『2009年5月,Twitter の伸びが突然止まった』 のは本当だろうか?
Twitterの昨年後半からの信じられないような驚異的成長は,ネット界最大の話題となっていた。
2009年に入ってからはさらに加速度を増した。Comscore社のユニーク訪問者数調査によると,1月の約250万人から,4月には約1750万人と,わずか3ヶ月で7倍もの急成長を遂げたのだ。
サービス開始が2006年7月なので,わずか3年足らずで,世界でもトップクラスのWebサイトの仲間入り(Alexaランキングで現在31位)を果たしたことになる。この勢いはFacebook(Alexaランキングで現在3位)のそれを上回っているといってよい。
さて,そのような注目のTwitterであるが,ここに来てその成長に減速感が出始めた可能性がある。上記グラフは6月にComscore社が発表したTwitterのユニーク訪問者であるが,この結果が正しければ,今年5月はサービス開始以来はじめてのスローダウンとなる。
検証するために,他の指標を見てみよう。
まず,google Trends の Daily Unique Visitores を。
こちらは2009年4月までのグラフしか表示されないため,現時点ではなんともいえない。
続いて,老舗 Alexa社 の Daily Reach を見てみよう。
このAlexaを見る限り,順調な成長は続いているように見れる。
さて,最後に,米国からのアクセス状況に限定されるが,compete社の Unique Visitors だ。
こちらは,Comscore社グラフと類似しており,5月に急速に成長が鈍化したようだ。
補足として younoodle社による younoodle Scoreも紹介しておこう。こちらは独自の評価基準(Alexa等のトラフィックに加え,メディアやブログ記事露出を一定期間測定することによりベンチャー企業の成長性を推測するyounoodle社独自指標)であり,アクセス状況というより企業としての成長ポテンシャルを推定したものだ。
この指標の正確性はまだ評価段階で検証されているわけではないが,5月の成長減衰感は,推定訪問者のスローダウンを上回る減速となっており,実に興味深い。
いずれのサービスも推定値のため,精度には限界があるが,Comscore社とCompete社で同様の傾向値が出ているところから推測するに,少なくとも米国からの訪問者数の伸びはスローダウンした可能性が高い。
仮にそれを前提とすると,ひとつの可能性として,Twitterが「ハイテク製品サービスの成長曲線」における大きな溝(キャズム。アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間)にハマッたことが考えられる。
(出展:@IT情報マネジメント用語事典)
キャズムの詳細は 「@IT情報マネジメント用語事典」 キャズム(Chasm) へ。
もとより,Twitterは,他のソーシャルメディアと比較して,そのメイン年齢層の高さ(35-44才)や平均年収の高さ(12%が年収2500万円超),IT関連従事者に偏りがあるなど,ユーザー構成のユニークさ,レベルの高さが最大の注目点だった。
「IT業界やマーケティング関係に従事するイノベータやアーリーアダプターが,話題となっている新しいソーシャルメディアを実体験するためにこぞって参加し,驚異的な伸びを示してきた。しかしその独特のサービス観から,一般ユーザーであるアーリーマジョリティに普及・定着するレベルにはいたっていない」という仮説が成り立つように思う。
まだ1ヶ月程度のデータではなんとも言えないが,これからのソーシャルメディアの方向性にも大きなインパクトを与える現象のため,しばらく注意してウォッチし,レポートしてゆきたい。