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【2009年8月最新版】 直近決算発表に基づく mixi,モバゲー,GREE の業績比較。明暗を分けた要因の分析

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2009年7月29日に,携帯SNS最大手のひとつ「GREE」を運営するグリー株式会社が,売上139.5億円(前年比375%増),営業利益83.6億円(同667%増)という大幅増増益になる決算を発表し,その絶好調ぶりを印象づけた。また7月28日には,やはり携帯SNS最大手「モバゲータウン」(以下,モバゲーと略)を運営する株式会社ディー・エヌ・エーが,さらに7月31日には,日本最大のSNS「mixi」を運営する株式会社ミクシィが,相次いで2009年第一四半期の業績発表を行なった。

今回は,その最新情報をもとに,日本の代表的なソーシャルメディアである,mixi,モバゲータウン,GREEの3サービスを取り上げ,そのビジネスモデルと業績を比較してみたい。

なお,この情報ソースは各社が投資家向けに公表している最新の決算報告,および広告代理店・クライアント向けに発行している媒体資料に基づいている。


■第一四半期(2009年4-6月期)業績とビジネスモデル比較

まずは各運営会社から発表された,第一四半期の企業としての業績と,SNS事業単体の売上高を比較してみたい。

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四半期単位で見ると既にGREEの売上・利益がmixiを大幅に上回っているのが目につく。特に営業利益面で5.7倍と収益力に大きな差があらわれている。またSNS事業単体で見た売上比較では,GREE,モバゲー,mixiの順となり,急成長を続けているGREEが,売上・利益ともに日本最大のSNSサービスに成長したといえよう。

なお,売上配分で見ると,mixiが広告売上に依存(92%が広告売上)しているのに対して,GREEとモバゲーは有料課金が大きな割合を占めており,この点が営業利益率に大きく影響している。この有料課金は,主としてゲームのアイテム売上,アバター売上,月額会員売上(GREEのみ)で構成されており,特にGREEではゲームのアイテム売上が伸びているものと推測する。

一方の広告売上は,一般的なバナー広告売上と,成果報酬型の広告売上で構成されている。このうち,mixiはその多くがバナー広告売上であるが,モバゲーでは47%にあたる907百万円が成果報酬型広告となっている。GREEは広告構成比率を開示していないが,モバゲーよりは成果報酬広告比率は低いと推測する。

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この一年の売上推移を見ると,GREEの圧倒的な成長率(対三期前比較で売上260%成長)に対し,mixiは109%とほぼ横ばい,モバゲーにいたっては88%と下降しており,明暗がはっきりとあらわれた決算内容となっている。特にモバゲーは広告売上の落ち込みが激しい。

また下の表は,3サービスの会員数やページビューを比較したものである。PCベースのSNSとしてトップを走っていたmixiも,すでにPV比較で携帯が73%を占めており,SNSの主戦場は完全に携帯に移っていることがわかる。3サービスの会員規模,PV規模はほぼ同レベルと言えるが,ページビューあたりの四半期売上は,GREEが0.30円なのに対して,mixiが0.19円,モバゲーが0.23円会員あたりの四半期売上は,GREEの408円/会員に対して,mixiの168円,モバゲーの279円と,いずれもGREEの収益性が目につく結果となっている。

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2009年上半期の月間ページビューを比較した図(この図は携帯PVのみを対象)を見ても,GREEだけが急成長し,mixiとモバゲーはほぼ横ばい状態だ。つまり,ページビューあたりの収益性でも,ページビュー自体の成長でも,ともにGREEが他の2サービスを圧倒している結果となっている。

■媒体特性

ここで,ユーザー属性の比較による媒体特性を見てみよう。

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ユーザー年齢では,20代が61%と圧倒的に多いmixiに対して,GREEは30代超が39%と多く,逆にモバゲーは10代が33%を占めている。この年齢差によるユーザー購買力の違いもGREEとモバゲーの収益性に影響しているだろう。また男女比でみると,mixiのみ女性比率の方が高く,モバゲーは逆に男性比率が高い。携帯キャリアを比較では,GREEのau率の高さが目立っている。ちなみに,mixiとGREEは3キャリアとも公式サイトとなっているのに対して,モバゲーはすべて非公式,いわゆる勝手サイトである。公式サイトの方が集客や課金が容易だが,手続きに手間がかかり広告に制限があるという特徴がある。


