Speed Feed:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) Speed Feed

RSS/Atom feedが織りなす新しいネットの世界を、読者と一緒に探検するBlogです。

手の中に収まるような小型の電子機器は、従来は日本のお家芸だったといえる。

しかし、インターネットサービスの連携を前提とした瞬間に、ハードの出来不出来よりも、非常に広大なネット世界を理解した上で精密に設計されたネットサービスと、そのネットサービスとのシームレスな同期のほうが重要となる。その結果、ハードウェア自体を比べれば優れたノウハウを持つ日本メーカーであっても、世界の潮流から置いてきぼりにされはじめる。ウォークマンのようなポータブルミュージックプレイヤーが負けたのはiPodがiTunes Storeとの連携によって光り輝くネット家電であったからだ。日本のケータイが負ける、と警鐘を鳴らすのは、iPhoneやAndroidケータイがインターネットを利用することを前提に設計されているからだ。

(日本のケータイが提供する”Web”とは、インターネットの海の中にキャリアが囲い込んだ池の中にあるようなものだ。インターネットの標準規格から外れたさまざまな仕様が混在する、偽物のインターネットを楽しんでいるにすぎない)

 

Googleは、従来型のブラウザーと比べれば機能点数においてヒドく見劣りするブラウザー Chromeを開発した。しかしChromeはPC上という限定的なプラットフォームに部分最適化されているのではなく、携帯電話やカーナビ、持ち運びを前提としたカーナビであるPNDなどにおける利用を考慮した、いわば全体最適化を目指したブラウザーであるということだ。Chromeは、僕が思うに、Linux版やMac版を作るより先に、モバイル用のエイジングや、カーナビ、PNDへの対応を優先するのではないか。

例えば、ストリートビューが話題になっているGoogle Mapsの米国版は、検索結果として得た目的地のURLを、携帯電話に送信できるだけでなく、ロケーション情報自体をカーナビに送信できる仕組みを有している。 メーカー別のGPS(現在は三種)への送信と、特定車種(現在はメルセデスとBMW)への送信が可能だ。ただし日本仕様車には適用できない。日本製のカーナビも対応していない。恐らく、ストリートビューをGoogleが作った最大の目的は、カーナビやPND、あるいはスマートフォン上での覇権を目指してのことだろう。ストリートビューは、実際に外出しているとき、あるいはクルマの中でこそ威力を発揮するサービスである。 そのためには、Googleのさまざまなサービスが動くことが保障されたブラウザーであるChromeを提供することが手っ取り早い。(恐らく、NIKE+とiPodというWebとハード(デジタルとアナログのシューズ)の組み合わせもまたヒントになっているのではないか)リアルとバーチャル、人間+社会生活とWebをシームレスにすることによってGoogleは最大化するのである。

 

さて、ここで感じるのが新たな危機感だ。

ケータイのガラパゴス状況を憂う人は少なくないが、それが意味する本当の危機を感じ取ってくれる人は多くはない。僕の別のエントリーへの反応をみているとそれが如実に分かる。

しかし、ケータイ以外にも本当にマズい、深刻なガラパゴスがもう一つある。それは前述しているモノ、カーナビだ。日本のカーナビは文字通りクルマに組み込みか、後から設置するにしても基本的にはクルマのパーツとして扱われているが、海外、特に米国のそれは、クルマを下りれば取り外して持ち出すのが基本だ。これをPND(ポータルぶるナビゲーションでバイス)という。PDA機能も当然持つものが多い。

(ふと思ったが、iPhoneはもちろんだがiPod touchはこのPNDになる可能性が高い。カーステレオとしての役割は既に持っているiPodだが、Google Mapsをベースにカーナビ機能を具備するのは時間の問題である気がしてきた)

日本に住んでいる限り、日本のカーナビの精緻さは素晴らしい、海外製品には負けない、と感じる人が多かろうが、海外では日本のカーナビは全く売れていないし、存在感はほぼゼロだ。日本の道路事情に最適化してしまっているがゆえに、グローバル市場への全体最適化がしずらいためなのだろう。また、国内ではPNDがあまり売れていないから、それに対する開発費もかけられない。

