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ITプラットフォームの変遷とポストFacebook時代を考察する

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IT業界では、十数年に一度、地殻変動的なイノベーションが生まれ、業界地図が塗り替えられてきた。僕自身、1985年に日本IBMに入社して以来、この業界の住人として、巨大な技術革新を肌身で体感している。

その技術革新の背景にあるのは、1965年にゴードン・ムーア氏が提唱した「ムーアの法則」(半導体の集積度は18ヶ月で2倍になる) だ。実際にこの30年で、CPU処理速度は10万倍、通信速度は200万倍とITインフラの天文学的成長を促し、破壊的イノベーションを生み出す原動力となった。

当記事では、そのような根幹的なITイノベーションを振り返り、変化の本質を探るとともに、来るべきポストFacebook時代まで占ってみたい。なお、この記事で紹介している時代区分は独自考察したもので、いわゆるコンピュータの世代などとは異なっているのでご注意いたたぎたい。
 
 
1. ホスト・コンビュータの時代 (1964年 〜 1980年)

コンピュータの元祖とされる「ENIAC」が開発されたのは1946年。それから様々な試行錯誤を経て、1964年、IBMが革命的なコンピュータ「System/360」を発明した。それまで商用、科学計算用と個別実装されていたソフトウェアを体系化し、OS (Operating System) とアプリケーションを分離。1台のコンピュータでもアプリケーションを交換することにより多種多様な業務を処理できるようになったのだ。このS/360の大成功により、後発だったIBMはIT業界における最強プレイヤーの座へと駆けのぼることになる。

Fig1
(以降、グレーが覇権レイヤー、薄いグレーが準覇権レイヤーをあらわす)

それ以降、ホスト全盛の時代となり、IBM互換戦略をとった富士通と日立、独自路線をとった日本電気の4社がメインプレイヤーとなるが、OSでリードするIBMが圧倒的な影響力を持ち続けた。この時代、端末はCPUを持たない単純な入出力装置で、ホストコンビュータがビッグブラザーのごとく中央制御するスタイルだった。

その後、ミニコンのDECなど新興企業がIBMに挑戦したが、限定的なシェア獲得にとどまった。時代の覇者はIBM、パワーの源泉はホストOS、制御の方式は完全なる中央制御方式。そして、この長きにわたる君臨に引導を渡したのは、皮肉にもIBMが開発したオープン・アーキテクチャーのパーソナル・コンピュータ、IBM-PCだった。
  
 
2. パーソナル・コンビュータの時代 (1981年 〜 1994年)

ムーアの法則にしたがうと、S/360からIBM-PCまでの約17年で、CPU性能は約2000倍となる。CPUの飛躍的性能改善を受け、IBM-PCは企業ユースを超え、個人でも活用できるコンピュータとして登場した。開発を担当したのはドン・エストリッジをリーダーとした若干12名。最短期間で製品開発をすすめるため、BIOS (ハードウェアを制御するためのローレベルなプログラム群) のソースコードをオープンにして、徹底的にOEMを推進する戦略を選択した。
 
その結果、IBM社内に開発パワーとプロトタイプがあったにもかかわらず、OSにはMicrosoft社MS-DOS、CPUにはIntel社8088が採用された。IBMはPCの将来性を見誤っていたのだ。反対に、ビル・ゲイツは新時代の到来を確信。他社からPC用のOSを買収、MS-DOSという名称でIBMに提供をはじめた。彼の先見性に満ちた判断が、後のWintelと呼ばれる時代のトリガーとなった。

Fig2

企業用機器であったコンピュータを我が手にして、消費者は熱狂した。IBM-PC向けゲームやツールが次々と登場し、それが稼働するIBM-PC互換機も続々と生みだされていく。それを嫌ったIBMは、1987年に後継機として発表したPS/2において、アーキテクチャーをクローズする戦略をとったが、PC仕様の主導権を取り戻すことはできなかった。その後、OSとCPUという最も高度で複雑なテクノロジー・パーツを水平的に押さえたMicrosoftとIntelが、他社を圧倒するパワーを獲得。逆に他のパーツやPC本体はモジュール化され、完全にコモディティ化。PC業界における利益の多くは、MicrosoftとIntelがシェアする時代が訪れた。
 
特にMicrosoftは、後継OSであるWindows、基幹アプリケーションであるMS-Officeをほぼ独占的に提供し、ついにはIBMを上回る影響力を持つに至った。この時代の覇者は、MicrosoftとIntel、パワーの源泉はPCのOSとCPU、制御の方式はクライアント・サーバーモデルと呼ばれる分散制御方式。そして、この若き帝王ビル・ゲイツを襲った新イノベーションはインターネット、制御主体を持たない自律分散型のコンピュータ・ネットワークの登場だった。
 