■ゲーム・コンテンツの比較

似たようなイメージのあるモバゲーとGREEだが,実はゲーム特性に差があり,それが収益や成長性に大きな影響を及ぼしている。先行したモバゲーは,ゲームポータルとしてのポジション獲得のためにシンプルなゲームを外部パートナー企業から大量に調達している。それに対して後発のGREEはソーシャルゲーム(ユーザー同士のコミュニケーションを組み込んだゲーム)が中心だ。しかも主要なゲーム(釣りスタ,ハコニワ,クリノッペ等)は自社開発のためクオリティが高く,それらがキラーコンテンツとなっている。また時間がかかるじっくり型ゲームのためユーザー滞在率が高まる他,ゲーム用のアイテムを購入しないとなかなか上位になれない巧妙なものが多い。

例えば,最大のヒットコンテンツである「釣りスタ」は,同時アクセスが13万人!という驚異的な人気を誇っており,良い魚を釣るために竿やリール,ルアー等がと飛ぶように売れている。また企業タイアップによる特別イベントなど,ユーザーを飽きさせない工夫も随所に盛り込まれている。

それに対抗し,モバゲーでもほぼ「釣りスタ」と同様の「釣りゲータウン」が始まっているが,この手のネットワーク性の高いサービスではユーザー数自体がコンテンツとなるため,後追いが困難となっている。例えば「釣りスタ」ではチームを組んで仲間うちで一緒にバーチャルに釣りに出かける(時間を決めて一緒に釣りをする)ソーシャル機能でユーザーが囲いこまれてる。またユーザーはすでに「釣りスタ」用アイテムを買い揃え,魚拓(魚コレクション)もあるため,「釣りゲータウン」に移行するユーザー・インセンティブは生まれにくい。

なお,mixiにおいては,「ピコミク」という単純ゲームを中心としたコンテンツがあったが,2009年7月30日にクローズされた。これは,今大変に注目されているmixiオープン化戦略(mixi上で稼動するゲーム等のアプリを開発するためのAPIを公開し,広く外部パートナーにコンテンツ開発を開放する戦略)にそったものだ。8月末からPC上で,9月末からは携帯上で正式版mixiアプリがスタートするが,この成否が今後のmixi成長に大きな影響を与えることは間違いない。なお,オープン化戦略の詳細については,下記の筆者コラムを参考されたい。

mixi オープン戦略の背景 ~Facebook vs Google のソーシャル・プラットフォーム戦争~


■業績明暗の背景分析(まとめ)

GREEの好業績は,自社開発した高品質ソーシャルゲームがキラーコンテンツになっていることが大きい。それによりアイテムが売れ,サイト滞在時間が増すことで広告売上も伸びる。さらに全キャリアの公式サイトとなっているため,ユーザー課金が容易な点も強みの一つだ。

一方,モバゲーはベンダーが開発したシンプルゲームが中心となっていたため,購買力の乏しい10代が多く,キラーコンテンツが不足している。またGREEに比べてソーシャルゲームやじっくり型ゲームで出遅れたため,ユーザー離れを起こし,ページビューも伸び悩みが続いている。アバター売上の低迷(ユーザーはアバターより実用的なゲームアイテムに投資しはじめている)もそれに拍車をかけている。

mixiはコンテンツが弱いため,PCのページビューで減少が続いている他,携帯ページビューも伸び悩んでいる。特にゲーム面で他サービスと大きな格差がついたため,有料課金のためのフックがなく,以前として広告依存型の収益モデルから脱していない。Facebookを世界一のSNSに押し上げたアプリのオープン化戦略により起死回生を狙う。正念場が近づいている。

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