「経験学習をOJTに活かす」セミナー報告第3弾:Q&Aセッションの内容です。
この土日は、桜満開でしたね。東京。
我が家の近くには石神井川が流れており、4-5kmに渡り、断続的に桜並木が。往復10km近くを3時間かけて歩き、脚が筋肉痛になりました。とにかく、美しい♪
さて、「経験学習をOJTに活かす」セミナー報告第3弾です。
今回は、会場から挙がったQ&Aを概観します。「Q&A」セッションは、会場から質問を頂戴し、松尾先生とわたくしが掛け合いで回答するという「トークショー」形式をとりました。
●質問1:「今回のセミナーでは、若手社員のOJTに経験学習の考え方を生かそう、という趣旨だが、経験学習は、ミドルにも活用できるものですか?」(この場合のミドルとは、30代後半から40代半ばくらいまでを指すそうです)
★回答:
<松尾先生より>
・一般に成長実感が落ちやすいのがミドルなんですよね。
・今、ミドルマネージャの成長について「どんな経験をしているか」という調査・研究をしているんですが、すると、ミドルマネージャは、3つの経験をしていることがわかりました。
【変革】 変革に携わった経験
【連携】 他者(社内外)との連携の経験
【育成】 部下の育成をした経験
・そして、ミドルの経験は、若いころの経験があって今につながるので、若いころも変革の経験をしているとミドルになっても変革の経験ができる、そういう経験をするチャンスに恵まれるという連鎖があるのです
・育成上手なマネージャは、部下を上位者や社外の方に紹介する、という行動をよくとっています。こういうことはシニアだからこそよりできることですね。
<田中より>
・今、先生が「ミドルマネージャが成長できた(る)経験」として「変革」「連携」「育成」を挙げられましたが、「ミドル”マネージャ”」ではなくとも、単に「”ミドル”(エイジ)」であっても同じことが言えると思います。そして、やはり、その場合でも、過去の経験が今の経験を引き起こすという連鎖はあると思います。(先生、ここで頷く)
・ミドルの場合、「過去」にこだわることがあると思うので、どうやって「unlearn(学習棄却)」をするかも課題ですよね。
・以前、「中高年がいつまでも”ノスタルジーに浸っているのは困る”」とおっしゃった方がいました・・・。
●質問2:「経験学習」ってネットワーク環境でも出来るもんでしょうか?
★回答:
<松尾先生より>
・「経験から学ぶ」ためには、リフレクション(振り返り)がとても重要なのですが、その場合、定型を使った振り返りをするのも一つのやり方ですね。「構造化されたふりかえり」というのは有効です。たとえば、1枚ものの同じ定型でふりかえり、ネットワークを使って全体でシェアするといったことはできるのではないでしょうか
<田中より>
・ちょっと話がずれるかも知れませんが、ある企業でコールセンター的な業務をしている部署で、知識に属人性が高く、互いに助け合えないという状況が発生していました。そこでFAQを作ろうとなり、「自分が受けた問い合わせと行った回答」をユーザ対応終了後に記録するようにしたのですが、こういうのって長続きしないんですよね。なんせめんどくさい。そこで、いくつかの工夫をした、と聴きました。
・「読んでいるよ。書き込んでくれてありがとー」と”見ていること”と”感謝”を伝える/「あそこに書いてあったこと、この場合はどうなるの?」などと”質問”をする/「書いてあった通りに説明したらすぐ解決した」と”役立った”ということをフィードバックする・・・これらを繰り返すことで、「書き込み甲斐」を感じ、FAQの書き込みと活用が上がったという話でした。
・こういう風に誰かの経験がFAQに書き込まれ、それが”形骸化”しない仕組みや運用を考えていけば、ネットを使った”経験学習”は有効になるのかな、と思いました
●質問3:モチベーション2.0(簡単にいうと、金銭的報酬や地位などの”外発的要因”によるモチベーション向上)からモチベーション3.0(感謝される、やりがいを感じるといった”内発的要因”)へ、という話がありますけれど、これからの時代、どうやってモチベーションを高めればよいのでしょうか?
★回答:
<松尾先生より>
・「働きがいのある職場」の研究によると、「誇りを持てること」「連帯感があること」「経営者への信頼があること」の3つがポイントだそうです。そういうところを感じさせるようなこと、たとえば、1年の振り返りをきちんと行うといったことはモチベーション向上につながるかも知れませんね。
<田中より>
・今日は、若手のOJTについてお話しているので、若手の「やりがい」について解説しますね。若手というのは、特に、IT業界ですと、「自分がやっていること」が世の中とどうつながるか見えづらいものです。だから、「来る日も来る日も与えられた仕事をしているけど、これは誰が喜んでいるんだろう?誰の役に立っているんだろう?と疑問に思い、そのうち、やりがいを見失うこともあります。そんな時、OJT担当者や上司や他の先輩が、「私たちがやっている仕事は、今TVCMで流れているこのサービスの基盤を支えているシステムなんだよ」といった話をしてあげるといったイメージをわかせる手伝いをしてあげることができます。
・これは事例ですが、ある新入社員が画面設計をして、「これは誰が使っているんだ?」と思っていたら、たまたまユーザ先を訪ねた際、オフィスで自分が設計した画面を開いている人を複数人見て、「あ!ボクが作った画面だ、そうか、ここにユーザがいて、ちゃんと使われているんだ!」と思ったら、自分の仕事と現実世界がすーっと結びついたというのですね。こういうことって今はコンプラの関係でしづらい面もあるかも知れませんが、一つのヒントにはなりますよね。
・・・・・。
20分ちょっとの「トークショー形式Q&A」は、実は、ぶっつけ本番でした。セミナー開始直前に30秒ほど打ち合わせをして、「進行は私がなんとかしますんで、よろしく」と江戸っ子O型気質で胸を張ったところ、松尾先生も「おー、田中さんに任せた!」(なんて言い方はなさいませんが)と私の進行に乗ってくださって、ことのほか楽しい掛け合いになりました。
(上記、「松尾先生回答部分」は、松尾先生に内容を確認済みです。それと、田中と同じ分量をお話ししてくださっているのですが、私の筆力で再現できず、自分ばかりしゃべっている感じになっている点、ご了承くださいませ。)