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ストレスは自分自身で作り出している ──認知の歪み

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毎朝「今日こそはストレスのない一日であるように」と願って出社するのだが、会社に到着してメールを開くと、「仕様変更のお知らせ」というタイトルが目に入り、一気に気持ちが沈んでしまう......。

開発現場はストレスが多い

ITエンジニアはさまざまなストレスを抱えている。作ったプログラムにバグが見つかると、お客さんから「品質が低い」と苦情を言われ、上司から「技術力が低い」と責められる。ストレスを抱えながらも、バグをつぶすために残業をしなければならず、さらならストレスを背負い込む。

担当作業の進捗が遅れると、会議で上司から「何が原因だ」と詰め寄られ、後続作業の担当者から「早くしろ」と急かされる。ストレスを抱えながらも、遅れを取り戻すために残業をしなければならず、さらなるストレスを背負い込む。

メンバーが作成したドキュメントに記載誤りを見つけ、「全然直ってねーよ。何度言えばわかるんだ」と心の中で毒づく。ストレスを抱えながらも、やってもらうより自分でやった方が速いので修正作業を自分で引き取り、それを片づけるために残業をしなければならず、さらならストレスを背負い込む。

以上のような出来事が日常的に起こるので、ストレスを感じない日はない。

ストレスは自分が作り出している

一般的にストレスというと、自分のまわりに存在していて、それらが消えて無くなりさえすれば快適になると考えられている。しかし、ストレスはまわりに存在するのではなく、そのほとんどは自分自身が作り出している。起こった出来事をどのようにとらえるかによって、ストレスになる場合もあれば、ストレスにならない場合もあるのだ。

例えば、喫茶店で大切な書類を広げているところに同僚が書類にコーヒーをこぼしてしまったらどのように感じるだろうか。もし「大切な書類は決して汚してはいけない」という考えを持っているとしたら、「注意の足りない奴だ」と怒りを感じるだろう。

一方、「多少汚れても読めるなら問題ない」という考えを持っているとしたらストレスを感じることはないだろう。また、「自分が大切な書類をこんなところで広げているから悪いのだ」と考えられれば、まわりにきつく当たることもないだろう。

つまり、ストレスを多く抱えている人の問題はまわりにストレスが多いことではなく、ストレスを感じやすい「考え方のクセ」を持っていることなのだ。認知行動療法という心理療法では、ストレスを感じやすい考え方のクセを「認知の歪み」と呼んでいる。ストレスの多くは認知の歪みによって作り出されるのだ。

デビッド・D・バーンズによると認知の歪みには以下の10種類のパターンが存在する。

  1. 全か無か思考(all-or-nothing thinking)
  2. 一般化のしすぎ(overgeneralization)
  3. 心のフィルター(mental flitar)
  4. マイナス化思考(disqualifying the positive)
  5. 結論への飛躍(jumping to conclusions)
  6. 拡大解釈と過小評価(magnification and minimization)
  7. 感情的決め付け(emotional reasoning)
  8. すべき思考(should statements)
  9. レッテル貼り(labeling and mislabeling)
  10. 個人化(personalization)

それぞれの特徴は以下の通りだ。

1.全か無か思考(all-or-nothing thinking)

ものごとを白か黒かで判断しようとする。中間的な判断やあいまいさを許容することができない。特にネガティブな判断をする傾向にあり、完璧主義者になりがちである。好き-嫌い、良い-悪い、正解-間違い、成功-失敗の二極の選択肢しか持たない。1つでも悪い点があれば失敗・不合格・欠陥だと判断してしまう。

2.一般化のしすぎ(overgeneralization)

わずかな出来事からネガティブな法則を導き出してしまう。1回失敗をしたとしても努力を続けていれば成功する可能性がある。しかし、1度失敗を経験してしまうと次回以降も必ず失敗すると決めつける。1度起きたネガティブな経験は必ず繰り返すと決めつけてしまう。「いつも」、「絶対に」、「みんな」という単語を用いることが多く、「いつも私は嫌われる」、「絶対に失敗する」、「みんな私に優しくしてくれない」といった話をする。

3.心のフィルター(mental flitar)