ただ、いまはまだカーナビはクルマの一つのパーツとして、機械としての主従関係があるからいいのだが、これがネット化すれば話は別だ。冒頭で述べた通り、クルマがネットオートモービル化したときに、クルマの性能もさることながら、インターネットとの接続、Webサービスのシームレスな利用のインターフェイスとしてのカーナビの重要性がより大きくなる可能性があるのである。

このとき、やはりGoogleかAppleが(もしくはこの組み合わせが)ネット側とそのインターフェイスとして強力なプレイヤーになる可能性は非常に高い。iPhoneがカーナビ機能を備え、僕のクルマと連動したら、音楽もカーナビもお任せにできる。電話の通話も可能になり、音声によるメールの読み上げや口述筆記も可能になるかもしれない。音声ファイルをそのままメールしたってイイ。素晴らしい未来じゃないですか!

(いや・・・やはりGoogleかな。Appleはどちらかというと”家庭”の中にフォーカスを先に当ててくる可能性が高いと思う)

メルセデスが、BMWが、トヨタが、Google Mapsを採用し、Chromeを搭載したPNDを本格的に採用することはあり得ると思っている。日本のカーメーカーは特に慌てる必要はないが、カーナビメーカーは相当に深刻な状況に陥るのではないか?

 

 

 

hiro

Special

- PR -
コメント
詠人知らず 2008/10/03 15:55

海外だと、盗難対策で車から降りるときにカーステレオを取り外して持ち出す風習があったのがそのPND普及の下地になってるのでは?

おおた 2008/10/03 17:13

 PNDに関しては、上の方が書かれている通り、そもそもは盗難防止の目的の方が強かったようですね。安いものなら仮に乗車中に強奪されてもお財布のダメージは少ないですし、「日本製」なんか積んでて大金持ちに間違えられて車上強盗殺人にあったら目も当てられません(笑)。
 ということで、日本ももっと治安が悪化すればPNDが普及するかもしれませんね(やだなぁ)。

>iPhoneがカーナビ機能を備え、僕のクルマと連動したら、
「えーっと、ここの信号を…」
 ぴるるるる…(呼び出し音)
「ああもう! 今地図見てたのに!」
 となりませんかね?(笑)

しろ 2008/10/03 19:56

VWとGoogleが昔なんかしてましたね。VWと手を組んだところに失敗があったような。素直に日本メーカーとやってたら、面白いことになっていたと思います。
確かに、PNDの性能が上がっている現在、既存メーカは大変なことになりつつあります。
ただ、Hondaなど、海外もきちんと視野に入れていますから、ケータイみたいなことにはならないのでは。プローブカーなど面白い機能満載ですし。

大橋 2008/10/03 20:11

ご無沙汰しております。

ちょうど昨夜にポータブルカーナビとgoogle mapに関して色々と考えており、少し前にケータイをデザインした家電会社の友人に「ポータブルナビ作らないの?」とメールしていたので、非常に興味深く読ませてもらいました。

最近僕の周りでも「ポータブルナビならどれが良いですか?」などと業種柄聞かれる事が多いので、ポータブルナビの日本での可能性を探っておりました。google mapを使ったカーナビの開発にgoogleは許可をだすのでしょうかね?

Ifreeta 2008/10/06 10:44

メルセデスに乗ってますが、純正のカーナビはパナソニックとか三菱でしたよ。

W204に見られるようにメルセデスは、盗難の恐れも低くなったので着脱式から完全に車一体型(カーナビ本体を外側から直接外せない)のカーナビに変更されています。

chinpur 2008/10/10 20:23

 日本の工業製品がガラパゴス化してしまう理由に、製品発想がハードから始まるという点があるのではないでしょうか。
 日本製品のもつ高解像度の液晶や精密なGPS、感度のよいアンテナ性能などは素晴らしいですが、それらを具体的なサービスとして提示するにはハードからの発想ではやはり限界があります。
ガラパゴスという言葉にある「いびつな進化形態」というニュアンスは、全体の統合性(ソフトの担う部分)のないまま個々のハード性能だけが一人歩きしてしまったことを指すような気もします。
 一方で、アップル・Googleは発想がサービス内容(ソフト)から始まって、最後に必要な器の形(ハード)に到着しています。
 これから先、ハード性能が飽和してしまって製品の評価がサービスを介したユーザー体験に向けられるにようになるにつれ、日本製品の弱点ばかりが露呈してしまうのではないでしょうか...。

