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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

ただ坐ると言っても何も考えないわけではありません

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ITに強いビジネスライターの森川ミユキです。

前回、こんな記事を書きました。

自分の中だけで考えていてもわからないものです

その中でこんなことを書きました。

「悟り」を得ようとすると、まず思い浮かぶのは坐禅でしょうが、これの本質は瞑想であり、自分の心の奥深くに入っていくことです。「只管打坐」、すなわち「ひたすら坐れ」ということで、禅では瞑想が重要視されています。

ちょっと誤解を招くというか、舌足らずというか、間違ったことを書いたと言われたとしてもしかたないというか、まあそんな内容でしたので補足させてください。

一言で坐禅と言いましても、宗派によって作法があります。日本では大きく臨済宗、曹洞宗、黄檗宗とありますが、そのうち曹洞宗では壁に向かって座り、他の2宗では壁を背にして座ります。私が参禅させていただいていたお寺は曹洞宗でしたので、壁に向かって座りました。そして開祖が道元さまなので「只管打坐」ということも言われました(私は高校の倫社の授業で道元と只管打坐をセットで学びました)。

ということで私の坐禅に関する知識は、曹洞宗系のものだとまずお断りしておきます(とはいえ完全に理解しているわけでもありませんが)。

高校生のときに「只管打坐」という言葉をはじめて聞いたときには、あらゆる雑念を振り払って何も考えずに坐禅をするのだと思いました。でもそんなことは自分には不可能でしたので、修行を積んだ禅僧はやはり違うのだなと勝手に感心していたのです。

まあ実際そんな人はおりません。脳死でもしない限り、眠っている間でも人間って雑念だらけですから、いくら坐禅でα波が出まくっていてもやっぱり雑念だらけなんだと思います。

実際このように指導されました。

「坐禅をしていて、頭の中を空っぽにするなんて、まずできません。雑念を振り払えというのは悟りを求めて座ってはいけないという意味です。思い浮かぶことを消そうとするのではなく、自分は今こんなことを思っているのだと思いなさい。また脚が痛くなってくるでしょうけど、そのときは『ああ、自分はいま脚が痛いんだな』と思いなさい」

私の解釈も入っているかもしれませんが、要するに「目的なしに座り、自分の心の動きを客観視する」のが只管打坐ということではないでしょうか。

だとすれば、そのうち「自分の心の奥深くに入っていく」のもよくあることでして、私の書いたこともあながち間違いではないですが、しかし心の奥底に入っていくことを目的としてしまうと只管打坐とは言えないわけで、その部分は間違ったことを書いた気がします。

さらに言えば、「無情の声を聞こう」といったことも書きましたが、ひたすら座っていると「無情の声」が聞こえてくることさえあります。したがいまして、坐禅と無情は同時に両立することもあるわけで、その辺も誤解を与えてしまったかもしれません。

なんだか補足してもわかりにくいなあと思います。これも禅ゆえのことかもしれません。

そもそも私が禅に興味を持ったのは、1996年に京極夏彦さんの『鉄鼠の檻』という小説を読んだのがきっかけでした。そこで取り上げられていた禅問答(公案)が興味深く、それ以来付かず離れず禅の本などを読んできたのです。もちろん修行したわけでもなく、1日中禅のことを考えているわけでもないので、素人も素人なのですが、それでも27年間かけて禅とは何かをつかみたいという気持ちを継続させてきました。

前回書いたようなことも、「ありきたりの精神論」だと思われるかもしれません。私もそんな大それたことを書いたつもりはありません。ただその程度のことでも最近ようやくわかりかけてきたわけでして、少なくとも奥深い世界であることだけは間違いありません。

だからデジタル化だとかマーケティングなどに応用できることは数知れないのです。その応用しようという気持ちが邪念と言われたら返す言葉はありませんが、それが役に立つ人がいるなら善行ではないかと思ったりもします。

いずれにしても、わかった気になると離れていくという大原則があり、それゆえに大禅師と呼ばれる人たちは例外なく「私には禅はわからん。仏もわからん」とおっしゃっています。これはたぶん本音でしょう。私も「わかった気にだけはならない」よう気をつけていきたいです。

で、蛇足かもしれませんが、デジタルもマーケティングも、そしてビジネスもわかった気になったら離れていくと思うんです。


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