 
3. PCインターネットの時代 (1995年 〜 2006年)
 
米国で商用インターネットが開始されたのは1988年だが、一般PCユーザーに普及しはじめたのは、インターネット・プロトコルTCP/IPが標準実装されたWindows95の登場からだろう。時代の花形は、NetscapeがリードしたWebブラウザ。当時の開発責任者、マーク・アンドリーセンは「Netscapeが登場すれば、Windowsはデバッグの不十分なデバイス・ドライバーになるだろう」と予言したと言われている。

Fig3

しかし、覇者Microsoftはリスクに鋭敏だった。1994年に小規模ベンチャーが発表したNetscapeを極度に恐れたビル・ゲイツは、1995年に「Internet Tidel Wave」というメモ書きで、いわば全社をあげてのインターネット対応を宣言。Windows95にInternet Explorerを標準搭載し、さらに100名の精鋭技術者を投入して執拗に追撃。ついには持ち前のマーケティング・パワーで、90%以上のシェアを持っていたNetscapeを逆転するに至る。1998年のことだ。

Fig6
【1994 〜 2009年  ブラウザ・シェアの推移】

これによって、Webブラウザーは主役を交代させるイノベーションにはなり得ず、Wintel黄金時代は長期政権となった。そのあおりを受け、独自アーキテクチャーを進化させ続けたAppleのシェアは3%にまで激減する。倒産寸前となり、創業者スティーブ・ジョブスがAppleに呼び戻されたのは1997年のこと。彼は「Think Different」を宣言、直ちに強力なリーダーシップを発揮し、Apple再建を推進しはじめた。

永遠に続くと感じられた最強タッグを揺るがし始めたのは、1998年に創業された検索エンジン・ベンチャーGoogleだ。その独自技術による高性能な検索エンジンは、アーリーアダプターから熱狂的に支持された。Webブラウザ戦争時には俊敏に対応したMicrosoftだったが、ビル・ゲイツが2000年にCEO職をスティーブ・バルマーに譲ったこともあり、検索エンジンの偉大なる可能性を見抜くことはできなかった。そのため、Microsoftの独自エンジンがリリースされたのは2004年 (それまでのMSNサーチは外部エンジンを利用) だ。この決定的な出遅れが、Googleを覇者に導くこととなる。
 
Googleは、世界中のデジタル情報を整理するという壮大なミッションの元、高い求心力で優秀な技術人材をかき集め、次々と革新的なWebソリューションを提供しはじめた。2000年にはAdwordsで収益化に成功、2002年に検索エンジンでトップシェアを獲得する。2004年にはNASDAQに上場、271億ドルという驚異的な時価総額をつけ、新時代の盟主ぶりをアピールした。
 
この時代、前半はMicrosoftとIntel、後半はGoogleに覇権がシフトした。パワーの源泉はOSやCPUから検索エンジンに移り、制御の方式はインターネットによる自律分散型となった。そして、Google上場の年、次なる覇者の芽がハーバード大学で生まれ始めていた。
 
 
4. モバイル・インターネットの時代 (2007年 〜 2015年?)

インターネットは広く一般人に普及したが、それをさらに加速したのは、2007年に登場したiPhoneだ。その年、Macworldの基調講演で、スティーブ・ジョブスは社名からComputerを除き、Appleに改名すると宣言。同時に、iPhoneやApple TVなどのコンピュータの枠に収まらない多様な新製品群を発表したのだ。

Fig4
 
iPhoneでは、ネイティブ・アプリーケーションが主役となり、それらはすべてAppleの管理下におかれることになる。過去において覇権のドライバーとなってきたのは、OS、Browser、検索エンジンと、すべてアプリケーションの入り口を独占するサービスだった。

それに危機感を感じたGoogleは、2007年11月にオープンなモバイル向けプラットフォームAndroidを発表、広く携帯メーカーと提携してスマートフォンにおけるApple寡占への対抗策を展開しはじめた。一方でAppleは、2010年にさらなる革命的機器、iPadを投入。幼児や老人にも簡単に使えるタブレット・コンピュータという新たなジャンルを切り開き、当該分野で圧倒的なシェアを獲得した。

これにより、クライアントOSは、Microsoft、Apple、Googleが三者分立。水平的独占が困難な構図となり、覇権のドライバーとはなり得なくなった。将来的には、モバイル・アプリケーションはHTML5ベースのWebに移行する可能性が高い。したがって、モバイルWebの構成レイヤーはCPU、OS、Browserとも独占が困難であり、多くのプレイヤーで競争することになるだろう。

また、サーバーサイドにも進化が訪れた。Googleのエリック・シュミットCEOが唱えた「クラウド・コンピューティング」(ユーザーはインターネットの向こう側を意識することなく、サービス料金を支払うことで利用できる) が現実化してきたのだ。サーバーサイドの主役は、Amazon、Google、Microsoft、Apple、YahooなどWebサービスの最強プライヤーたちで、このレイヤーも激しい競争が予想されている。