skyskixyz 2008/10/11 19:28

まさに、日本のカーナビの未来に関してはおっしゃる通りだと思います。最近旅行に行く前はGoogle Mapを必ず見ていますから、カーナビに採用されたら僕は絶対に使いますね。旅行時のルートとかも保存できれば楽しいですしね。

ys 2008/10/11 23:07

興味深く読みました。
ケータイとかカーナビとか、そういうことの前に、あまりWebを使いこなしていない(もしくはすごさに気付いていない)人が多いのではないかと思います。
例えばiPhoneアプリでGoogle Mapsを利用した製品が提供されています、そこで「これはどこのデータベースを使っているのだろう?」とレビューが付いていますが、その人たちは既存のGoogle Mapsを利用していないので気付かないようです。
Googleの「クラウド」に参加していることで、その他の実生活においても恩恵が受けられる未来がすぐそこに来ている、ということがいまひとつ理解し難いのではないでしょうか。

大橋 2008/10/13 13:35

google mapsとデータベースの提供元のmapについてですが、webサービスにはgoogle mapsが多く使われており、それはデザインが良いからだと思います。

webサービスで多く使われているgoogle mapsと提供元のmapの大きな違いはそこにあり、googleと提供元の契約がどうかは知りませんが、現状は提供元のmapよりも人気があり、それが続いた場合は、google mapsの方が力関係は上になっていると感じます。

aki 2008/10/20 02:09

興味深く読ませていただきました。
打開策として一つ思い浮かんだのが、携帯です。
携帯の地図ソフト、ナビゲーションソフトはかなり使えるので、私は車でも散歩でも活用しています。
携帯がPCと同様な性能を誇るようになり、通信速度も向上したら、カーナビなんて携帯で全てまかなえるのではと思いました。
日本の携帯、世界では売れてないみたいですが。。。(苦笑)


コメントを投稿する
メールアドレス(必須):
URL:
コメント:
トラックバック

http://app.blogs.itmedia.co.jp/t/trackback/77444/16548406

トラックバック・ポリシー


» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP



プロフィール

小川 浩

小川 浩

株式会社モディファイ CEO。
著書に「Web2.0Book」「仕事で使える!Twitter超入門」「ソーシャルメディアマーケティング」「ソーシャルメディア維新」など




詳しいプロフィール

最近のトラックバック
カレンダー
2012年4月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          
カテゴリー
エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif ストレス社会との付き合い方
政府がメンタルヘルス検査の義務化を検討しています。しかしうつになった後だけではなく、なる前の予防も大切なのではないでしょうか。(5/24)

news094.gif 「思いやり経営」のススメ
産学・NPO連携の民間団体が先頃、「思いやり経営」という観点で評価した指標や企業ランキングを発表した。企業のマネジメント力を知る手立てとして注目されそうだ。(5/24)

news094.gif テレワークが労働者のマインドを変える
テレワークが普及すると、労働者の評価は従来の「時間×生産性」から「成果」へと変化する。時間や場所を自分の裁量でコントロールできる変わりに、成果を最大化するために労働をマネジメントする能力とマインドが労働者には必要になる。(5/23)

news094.gif 求む、クックパッド男子
高身長も高学歴も高収入もいらない。私が男性に求めるのは「料理の腕」だけです。(5/18)

news094.gif 37歳の常識――我々は一生学び続ける
学び続けなければ衰退するのみだ。(5/18)

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。

Special

- PR -

サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