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モバイルシフトとソーシャル化によって変化するネットの世界を、読者と一緒に探検するBlogです。

Web2.0のブラックボックス化はいつくるのか

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少し前の話になるが、ヘリコプターはなぜ飛ぶか?という質問に、理系大学院卒のSEが答えられなかったので、「じゃあ飛行機は?」とさらに訪ねたが、さっぱり分からないという。え、揚力も知らんの?と、驚いた。

この話は単なる前フリである。

実際のところ、車には乗っていても、その車がどういう原理で動いているかを知っている人は割と少ない。まあ、女性であればほとんどの人が説明できないだろうと思う。冷蔵庫はなぜ食品を冷やすことができるのか、電子レンジはなぜ温められるのか、などなど、仕組みを説明できないけれど良く使っているモノは身近に多く存在している。こういうモノをブラックボックスと言ったりする。本来は中に何が入っているかは分からない黒い箱、であり、例えば航空機のフライトレコーダーのように、開けられないように密封され、中身が分からないモノを指すような言葉であるが、要は機能は分かるが仕組みが分からないようなモノのことである。

18世紀にイギリスで発生した産業革命は、圧縮したスチーム(水蒸気)による圧力を動力に変える、いわゆる蒸気機関の発明に端を発する。蒸気機関の動力を(ピストンやタービンによって)回転力に変えることによって車輪を動かし、鉄道の発明につなげていくわけだ。鉄道という、海路を使わずに大量の物資を運ぶ仕組みを作ったからこそ産業は発展した。
蒸気機関が発明された当時は、おそらく一般人を巻き込んで、この機械の仕組みや意義についての論争が巻き起こっていただろうが、いまでは誰もその存在を気にしない。もちろん蒸気機関はいまではガソリンなどの液体燃料を使う内燃機関に取って代わられているが、エンジンそのものの仕組みはさほど変わっているわけではなく、いまだに回転する車軸と車輪による動力によって車や鉄道は動く。しかしこの仕組みについて、ほとんどの人は気にしないし、理解していない(というより、その必要を感じない)。つまりブラックボックス化したのである。

Web2.0の定義や意義についてさまざまな論議がなされているが、最近では女性誌を含む週刊誌や一般の新聞にも、取り上げられるほどのキーワードになりつつある。今のところは、まだまだWeb2.0とはなにか?という解説や議論に終始しているのであるが、そろそろその時期は過ぎ、Web2.0がなにかというよりも、Web2.0的なビジネスモデルやテクノロジーの活用方法を考える(蒸気機関の仕組みを考えるのではなく、鉄道や自動車への応用を考える)時期が来ていると思う。Web2.0という言葉や概念自体がブラックボックス化することによって、普及の弾みがつく。利用は簡単にできるが、仕組みはよく分かってない人が多くなること、それが一般に普及すると言うことだろう。

Web2.0の本質を語ると論議の観点の違いによって多様な回答が出るとは思うが、これを利用することを考えると、やはりAPIとUIに尽きると思う。コンピュータとの連携を容易にするAPIと、システムの利用を容易にするユーザーインターフェイス(マン・マシンインターフェイス)に進化のポイントは移動してきている。Web2.0という言葉ではなく、どうやら従来のWebとは変質してきたらしい現代のWeb(2.0)を生かしたサービスや事業、リアル世界との連動を考えるに、APIとUIをどれだけ進化させるかが普及の鍵になるだろう。Web2.0 = Technorogy Black Box + API + UI、でいいと思う、普通の人にとっては。






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