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通信業界特殊偵察部隊のモノゴトの見方、見え方、考え方

通信関係の契約は慎重に

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通信関係業界の末席で禄を食む私。元々20年近く勤めた今で言うIT業界の企業から通信事業者に身を転じたのが2004年。そのあと、その通信事業者が破綻したり買収されたり合併したりといろいろあり、最初はマーケティング・プロモーションの人間として業界に入ったのですが結果的に幾つかの職種や職責を経験することになりました。

そんな流れの中、特に過去8年くらいは利用者様と接する店舗まわりにかなり近いところで仕事をしていた関係で、バックオフィス的なマーケティングや技術畑の経験だけでは知り得なかった状況など色々勉強出来たのですが、たとえばこのエントリーのお題にある「通信関係の契約は慎重に」というお話。通信サービスを使うための契約行為の場所や方法は対面なりオンラインなりといろいろあるのですが、利用者様が自発的に店舗などに出向いて行う契約行為とは別に電話での勧誘というのがあります。

電話での勧誘行為だけ見ると、それ自体は全然違法ではありませんし法人営業 / 個人向けの営業のいずれであってもキチンと対応している販売業者さんはいっぱい居ます。それは事実です。でも残念ながら法令ギリギリの方法、あるいは踏み越えての営業行為が行われているケースもあります。

 

例えばこんな電話が私のスマホに

ちょっと遅めの昼休みでゆっくりしてるところに0800で始まる電話番号から着信がありました。丁度とある純粋に個人の用件で本人確認の電話がかかる予定だったのでそれだと思って取ったら全然違いました。

先方:お客様の光回線の契約方法が変更になりましてご案内のためにお電話差し上げました

私: はぁ?

先方:今お使いの光回線を切り替えていただいて云々...

私: ちょっと待って。あんた私の契約の内容ってどこの何を使ってるとかも何も知らないでしょ。まずあなたが自分の所属名乗ろうよ。お名前と会社名。

先方:はい。契約のことはわからないですね。こちらはNTT光契約センターです

私: いや、だからあなたの代理店名。コールセンターという名乗り方じゃなくて。どこのNTTさんのどういう社名の代理店さんなの?

先方:だからNTT光契約センターです

私: そうですか。で、手元には何があるの?私のこの電話番号はあるんだろうけど、そこに他に何が書いてあるの?

先方:いやそれが何も無いので、色々教えていただきたくて

 

基本温厚な私なんですが、通信業界20年以上の魂に火が付いてアドレナリンが湧き出します。いや、別に何をしなくても興味がなければ先方が説明してる途中で静かに電話を切ればよいのですが、まずは私の電話番号の入手先を確認しなくちゃとおもってですね...

 

私: 私の電話番号、どこから入手しました?名前とか住所とかの情報ついてます?

先方:入手先はわからないです。お名前はあります。

私: どこから入手したかわからない個人データを元に電話かけてるわけですね。それをどう管理してるのか教えて下さい。消去をお願いしたら例えば消去確認の書面かメールはいただけますか?

先方:いやそれはわからないです

私: 連絡してきてるあなたが説明出来ないって個人情報保護という部分で全然駄目なんですけど、出会っちゃったんで関係する役所に報告してもいいですよね?

 

予想通り駄目ですね。全然駄目です。どこかの自分が持ってるクレジットカード会社からの委託とかであれば全然OK(でもかかってくるのは面倒くさいので本当は嫌)なんですが、本事案は単純にコールリストを持たされてファーストコンタクトしてるだけのオペレータで、本当に何もわかっていないようです。
まぁよくある話(でも全然良くない話)ですが。

 

私: じゃぁそのデータは消去してください。

先方:あ、もう電話しないようにします。

私: 消してください。消した履歴も貰えますか?

先方:あ... は...(よく聞こえない

 

多分消えません。半年くらいしたらまたかかってくると思います。

 

私: で、私の契約情報って知らないですよね。

先方:わからないです。

私: とりあえず電話して聞き出そうとしたわけですよね?間違いないよね?

先方:はい、そうですね

私: 私の契約情報がそこにあったほうが本当は楽しかったんだけど、契約情報は本人の同意がないと開示されないのは業界全体のルールで、あなたは私が契約している通信事業者の直接の関係者ではないから私の契約情報を見ること以前に契約確認するための本人確認の手段自体がそこには無いですよね。でもあなたは契約方法が変わったから案内するって言ったよね。私の契約事業者も契約内容も何一つ判っていないのにどこの事業者のどんな契約の方法が変わったと案内したいの?
電話口で色々聞き出して話を変えて誘導していくんでしょ?そういうのって良くないよ。こちらから相談を持ちかけたんじゃなくて一方的に架電してきてそれは駄目だよ。そもそも最初の案内自体が虚偽。あなたは私に何も案内できない。嘘言って本人確認もできない状況で色々聞き出して契約行為につなげようとする流れは消費者庁や総務省に対する報告事案になるんだけど、わかってる?

先方:え... はい

私: 言ってること、それからあなたがやってることわかってる?

先方:わかりました。もう電話はしません。今日はありがとうございました。

私: わかってるならいいよ。報告しとくね。

  

残念ながらかけてきた事業者の名称は聞き出せませんでしたが、こんな流れのやり取りになりました。
商取引として勧誘の電話から始まる行為自体に違法性は無いのですが、そもそもの案内が虚偽だとか、その後の流れや架電してきた背景をキチンと説明出来ないのは駄目です。詐欺事案にすらなりますし、実際そういう事例は意外なほどありますし、少なくとも電気通信事業法の規制対象となる通信サービス全てにおいては駄目だと考えていただいて良いと思います。

例えば最近のスマホの契約行為の際にやたらと本人確認を要求されますが、それはその穴をすり抜けた結果起きた人の生死まで含めた犯罪がいくつもあったからで、要は手間の数だけ誰かが何かをやらかした事案があるということです。

 

ということで、通信サービスのなにかを契約したい、変更したいなどのときには誰かがキチンと判っている相手としたほうが良いです。分からなければ携帯事業者のショップや量販店、あるいは提供している通信事業者の窓口に直接確認すること。
自分を自分の責任で守れる自信がないのであれば、業界の経験がある人に相談するもしくは何かしら正しく手続きをする為の法的規制をうけているキャリアショップなり量販店なり併売店を頼る。もう本当にそれしか無いです。


でも、何かおかしいと思ったら躊躇せずに総務省の「電気通信サービスに関する情報受付フォーム」で報告することをおすすめします。実はここから上がる報告から総務省が動いた場合、それは通信事業者や周辺の販売代理店にとってめちゃめちゃ拘束力のある指導になるという代物です。もちろん総務省側での内容の精査が入るので投げた案件全てがそのまま指導につながるわけではないですが、特に消費者への直接の影響があるモノについては比較的早く動く傾向があるようです。

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