取り消しの通知を受け取ること自体が、そう滅多にない。私は初めてでした。
大地震でもないのに、「大地震です」とスピーカーが叫んで、13分後に「チーーーーン」。間が抜けているのは、通知音だけじゃありません。
今回、私たちが考えておくこと
誤報だったから笑い話、で終わらせるのは、もったいないです。
- 誤報でも、鳴ったら身を守る。最大予測震度7の警報を、「どうせ誤報」で無視する理由はありません。誤報だったと分かるのは、あとからです
- 確認の手がかりを持つ。強震モニタのような、観測点の実測が見られるサービスは、予測が当たっているかを、その場で確かめるのに役立ちます
- 「取り消し」の仕組みを知る。通知が来たら、地震ではなかった、という意味です
公式の原因が出たら、この記事に追記します。
システムは、壊れる前提で作る。誤報も、漏えいも、同じ話です。直近の漏えい事案については、個人情報漏えいが止まらない。ID・パスワードの使い回しをやめて、流出を検知するに書きました。
【追記】ひとこと:AI戦争が始まったら怖い
今回は、不正アクセスとかは関係なさそうで、よかったです。
とはいえ、世の中はきな臭い。フランスでは10月11日から12日にかけて、大手スーパー数百店舗の冷蔵・冷凍設備がハックされました。霜取り運転を続けさせられて、庫内が最高50度まで上がったそうです(ITmedia NEWS)。冷蔵庫がハックされる時代です。中国とアメリカも、なんだかきな臭いことになりそうだし。
思い出すのは、手塚治虫の『火の鳥』未来編です。都市を治める2つの電子頭脳が、それぞれ合理的に計算を重ねた末に、最終戦争を始める。核兵器が飛び交って、人類が滅ぶ。漫画の話ですが、AIがAIの判断で動く時代に、ああいう戦争が始まったら怖いねー。。
【追記】取り消しの通知音、なんで人によって違ったのか:ETWSの仕様から考える
私のiPhoneは、取り消しで「チーーーーン」でした。ところが、「取り消しでも、あの警報音がもう1回鳴った」という人がたくさんいる。ニュースにもなってます。「2回鳴らすな」「心臓に悪い」(しらべぇ)。そりゃそうだ。
気象庁が出した取り消しは1つなのに、なんで音が違うのか。スマホの緊急速報の仕組み、ETWS(Earthquake and Tsunami Warning System)の仕様を読むと、だいたい見当がつきます。
ETWSが送っているのは「何の災害か」と「鳴らせ」の旗だけ
緊急速報メールは、普通のメールじゃありません。基地局から、エリア内の全端末に一斉に撒く「同報」です。国際規格は3GPPのTS 23.041。ドコモの技術誌によると、配信は2段構えです(NTTドコモ テクニカル・ジャーナル Vol.17 No.3)。
- 第1報(Primary Notification):「地震」「津波」「津波+地震」「試験」「その他」という種別だけ。最短約4秒で届けて、端末にあらかじめ決められたブザーを鳴らさせる
- 第2報(Secondary Notification):震源地や本文などの文字情報
メッセージには、災害の種別を示す番号(Message Identifier)が付きます。地震は4352、津波は4353、地震+津波は4354、試験は4355、その他は4356。さらに、旗が2本あります(3GPP TS 23.041)。
- Emergency User Alert:1なら「緊急の警報を鳴らせ(警告音、振動など)」
- Popup:1なら「画面にポップアップを出せ」
で、肝心の音。仕様には、警報の種類(どんな音か、振動か)は実装依存と書いてある。ネットワークが送るのは「地震です」「鳴らせ」という信号だけで、どの音を鳴らすかは端末が決めている。あのチャランチャランも、私のチーンも、スマホの中に最初から入っている音です。
「取り消し」という種別は、ない
種別の一覧を、もう1回見てください。地震、津波、地震+津波、試験、その他。「取り消し」がない。
だから取り消しは、既存の種別のどれかに乗せて流すしかない。私のiPhoneの通知を見ると、12時40分の速報も12時49分の取り消しも、見出しは同じ「緊急速報」。本文の1行目が「緊急地震速報」か「緊急地震速報(取消)」かの違いだけです。「(取消)」は、本文に文字で書いてあるだけ。
取り消しを「地震」の種別で、しかも「鳴らせ」の旗を立てたまま流したら、どうなるか。端末から見れば、それは地震の警報そのものです。鳴るに決まってる。
Androidのソースを読むと、種別が地震なら地震の音
Androidの標準の緊急速報アプリ(AOSPのCellBroadcastReceiver)は、ソースが公開されています。読んでみたら、音の選び方はめちゃくちゃ単純でした(CellBroadcastAlertService.java)。
- 種別が地震、地震+津波 → 地震の音(etws_earthquake)
