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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

なぜ事務系・制御系のITエンジニアがDXに向かないのか~これさえわかれば向くようになります(ホントか?)

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デジタルとマーケティングに強いビジネスライター森川ミユキです。

日本のDXがなかなかうまく行かない理由として、デジタル人材の育成が難しいからということがよく言われます。

デジタル人材とはどういう人かというと、それだけで本1冊書けるようなテーマではありますが、先日書いた記事(DXでもIT化でもその他何でも日本の組織に足りない力は何か?)で言えば、「課題を見つける力」、「課題を解く力」、「施策を推進する力」を兼ね備えた人材だと言えます。ただこのうち「課題を解く力」は別に自身で持つ必要はなく、外注してもいいのでした。

ただいずれにしても、この3つを兼ね備えた人材を大学や大学院の新卒から採用しようと思っても、日本では難しく(実は海外でも難しいですけどね)、社内で素質のある人を育成せざるを得ません。

では、大きく分けてビジネス人材とIT人材のどちらが向くかというと、それは本人次第だと思うのですが、まあコンピュータにも慣れているからIT人材がいいと思いがちです。

しかしそこが実は落とし穴ではないかと私は思ったのです。

というのは、先日データ活用コンサルタントの座談会を取材していて、いまどきの人はこんなことを知らないんだと、ちょっと驚いたことがあったのです。

彼らは、データ分析には大きく2種類あって、1つは原因を推論するタイプの「理学系」、もう1つは結果を予測するタイプの「工学系」があると言うのです。そして理学系は非定型処理(アドホック)であることが多く、工学系は定型処理(ルーチン)であることが多いと言うのですね。

そこまではいいのですが、この区別がわからない人が多く、何でも定型化したがるのが良くないと言うのですよ( ̄□ ̄;!!

つまりコンピュータープログラムというものはシステム化されて繰り返し使われるものだと思い込んでいる人が多いということなんですね。ほんまかいなと思いましたが、ほんまらしいんですわ。

私は通信ミドルという制御系ソフトウェア開発からITの世界に入りました。これはもちろん繰り返し繰り返し使われるものです。バグがあったら一番怒られる類いのもので、仕様がきっちり決まっているから開発がデスマーチになることはまずありませんが、その代わり障害が発生したらどれだけ飲んでいても呼び出しを食らいます。

事務系のソフトウェアも繰り返し使われます。こちらはなかなか仕様が決まらないのでデスマーチにはなりがちですが、1回こっきりの会計ソフトとか受発注システムなんて聞いたことがないのは同じです。

だから制御系とか事務系のソフト開発をしているITエンジニアは、システム化(=ルーチン化)を前提に物事を考える傾向があります。

ところが世の中には1回こっきりしか使わないようなソフトウェアもあるのです。それは応用技術系のプログラムです。

みどり会という三和銀行が中心となって作った企業グループがあり、それが1970年の大阪万博の展示で少なからず儲かったのです。ならばと、万博が開かれた吹田市にコンピューターセンターを作ってみどり会で共同利用しようということになり、その運営会社として翌年設立された会社に、私は創立17年に入社したのでした。

私は入った当時はまだ、企業から「こういう問題を解いて」という依頼があり、Fortranでその問題を解くプログラムを作成して、解答を企業に返すという仕事をしていたITエンジニアがたくさんいたのです。そういうプログラムを大型汎用機(メインフレーム)で作っていた時代があったんですね。その後UNIXワークステーションやパソコンが行き渡るようになって、そういうお仕事をする専門人材はいなくなっていきました。スパコンのソフトウェア開発者にはいるのかもしれませんが、少なくともあまり身近ではなくなりました。

まさに非定型な1回こっきりのプログラムを開発していた人たちが普通にいた時代を私は知っているわけです。だから非定型な処理があることを知らない人がいるのが、ちょっと意外だったのです。

しかし考えてみれば1990年代半ばからそういうお仕事はほぼなくなったので、そんなことを知らないITエンジニアがいても不思議ではないのでした。

先ほどのコンサルタントたちが言う通り、何でも定型化したがるのがいけないとすれば、一般的な企業に多い事務系のITエンジニアはあまりDXには向かないということになります。私のような制御系もそうでしょう。何でもルーチン処理にしたがりますから。

昔の応用技術系ITエンジニアに近いのがデータサイエンティストであり、彼らは解く力はもう十分ですから、見つける力と推進する力をつけてもらうのが早道なのかもしれません。

しかし事務系や制御系のITエンジニアであっても、本人に意欲があるのなら、1回こっきりのプログラムもあるんだよという発想を身に付けるだけでもかなり変わるのではないかと思うのですが、いかがでしょう。

ちなみにアドホックなプログラムは外注しちゃえばいいと例のコンサルタントたちは言っていました。昔の応用技術系プログラムと同じ発想ですね。


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