良い面や良い結果を目を向けず、悪い面や悪い結果にだけ目を向けてしまう。自分の長所や人にほめられたことは頭に残らず、自分の短所や人に非難されたことばかりが頭に残ってしまう。そのため生きていても暗い気持ちにしかならず、何かを積極的・前向きに取り組むことができない。

4.マイナス化思考(disqualifying the positive)

良い結果でも悪く解釈する。うまくいっても「まぐれだ」と解釈したり、ほめられても「本心ではバカにしている」と受け取ったりする。前述の心のフィルターは良い面や良い結果を無視するが、このマイナス化思考は良い面や良い結果を悪いものに置き換えてしまうため、心のフィルター以上にやっかいな歪みである。

5.結論への飛躍(jumping to conclusions)

根拠もないのに飛躍した結論を導き出す。相手の心を深読みしたり、将来を先読みしすぎて悲観的になったりする。例えば、不機嫌そうな人を見ると、実は体調が悪いだけなのに、「自分のことを怒っているんだ」と推測してしまう。または、「どうせ私は一生孤独だ」と将来について断定的に悪い予測をしてしまう。前述の一般化のしすぎは、わずかでも根拠(事実)があるのに対し、結論への飛躍は根拠(事実)が無いため、一般化のしすぎ以上にやっかいな歪みである。

6.拡大解釈と過小評価(magnification and minimization)

自分の失敗や短所を過大視し、自分の成功や長所を過小評価する。ささいな失敗を「この世の終わり」のようにとらえたり、成功を「たいしたことない」ととらえてしまう。わずかな失敗を根拠にすべておしまいだと解釈するという点では、全か無か思考とも言える。

7.感情的決め付け(emotional reasoning)

感情を根拠に結論付けてしまう。「あの人は私をイライラさせる。だからあの人はサイテーな人間だ」、「不安だ。だから失敗するにちがいない」というように、不安や怒りなどネガティブな感情にとらわれると、ポジティブな感情が生まれにくくなってしまう。ネガティブな面だけが強調されるという点では前述の心のフィルターとみなすこともできる。

8.すべき思考(should statements)

「~すべき」、「~にちがいない」といった自分の価値観を持ち、その価値観に従わなければならないと過剰に考えてしまう。価値観に従って行動するため、つらいことやイヤなことでも頑張ってやり続けようとしてツラい思いをしてしまう。また、他人にも同じように期待したり押しつけてしまったりするため、期待通りにならないと落ち込んだり、相手を怒ったりしてしまう。

9.レッテル貼り(labeling and mislabeling)

一般化のしすぎが行き過ぎて、ネガティブなイメージを固定化してしまう。「私はダメ人間だ」、「あの人は冷血人間だ」とレッテルを貼ってしまう。一度レッテルを貼ってしまうと、そのイメージと異なる言動があってもレッテルを剥がそうとせず固定化したイメージを持ち続けてしまう。過剰な偏見、ネガティブな先入観を持っているため、前向き・肯定的な発言や行動ができなくなってしまう。

10.個人化(personalization)

自分でコントロールできないことも自分のせいだと考える。「子どもが非行に走ったのは育児がダメな自分のせいだ」、「夫が失業したのは支えなかった私のせいだ」、「部下が退職したのは育成できなかった自分のせいだ」などと考え、とにかく「悪い出来事は自分が原因」という結論付けをしてしまう。

※自分の考え方のクセが10のパターンのどれに該当するかを悩む方がいますが、どれを選んでもおおむね間違いはないと思います。該当するパターンを正確に当てることよりも、「考え方のクセ(認知の歪み)」があることを認識することが重要です。どれに該当するかはあまり深く考えすぎないようにしましょう。

ストレスは抑えるためには考え方のクセを改めよう

ストレスを抱え過ぎないようにするためには、認知の歪みに気づき、その歪んだ認知を修正する必要がある。歪んだ考え方を現実的な考え方に変えることができればストレスを抑えることができるのだ。現実的な考え方にするためには、10のパターンのうちのどれであっても、柔軟に考えたり自分を許したりすることが大切だ。

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認知の歪みについて詳しく知りたい人は、デビッド・D.バーンズ著の『いやな気分よ、さようなら』をお読み下さい。

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