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東京国際ブックフェアで大沢在昌さんの基調講演を聞いてきました

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7月7日から東京ビッグサイトで東京国際ブックフェアが開催されていますが、7日の初日に行ってきました。作家の大沢在昌さんが基調講演で「デジタルと紙が並走する時代~作家が考えること、できること~」というテーマで話をされたのですが、今後の出版業界と電子書籍を考える上で、興味深い話が聞けました。

印象に残った話の一つは、大沢さんが6月下旬に東北地方の書店周りをしたときの話で、大震災後は小説が売れなくなるのではないかと思っていたら、実際には東北の書店ではバブル状態で小説も含めてかなり本が売れているとのこと。特に大震災の写真集が売れているそうです。被災者の方々は、被災直後は被災全体の状況がわからず、何が起こったのか、ようやく落ち着いてきた今になって知りたくなり、買っているのだろうとのこと。

もう一つは、大沢さんが新宿鮫シリーズの最新作『絆回廊 新宿鮫X』を、糸井重里さんが主宰する「ほぼ日刊イトイ新聞」で連載したときの話。シリーズものは人気シリーズでも、一般読者にとっては、途中から読んでもしょうがないだろうと敷居が高くなり、新しい読者にアピールするのが難しいそうですが、この連載は新たな読者獲得のいいきっかけになったようです。

まず、この連載自体が新しい試みのニュースとして注目を集めたこと。あと「ほぼ日」は1日のアクセスユーザーが100万人以上で、30代の女性が中心だそうですが、ハードボイルドを読む層ではないので、あまり期待できないように思っていたところ、連載を始めてすぐにかなりの感想メールが届き、大きな反響があったとのこと。新聞や雑誌の連載では連載中に読者からの感想をもらうことはほとんどないので、これほど大きな反響があったのは初めてだったそうです。

そのメールを送ってくれた読者の中には、「新宿鮫」やヤクザ小説だと思っていて、警察小説だとは知らなかったという方や、連載中に「新宿鮫」の魅力がわかり、シリーズの前作も全部買って読んだという方もいたとのこと。結果として、この連載は、新たな読者を獲得して、紙の本の売上げを上げることにも役に立ったようです。このへんの話は、今後紙の書籍と、ネットや電子書籍が共存していく上でのヒントになりそうな気がしました。

東京国際ブックフェアは、明日10日まで開催されているので、出版や電子書籍に興味がある方は、ぜひ行ってみることをおすすめします。

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