- 津波 → 津波の音(etws_tsunami)
- その他 → その他の災害の音(etws_other_disaster)
- 種別が読めない → ETWSの標準の音(etws_default)
本文に「取消」と書いてあるかなんて、見てません。種別が地震なら、取り消しだろうが何だろうが、地震の音。「取り消しでも同じ警報音が鳴った」(携帯総合研究所)は、これで説明がつきます。
一方、国内メーカーのAndroidは、メーカーやキャリアが手を入れた緊急速報アプリを積んでいることが多い。シャープのAQUOSの取扱説明書を見ると、警告音は「緊急地震速報用」と「災害・避難情報、Jアラート、津波警報用」に分かれています(ワイモバイル 806SH 取扱説明書)。Xでは、海外メーカーのAndroidは取り消しで地震の音、国内メーカーのAndroidは「地震じゃない方の音」だった、という投稿も見かけました。同じ電波を受けても、端末の作りで音が変わる。
私のiPhoneの「チーン」は何だったのか
iPhoneは中身が非公開なので、ここからは推測です。
仕様上、ネットワークは「鳴らせ」の旗を0にして流すことができる。旗が0なら、端末に緊急の警報を鳴らす義務はない。普通の通知扱いにして、普通の通知音で済ませてもいい。
考えられるのは、この掛け算です。
- キャリアがどう組んだか:取り消しを、どの種別で、旗を立てて流したのか、立てずに流したのか。ETWSは、気象庁の電文を受けたキャリアが、自分の設備(CBC)で同報のメッセージを作って流す。キャリアごとに組み方が違っても不思議じゃない
- 端末がどこを見るか:AOSPのように種別だけ見て音を決めるのか、旗を見るのか、本文の「取消」を見て鳴らし分けるのか
旗が0の取り消しを受けたiPhoneが、普通の通知音でチーン。同じ取り消しを受けたAndroidは、旗を見ずに種別だけ見て、地震の音で叫んだ。たぶん、そんなところでしょう。総務省の資料でも、事業者間ローミングのときは、キャリアと端末の組み合わせによって「表示・鳴動できない場合がある」と書いています(総務省「携帯電話向けの緊急地震速報等(ETWS)について」)。全キャリア・全端末でまったく同じ挙動になる保証は、そもそも最初からない。
取り消しで警報音を鳴らすのは、アリかナシか
私はナシです。取り消しは「もう身構えなくていい」という知らせ。それを「逃げろ」の音で伝えるのは逆でしょ。2回目のあの音で、本当に来たと思って机に潜った人もいたはずです。オオカミ少年を自分で作ってどうする。
ただ、逆の言い分もわかる。取り消しを黙って配ったら、誰も見ない。最初の警報で外に飛び出した人、電車や機械を止めた人には、取り消しを確実に届けたい。だから鳴らす。
じゃあどうするか。取り消し専用の音を決めればいい。それだけです。ETWSには「その他」の種別があるし、番号もまだ空きがある。取り消しの流し方を全キャリアでそろえて、端末側で「解除」の音を鳴らす。Jアラートや災害・避難情報だって、音を分けてるんだから。
そもそも気象庁が警報を取り消すのは、誤報のときだけ。過去の記録を探しても、警報の取り消しは見当たりません。滅多に起きないから、取り消しをどう鳴らすか、誰も詰めてこなかったんでしょう。今回、北海道から東海までの広い範囲で、2回鳴った。いい機会です。気象庁と総務省、キャリア、端末メーカーで、取り消しの鳴らし方を決めてください。
それまでは、覚えておくしかない。取り消しでも、あの音が鳴ることがある。2回目が鳴ったら、まず画面の文字を見る。「(取消)」と書いてあれば、その速報の地震は来ません。
※さらに追記:私の端末は、iPhone SE(第3世代)、ソフトバンク回線です。この組み合わせで、取り消しは「チーン」でした。取り消しで警報音が鳴った人が、どのキャリアの、どの機種だったのか。そこが集まれば、キャリアの組み方のせいなのか、端末の作りのせいなのか、切り分けられます。鳴った人、鳴らなかった人、キャリアと機種を教えてください。
このブログにはコメント欄がないので、X(@ambit)か、Threadsのこの投稿への返信でお願いします。「iPhone 15、ドコモ、警報音」くらいの一言で十分です。
※参照:TeNYテレビ新潟(千島列島の地震で緊急地震速報)/気象庁「緊急地震速報(警報)及び(予報)について」/気象庁(2013年8月8日の過大な震度予想の原因と対処)/気象庁(2020年7月30日の緊急地震速報の誤り)/気象庁(2016年8月1日の緊急地震速報(予報)、富津観測点のノイズ)/ITmedia NEWS(東伊豆町の誤配信)/Energy Institute 世界エネルギー統計(2024年版)/資源エネルギー庁 電力調査統計(2023年度)/ANN(緊急地震速報を取り消し)/デジタル庁(GSSへの不正アクセス)/JPCERT/CC 注意喚起(10月8日)/KSB(政府の対策会議)