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バナーをクリックしない68%のユーザーにリーチする秘策 【前編】

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2008年2月,米国スターコム社他2社から注目すべき共同調査結果が発表された。
バナー広告の全クリックの50%は利用者全体の6%が行っており,さらに68%のユーザーは調査期間内で一度もクリックしなかったという内容である。

Natural Born Clicker (調査詳細を記したパワーポイントもダウンロードできます)

(1) バナー広告の総クリック数の50%は,利用者全体の6%のユーザーによる
(2) バナー広告の総クリック数の80%は,利用者全体の16%のユーザーによる
(3) 利用者全体の68%のユーザーは,1度もクリックしなかった

この調査では,特に(1)の6%のヘビークリッカーを Natural Born Clicker と命名している。彼らはネットに一般人の4倍も時間を費やすが、それに見合うネット関連の出費は行わないとしており,クリック数偏重の考えに対して警告を発している。

あなたは最近,いつパナー広告をクリックしただろうか?
私ごとだが,自分でも思いだせないぐらい前のような気がする。

なぜかと言えばとても簡単なことだ。
情報過多の中でクリックをする心の余裕がないし,さらにその後に出てくるであろう一方的な広告に全く魅力を感じないからだ。

ここに現代人の気持ちを端的にあらわしたグラフがある。

Graph1_6

この総務省調査は,情報量をビット換算して,人が選択できる情報と,人がこなせる情報の格差が急激に広がっていることを示している。そのきっかけはインターネットの登場であり,それ以降わずか10年で情報量が400倍になるという未曾有の情報大爆発の様子が見て取れる。

その結果,広告の価値は悲しいほど低下した。

Graph2_3

では,これから企業は顧客にリーチするために,どのようにコミュニケーションすれば良いのだろう。
難しそうに見えるテーマだが,ユーザーを自分自身におきかえてみると実は単純だ。

タイムリーなお得情報,信頼できる評判面白いコンテンツなど,ユーザーの期待を超える情報はいつの時代も魅力的だ。例えば,ほしかった商品を買う直前に,さらに安く買える情報が入ってくると最高にうれしいものだ。そんなお得な経験は人にクチコミしたくなるし,信頼できるクチコミは相手にとってもウェルカムだ。また思わずクリックしたくなるコンテンツも強い。

Will it Blend という有名な動画がある。

BLENDTEC社の創業者ディクソン氏によるミキサーの実演動画であるが,その内容があまりに刺激的なため YouTube上で強烈なクチコミを誘発し,一気に有名になったものだ。この動画ではなんとiPhoneまでブレンドしてしまう。

YouTube: Will it Blend?

彼らは米国の小さな家電製造メーカーだ。主力製品であるミキサーはそのパワーと耐久力で評判を得ていたが,大きな広告宣伝予算などもちろんない。そこで新任マーケティング責任者のライト氏は,創業者のミキサー開発への熱意をビデオで表現し,YouTubeに流すことを思いついたのだ。

そこからバズマーケティングの伝説がはじまる。最初の一週間でYouTubeの動画閲覧回数は100万回を超えた。Will it Blendはシリーズ化され,クチコミがさらなるクチコミを呼び,ほとんど広告費を投下することなく,2年間で売上はなんと5倍になったのだ。

この動画から得られる教訓は多い。
話題性の演出による巧みなクチコミ着火,ソーシャルメディアの有効活用,商品特性のメッセージ化など。過激さゆえの危うさはあるが,ここには成功のエッセンスが満載されており,明日の広告へのヒントが息づいている。(続く)

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