点をつなぐ:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) 点をつなぐ

触媒のように世の中のいろいろな人やものをつないで変化を起こしていきたいと思っています

前回に続いて電子出版の話です。今回は、自分の著書が絶版状態になっていても、出版社との出版契約が続いている場合に、どうすれば自分で電子出版することができるか、その方法について書いてみたいと思います。

本を出版するときに出版契約書を結びますが、たいてい以下のような内容が入っています。


第○条(電子的使用)甲(著者)は、本著作物の全部または相当の部分を、あらゆる電子媒体により発行し、もしくは公衆送信することに関し、第一次選択優先権を乙(出版社)に許可するものとする。具体的に条件については甲乙協議のうえ決定する。
2.前項の規定にかかわらず、甲が本著作物の全部または相当の部分を講習へ送信しようとする場合は、あらかじめ乙に通知し、甲乙協議のうえ取扱いを決定する。

第○条(契約の有効期間)この契約の有効期間は、契約の日から初版発行の日まで、および初版発行後満3カ年間とする。

第○条(契約の自動更新)この契約は、期間満了の3カ月前までに甲側・乙側いずれかから文書をもって終了する旨の通知がないときは、この契約と同一条件で自動的に更新され、有効期間を3カ年ずつ延長する。

そうすると、本が出版されてしばらく経って、絶版や品切れ重版未定という事実上の絶版状態になっていても、契約の有効期間が切れる前に、契約終了の旨の文書を出してなければ自動的に契約が続いているわけです。その場合、自分で電子出版したくても、出版社に相談しないといけないことになります。出版社がすぐにオーケーしてくれればいいですが、その出版社が電子出版をするかもしれないからしばらく待ってくれと言われて話が進まなかったり、出版社側で電子出版するという話になっても著者側にとっては条件が悪かったり、著者側で出すなら版代を出してくださいと言われたりすることがあります。私も自分が出版プロデュースした本に関して、実際に出版社に問い合せてみて、なかなか話が進まないので、なんとかできないかと思ってちょっと調べてみました。そうしたら、著作権法の中に以下のような条文を見つけました。


(出版の義務)
第八十一条 出版権者は、その出版権の目的である著作物につき次に掲げる義務を負う。ただし、設定行為に別段の定めがある場合は、この限りでない。

一 複製権者からその著作物を複製するために必要な原稿その他の原品又はこれに相当する物の引渡しを受けた日から六月以内に当該著作物を出版する義務

二 当該著作物を慣行に従い継続して出版する義務

(出版権の消滅の請求)
第八十四条 出版権者が第八十一条第一号の義務に違反したときは、複製権者は、出版権者に通知してその出版権を消滅させることができる。

2 出版権者が第八十一条第二号の義務に違反した場合において、複製権者が三月以上の期間を定めてその履行を催告したにもかかわらず、その期間内にその履行がされないときは、複製権者は、出版権者に通知してその出版権を消滅させることができる。

つまり、出版社に継続して出版する義務があるので、絶版や品切れ重版未定で、書店で本が手に入らない状態になっているときに、3カ月以内に本屋で手に入る状態にしてくれるように頼んでも重版してもらえなかった場合は、出版権を消滅させることができるのです。

このことがわかって、出版社に本を重版してもらえないなら契約を終了させますと連絡したら、すぐに電子書籍化のオーケーがもらえました。また別のところは、将来的に自分のところでも電子出版できる可能性は残しておきたいから、出版契約は継続して、電子出版に関する内容だけ変更する形にしましょうという話になりました。

ですから、絶版状態になっている自分の著書を電子出版したいなら、著作権法をもとに出版社と交渉してみるのも一つのやり方だと思います。電子出版するなら、自分で主導権を持ってやった方が結果を出せる可能性が強いですし。もちろん出版社との関係を悪くしたくないから、自分は出版社にまかせるということなら、それでもいいでしょうけど。

私は、法律の専門家ではなく、上の著作権法に対する理解が正しいかどうかは断言できないので、もし間違っているようでしたら、ぜひ教えていただければと思います。

私は、電子出版は、絶版書籍を復活させたり、これまで少部数しか出せなかった内容の濃い専門書などを出したりするのに適したプラットフォームだと思っています。著者自らが積極的に電子出版することが出版文化の活性化につながると思うので、ぜひ多くの方々にチャレンジしていただけたらと思います。

(追記 2/16)
ツイッターで質問があったようなので、私の見解を書いておきます。

・本の挿絵や図版はどうなるのか
挿絵や図版に関しては、それぞれに著作権者がいるので、そのまま利用することは基本的にはできないと思います。それぞれの著作権者と交渉するか、自分で改めて別に用意するか、自分の著作物のみで電子出版化することになると思います。

・出版契約書を交わしてない場合はどうか
著作権法の第八十三条の2で「出版権は、その存続期間につき設定行為に定めがないときは、その設定後最初の出版があつた日から三年を経過した日において消滅する。」となっているので、出版してから3年経過していれば、出版権は消滅しているので問題ありません。3年経過してない場合も、3カ月以内に重版してもらうように頼んで、してもらえなければ、出版契約を解除することはできると思います。

なお、私の知り合いで電子出版事業を手がけている株式会社デジタルハーベストの矢野さんが、絶版書籍を電子書籍化する際に必要となる、出版契約や著作権に関する知識についてまとめてらっしゃいました。かなり詳細に解説されているので参考になると思います。

今年こそ電子書籍を作りたい著者に知ってほしいリバイバル出版のススメ

Makoto Takahashi

Special

- PR -
コメント

コメントを投稿する
メールアドレス(必須):
URL:
コメント:
トラックバック

http://app.blogs.itmedia.co.jp/t/trackback/77444/25994852

トラックバック・ポリシー


» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP



プロフィール

高橋 誠

高橋 誠

年表(自分史)創造コミュニティ「Histy」と、社会貢献型クイズサイト「eQuiz」を運営する株式会社スマイルメディアの代表取締役。ネットや出版などの企画、編集、制作、運営、コンサルティングを手がけるメディアプロデューサーとして活動中。一般社団法人自分史活用推進協議会の事務局長も務めている。

詳しいプロフィール

カレンダー
2012年5月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
カテゴリー
エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif ストレス社会との付き合い方
政府がメンタルヘルス検査の義務化を検討しています。しかしうつになった後だけではなく、なる前の予防も大切なのではないでしょうか。(5/24)

news094.gif 「思いやり経営」のススメ
産学・NPO連携の民間団体が先頃、「思いやり経営」という観点で評価した指標や企業ランキングを発表した。企業のマネジメント力を知る手立てとして注目されそうだ。(5/24)

news094.gif テレワークが労働者のマインドを変える
テレワークが普及すると、労働者の評価は従来の「時間×生産性」から「成果」へと変化する。時間や場所を自分の裁量でコントロールできる変わりに、成果を最大化するために労働をマネジメントする能力とマインドが労働者には必要になる。(5/23)

news094.gif 求む、クックパッド男子
高身長も高学歴も高収入もいらない。私が男性に求めるのは「料理の腕」だけです。(5/18)

news094.gif 37歳の常識――我々は一生学び続ける
学び続けなければ衰退するのみだ。(5/18)

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。

Special

- PR -

サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