人は、自分だけは大丈夫と思ってしまうもの
考えさせられる動画を見ました。失敗学で有名な畑野洋太郎さんが、2006年に放送された番組の中で「失敗は伝わらない」という話をされています。
東北の三陸海岸では、明治29年の明治の大津波で2万人以上の犠牲者が出て、その37年後の昭和8年、昭和三陸チリ大地震の大津波では、3千人以上の命を奪われたそうです。大津波の後、津波の危険性を伝えようと、「ここより下に家を建てるな」という石碑がたくさん建てられたけど、皮肉なことにその石碑の下にたくさんの人家が建っているとのこと。
三陸では漁業でしか生活しようがないから、いつも海に降りていかないといけなくて、高台に家を建てていると、朝晩の行き来が大変なので、いつのまにか便利さの前に危なさを忘れて、だんだんと住まいが海のほうに降りていくことに。三陸に住んでいる人たちは、知識として津波が危ないと知っているけど、自分が生きている間に大津波が来るとは思っていないものだと。
失敗は起きたときには、みんなが注意し、関心が集まるけど、時間が経つうちに失敗に関心を払わなくなり忘れていってしまい、失敗に対する無関心と、そんなことやらなくても大丈夫という傲慢さが増えていくという話です。
今回の津波の被災者の方がこの動画を見たら気分を害されるかもしれませんが、この話は私たちすべてに当てはまることだと思います。危険に関する知識はあっても、自分だけは大丈夫だという根拠なき自信を持ってしまうものではないかと。例えば、私は若いころにオートバイに乗ってましたが、事故を起こすと命に関わる可能性があると知識としてもわかっていても、自分は大丈夫だろうと思って乗っていました。実際に何度か転倒して、幸い命に関わることはなかったですが、運が悪かったら死んでいたかもしれません。
もちろんリスクを気にしすぎたら何もできなくなってしまうので、生命の危険に関わること以外は、自分は大丈夫という根拠なき自信を持っていてもいいと思いますが、命に関わることについては、きちんと先祖の知恵や歴史に学び、失敗の経験、知識を継承し、リスクをできるだけ小さくするための努力はしていかないといけないですね。
(追記)昭和8年の津波は、昭和三陸地震のもので、チリ地震による津波は昭和35年でした。訂正いたします。