オルタナティブ・ブログ > In the looop >

海外ソーシャルメディア事例を徹底的に調査し,マーケティング活用の秘訣を提案するブログ

【顧客コミュニティを成功させる7つの秘訣】 ~ コミュニティをビジネスにどう生かすか?

»

顧客コミュニティを構築し,それを活性化させるには,多くのノウハウが必要だ。
それをこのブログでは7つの秘訣にまとめて紹介したい。

まず第一の秘訣は,「何のためにコミュニティを構築するのか」,つまりコミュニティをビジネスにどのように活用するかを最初に明確にすることだ。

当たり前のようだが,経験上,まずここがあいまいなことが多い。ブームだから,競合企業がはじめたから,これから必要そうだから等という安易な出発点では,ほぼ確実にコミュニティ構築は失敗する。

現在,米国を中心に,企業が顧客との信頼の絆(エンゲージメント)を結ぶために,企業独自に顧客コミュニティを構築するケースが増えている。Facebookなど「パブリック・コミュニティ」は広告媒体として活用がメインだが,企業独自の「プライベート・コミュニティ」ではそのマーケティング活用の視点は全く異なる。

では,「プライベート・コミュニティ」は,どのように活用すれば,どのようなメリットをビジネスにもたらすのだろうか。
ここではマーケティング・プロセス,つまり,商品開発ファン醸成・商品販売アフターセールス のステップにわけて整理してみたい。


1) 商品開発: 商品開発コミュニティ

顧客と商品をともに開発する共創型コミュニティだ。商品がコモディティ化し,機能的差別化が困難になってきた現在,きめ細かな使い勝手や情緒的価値による商品差別化をいかに図るかが,新商品開発のキーとなっている。そこで重要となるのが顧客,それもその企業にとってのロイヤルカスタマーの声である。この分野の典型的な成功事例としては 「無印良品モノづくりコミュニティー」 があげられる。無印良品の事例については,当社と提携しているワールドカフェ笠原氏が Japan.internet.comのコラムで詳細に紹介しているのでぜひ参考にしてほしい。

■無印良品「モノづくりコミュニティー」の事例紹介
驚異的なV字回復を果たした無印良品の秘密
驚異的なV字回復を果たした無印良品の秘密【続編】


2)ファン醸成・商品販売: ファン醸成コミュニティ ~ ソーシャルコマース
 

その企業ないしブランドのロイヤルカスタマーを集め,顧客と企業,顧客間の交流を図るブランド・コミュニティ。最近の事例では,その中で商品を販売するEコマース機能を組み込んだソーシャルコマースに発展させるケースも多い。このコミュニティの目的は,顧客と企業の対話を通じた信頼の構築,顧客ロイヤリティの向上がメインである。さらにファン同士が独自の集合知(より効果的な使い方や商品の推薦など)を醸成したり,そこで発生したクチコミや商品レビューによる販売促進も重要である。さらにこのコミュニティ内での顧客の声をテキストマイニング分析することにより,サイレントマジョリティの生の声を理解できることも大きなメリットである。前回ブログで紹介した「Fiskateers」や,やはり笠原氏コラムで紹介されている「ニッセン・オンライン」が成功事例としてあげられる。特に「Fiskateers」は,これに加えてネットからリアルな売り場への巧みな誘導を図っている。この点もぜひ参考にしてほしい。

■Fiskateersの事例紹介
バナーをクリックしない68%のユーザーにリーチする秘策【中編】
バナーをクリックしない68%のユーザーにリーチする秘策【後編】

■ニッセン・ハピテラの事例紹介
絶大な信頼感を醸成する「ソーシャルコマース」。通販大手ニッセンのオンラインショッピング


3)アフターセールス: カスタマーサポート・コミュニティ

商品販売後のカスタマーサポートを,企業ではなく顧客が主体となってすすめるコミュニティ。この分野ではQ&Aを通じて商品知識やトラブル対応の知識を蓄積させていくタイプが主流である。米国では「Get Satisfaction」,日本では「オウケイ・ウェイヴ」などが交流の場を提供する「セミ・プライベート・コミュニティ」型が多い。本格的な「プライベート・コミュニティ」としては,サポートだけではなく商品改善に主眼をおいた「DELL Ideastorm」や,プロシューマ顧客による高価値創造の場としての 「Lego Mindstorm」 等がある。現在はサポート・コストの削減や効率化が主たる目的だが,やはり顧客の声分析を商品開発やサービス改善に生かすメリットが今後は注目されるだろう。

以上,マーケティング・プロセスの観点から「ブライトベート・コミュニティ」を3つのタイプに分類し,その特長を述べた。

ただし,これらは本来は分離されるべきではなく,商品開発 ~ ファン醸成・商品販売 ~ アフターセールス すべてのプロセスにおいて,一気通貫で顧客の声に耳を傾け,マーケティングのフィードバック・ループを確立すべきである。それにより,真に企業が顧客と共創するマーケティングを実現することができる。

Community_cycle

このレベルまで到達している企業は世界を見渡してもわずかしかないが,これから各分野におけるコミュニティ先陣競争が加速していくことはほぼ間違いないだ ろう。前コラムで引用したガートナー社調査においても,米国大手企業の多くがコミュニティをマーケティング活用するだろうと予想している。


さて,今回のテーマ,顧客コミュニティ構築7つの秘訣その1「コミュニティから何を得たいかを明確にする」についてまとめてみよう。

1.商品開発 ~ ファン醸成・商品販売 ~ アフターセールス,いずれの局面でコミュニティを活用したいのかを明確にする。

2.企業が得られるメリットは,(1)商品開発の改善,(2)顧客ロイヤリティ向上,(3)顧客の集合知活用,(4)クチコミによる販売促進,(5)リアル店舗への誘導,(6)テキストマイニングによるサイレントマジョリティの生の声分析,(7)カスタマーサポートの効率化 があげられる。

3.本来は,このプロセスを一気通貫し,フィードバック・ループを構築することで最高の効果を得ることができる。



なお,宣伝で恐縮ですが,当社では,ワールドカフェ社と提携し,「成功の秘訣」にそって,企業課題の理解からプロジェクト計画,目標設定,個別KPIへの落とし込みまでコミュニティのビジネス活用をコンサルティングしています。ご興味ある方はコンタクトいただけると幸いです。

Comment(0)