クライアントの多様化、サーバーサイドのクラウド化というイノベーションが起きる中で、突如、頭角をあらしはじめたサービスがあった。友人というアナログな人間関係に着目し、2004年に創業されたFacebookだ。知らない人の情報より、知っている人の話題の方がはるかに興味深い。そんなヒューマンな要素をドライバーとした驚異的なスティッキネス (ハマる性質) を武器に、わずか7年で7.5億人の利用者、Googleを上回る利用時間を獲得。世界中のソーシャルグラフ (人間関係などの人間系データベース) の寡占にほぼ成功した。
 
Facebookは、典型的な外部ネットワーク性の高い (利用者が増えると利便性を増す) サービスであり、利用者のスイッチングコストを考えると、その参入障壁はあまりにも高い。Google+など後発の追従は、技術的革新がない限り、ほとんど可能性がないだろう。この多様化の時代、唯一、水平的な寡占により覇者のパワーを持つサービスになったのだ。

すでにFacebookにとって覇権争いのフェーズは終わっている。これからの彼らの関心事は、Facebook上で人々がシェアする情報量を「ムーアの法則」なみに成長させ、世界中にシェア文化を根づかせることだ。そして、それの意味するところは、ヒトとヒトの関係だけでなく、ヒトとモノとコトの三次元的関係性をFacebookが独占するということだ。

さらにもう一つ重要なことは、Facebookの管理するデータ領域はGoogle検索エンジンの対象外であり、Facebookの成長 イコール Googleの衰退 となる点だ。実際に、Facebook領域ではMicrosoftのBingが検索を独占する可能性が高く、検索エンジンとしてのGoogleシェアは今後下がっていくことが予想される。

Opg3

この時代の覇者はFacebook、パワーの源泉はソーシャルグラフだ。彼らの覇権はどのくらいまで続くのか。少なくとも3年、おそらく5年は続く長期的なものになるのではないだろうか。では、何が次世代覇権につながるだろうか。筆者は「ソーシャルグラフの自動生成」と「セレンディピティの飛躍的効率化」がキーとなると考えている。
 
 
5. ネオユビキタス・インターネットの時代 (2016年? 〜 )

IPv6の普及と、極めて廉価なICチップにより、ありとあらゆるヒトやモノなどが端末化していく時代が訪れるだろう。それをネオ・ユビキタス時代と呼称したい。ヒトの周りにあるスマート端末のみならず、すべてのモノには印刷のような形でICタグが刷り込まれていく。

ヒトの会話を寡占するのがFacebookだが、ヒトだけではなく、モノ同士もチップを通じて会話しあうようになるだろう。ヒトが歩くと、その周りにあるモノが最適に反応する。トム・クルーズ主演の映画「マイノリティ・レポート」にあった世界観だ。そこでは、モノ同士の会話というFacebookのテリトリーを超えたエリアで、極めて膨大なデータを処理するサーバーサイドのパワーとロジックが必要となるだろう。

Fig5
 
では、現在からどのようなステップで覇権が移動するのだろうか。まず第一ステップとして予想されるのが、ソーシャルグラフとコミュニケーションインフラの独占により強大になりすぎたFacebookに対する政治的圧力だろう。軍事力は持たないものの、国家を凌駕するパワーを持つことになるFacebookが、圧力なしで10億人, 15億人と成長していくとは考えづらく、何らかのタイミングでソーシャルグラフとインフラのオープン化を余儀なくされるのではないだろうか。

Facebookがよりオープンになると、次のステップとしてあるのが「ソーシャルグラフの自動生成」と「セレンディピティの飛躍的効率化」だろう。さらに、ICタグがモノに付与されはじめるタイミングでは「モノ情報のソーシャルグラフ取り込み」も重要なテーマとなるだろう。
 
そして、Facebookの持つソーシャルグラフに加え、特化サービスごとに分散しているインタレストグラフ、ロケーション情報、さらにはモノに付与された情報などを統合するサービスが登場。その上で極めて精度の高いマッチング (ヒト、モノ、コトの最適マッチングをするメカニズム) を提供し、セレンディピティ(ご縁) を一気に増大させるようなサービスが期待されるようになるだろう。

参考記事 :  ソーシャルグラフの進化と新興サービスがとるべき戦略 (2011/5) 
 
拡大されたソーシャルグラフに基づき、「今、会いたいヒト、シェアしたいモノ、経験したいコトと出会える」ような究極の情報サービスが登場してくるのではないだろうか。そのアルゴリズム (ヒューマンなファクターも重要) において、飛躍的なイノベーションを果たした企業が、次世代覇権に近づくのではと筆者は考えている。

そして、時代とともに、コンピュータは我々の目の前から姿を消しはじめ、身の回りの人工物に溶け込んでいくだろう。現在注目されているオンライン2オフラインは、その大きな潮流の先駆けにすぎない。姿カタチはなくとも、極めて優秀な秘書が常に帯同しているような技術。静謐なテクノロジーが世界中を覆いはじめ、ネオ・ユビキタスの時代が到来するだろう。

 
 

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