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今日から使える、大学生のための会計知識不要の企業分析テクニック その2 ~内定切りを受けないために~

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前回書いた「有価証券報告書の対処すべき課題と事業のリスク、この二箇所を同業他社で比較する」というやり方で、業界共通のリスクが認識できたら、今度はそれに対して企業がどのような対策を取っているのか調べてみる。企業はそれなりに合理的な組織なので、売上や利益の目標達成に障害があれば、当然対策も考えている。その対策こそが企業活動の実態だ。

●面接がお見合いなら「イケメンだから」「可愛いから」はNG.。
外部から見える企業の姿は、商品とサービス、あとはTVCM程度で、ここをいくら見ていても企業の実態は見えない。御社の商品が好きだから入社したい、といった趣旨の話は学生が100人いたら90人はする。当然、面接官も聞き飽きているので印象には残らない。企業が求めているのはファンや客でなく社員だ。限られた時間の中で行う面接で、商品やサービスの話をする必要は無い。
面接はお見合いに、就職は結婚に例えられるが、あなたは可愛いから結婚したいとかイケメンだから結婚したいとプロポーズする人間はいない。商品が好きだから入社したい、とアピールする事はそれ位表面的な話だ(そういう理由で入社したいと思うのは問題ないが、わざわざアピールするのは間違いだ)。

●リスクを分析するには補助線を引くと良い。
リスクや課題とその対策、と言われてもぴんとこない人のために補助線を引いてみよう。リスクを短期・中期・長期に分けてみるといい。
短期のリスクは日々の事故やトラブルだ。このように書くとたいしたことがないように思えるかもしれないが、昨年ユッケで食中毒をおこしてしまった企業はその事件一つで潰れた。短期・中期・長期の分類は、リスクの小中大とは全く意味が異なる事に注意されたい。もっと端的に説明するならば、これをやったら来月潰れる、というのが短期のリスクで、ある意味で企業を直撃するトラブルとも言える。その分、企業が日々の業務でもっとも注意している部分だと言っても過言ではない。

これは現場の話だから、学生でも体験している可能性がある。アルバイト先で、なんでこんな面倒なことをやらないといけないんだろう、と思ったことは無いだろうか。飲食店ならば手の洗い方までマニュアル化されている場合も珍しくない。これは食中毒を防ぐためには正しい手の洗い方が重要で、生産や加工の現場でどんなに食材の衛生管理を徹底しても店舗でアルバイトがいい加減な手の洗い方をすれば全てが台無しになってしまうからだ。結果として食中毒が発生すれば営業停止や被害者への慰謝料による損害は勿論のこと、マスコミ等を通じて大きく報じられれば企業価値全体へ影響は及ぶ。

●安全とコンプライアンスは「利益以前」の話 安全とコンプライアンス(法令順守)はリスク管理を考える上でどの企業でもポイントになる部分だ。客に被害を与えた企業、法令違反を犯した企業は、それだけで取引先を失う。「おたくはあんな企業と取引があるのか」「あんな企業の商品をなぜ置くのか」といった客の反発を避けるためだ。企業の存続という意味では、利益が出る出ない以前の問題と言っても良い。赤字が出ても企業はすぐに潰れないが、安全・法令順守で問題があればは企業規模によっては一発で潰れかねないリスクがあるからだ。

オンリーワンの商品は世の中にほとんど無い。一度トラブルが起きれば客は離れ、取引先をライバルにもっていかれ、企業はあっという間に潰れる。最近はこれに反社会的勢力(暴力団の事)との付き合いも加わった。金融機関等は元々厳しかったが、それ以外の会社も反社会的勢力との付き合い方を注意しないといけなくなった。実際、自分がある上場企業と契約する時に契約書を自ら作ったところ「『反社会的勢力の排除』の条項を入れて欲しい」と要求された事もある。   中期のリスク・課題となると、売れ筋商品を作れるかどうかという商品開発や企業を支える人材をどれだけ育成できるかどうか、といった部分がリスク・課題となってくる。   長期のリスク・課題ならば、ブランド価値の維持・向上や海外展開、あとは事業ドメイン(何をやって何をやらないかという判断)などが関わる。IT企業ならば、ネット広告を行うのか、スマホ向けアプリを作るのか、それともヤフーのようなポータルサイトを目指すのか......等、何をやるか、同時に「何をやらないか」で会社はいかようにも変わる。

例えばソフトバンクは元々パソコンソフトの卸売りをやっていた。もしヤフージャパンをやらなかったら、ADSL事業(ヤフーBB)をやらなかったら、携帯事業をやらなかったら......など、現在のソフトバンクをソフトバンクたらしめているのはこの長期的な経営判断であり、事業ドメインだ。 以上のようなやり方で分析すれば同業他社が全部同じに見える、といった問題も簡単に解決するだろう。リスクが同じでも対策は企業毎に異なるケースが多々ある。

●学生はまず短期のリスクから見ると良い。
この中で学生が考えるべき優先順位は短期・中期・長期だ。特に長期的なリスク・課題は経営者が取り組んでいる経営戦略に関する部分で、学生がよく分からないまま語ると空理空論になりかねない。個人的にはそういう話をしても良いと思うが、短期的なリスクとそれに対する企業の取り組みを分析する方が地に足が付いて見えるように思う。OB・OG訪問をした時にもこういった話は聞きやすいが、経営戦略を若手社員に聞いてもさほど意味は無いだろう。

リスクという地に足の着いた視点で企業を見ていれば、商品とCMしか知らないような学生とは雲泥の差がつくはずだ。可能ならば簿記・会計の勉強、良いビジネス書を読む、といった事も平行して行うと更に違いが出るだろう。

企業分析・就職関連では以下の記事を参考にされたい。
●今日から使える、大学生のための会計知識不要の企業分析テクニック その1 ~内定切りを受けないために~
●正しすぎるライフネット生命の新卒採用
●公務員になりたいという証券マンのユウウツ ~対面型証券に存在価値はあるのか~
●楽天の英語公用語化に反対する人がいまだに誤解している事
●期待値を下げて利益を出す ~スカイマークエアラインの正しい経営判断~
●シャープの本当の問題は、結局どこにあったのか?

就職氷河期と言われて久しいが、前回・今回で紹介した企業分析手法が何がしかの役に立てば幸いだ。

中嶋よしふみ
シェアーズカフェ・店長 ファイナンシャルプランナー
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