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企業に属さないプロワーカー(インディペンデント・コントラクター)の日常をつづっていきます。

プロフェッショナルの休息

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今朝、ひとりのプロフェッショナルが現在の全ての仕事に区切りをつけて「長い旅」に入りました。その人の名は、


ジョン・カビラ


9月の下旬にJ-WAVEをはじめとする全ての番組のレギュラーを降板し、休養に入る(本人は長い旅に入る、という表現をされていましたが)ことを宣言されました。J-WAVEだけでなく、最近はTVでの活躍も多かったので、ファンにとってはかなり寂しいお話です。


思い起こしてみれば、88年のJ-WAVE開局当時から始まった朝番組Tokyo Today(現在のGood Morning Tokyo)をカビラさんは担当され、そしてそのカビラさんの声が浪人、学生時代の私の目覚ましがわりでした。それ以来、私の中では、


「ラジオといえばJ-WAVE、J-WAVEといえばジョン・カビラ」。


開局当時のJ-WAVEをご存知の方は覚えていると思いますが、当時のJ-WAVEはニューエイジミュージック中心の選曲で、本当に洗練されていました。バブルの崩壊あたりから、他局のFM番組と同じような路線を進んでしまいましたが・・・。


テンションの高い第一声、「Gooooood Mooooorning Tokyooooo!!」に始まり、世界中の至る所にかける突撃電話、朝のモチベーションアップにふさわしい選曲、そしてradio voiceと呼ぶにふさわしいカビラさんの声。しばらく間が空いたりしたものの、その後も私の朝はカビラさんの声とともにありました。


 さて、今回カビラさんが取られた「長期休暇」のスタイルですが、私の身近でも最近実践された方がおられます。IC協会理事長の秋山さんです。
 この春まで某社のコンプライアンス推進に関わっておられ、その任を全うされた後、長い休養期間に入られました。ぼちぼち再始動する旨、最近のブログにも書かれていますが、秋山さんも大きな仕事の区切りがつくごとに長い休みを取り、十分な充電期間を取ってから仕事に復帰するというスタイルを繰り返されています。実はカビラさんも99年に一度、一年間の完全休養をされています。


 昔から日本人は休暇の取り方がヘタだと言われています。企業人であればこのような休暇の取り方は一ヶ月でも難しいでしょう。一方でIC、プロワーカーであればこのような休暇も仕事の取り方とコントロール次第では可能です。実際には生活面やクライアントとの関係を考慮して実践している人はまだまだ多くありませんが、今後少しずつ増えていくと思います。


 カビラさんの番組のブログによれば、今回の休暇は数年前から計画していた、ということです。このような休暇の取り方をする方は、おそらく仕事と自分自身が大事にしている価値観とのバランスが取れている人だと思います。番組のファイナルウィークの前後に、カビラさん自身「全力疾走してきたので、いったん止まって深呼吸したい。そして家族のために時間を使いたい」ともコメントしていました。
 また、自分がバーン・アウト(燃え尽き)することを未然に防ぐために、あえて長い休暇を取り、自分本来の生き方との均衡を保っているのでしょう。言い換えると、より長く仕事をできるようにするために、必要な工夫をしているということです。


 カビラさんも人気の絶頂にあり(しかも看板DJ)、レギュラー番組を多く持つ中で、長期休養の調整をつけるのは非常に大変だったかと思います。
 しかし、その希望を通すだけの、周囲が認める実績とプロとしての価値があり、そして最も重要なのは、周囲がその生き方、価値観を認める人間性をカビラさんが持ち合わせているのでしょう。そして「長い旅」が終わった後に、再び仕事の現場に戻って来れる確信
もあるのだと思います。


考えてみれば、J-WAVE以外にTVにも出演されていることを考えると、所属事務所に入りつつも、彼も業務委託、契約で仕事をしている「プロワーカー」だと思います。
少し古い記事ですが、カビラさんの興味深いインタビューを見つけました。

この中で前職のCBSソニーを退職するきっかけを、

「自分が最大限パフォーマンスして、それを最大限評価してもらったとしても、それが自分の持っている自己実現の形とは違っているような気がしたんです。」

と回顧されています。これはまさに、IC、プロワーカーになる人が組織を飛び出すきっかけのひとつです。


最後に余談を。


 私のオフィスは六本木にあるので、J-Waveのある六本木ヒルズ、けやき坂スタジオは歩いて3、4分のところにあります。時々けやき坂スタジオを横目で見ながらオフィスに向かうのですが、ある日偶然、ヒルズ併設のグランドハイアットの入り口で、ジョンカビラさんご本人をお見かけしました。その時はお知り合いの方か、ファンの方かはわかりませんが、少し年配の女性の方に対して、立ち話でしたが非常に丁寧にお話しをされていたのが印象的でした。


 個人的には、朝がとてもさびしくなるな、と思います。しかし、カビラさんは必ずいつか帰ってくるでしょう。彼もきっと仕事が好きなプロフェッショナルだと確信しているからです。仕事と家庭、プライベート、そして自分自身とのバランスを取りながら生きて行く姿に、あらためてファンになりました。


いつか再び、あの元気な声を聞ける日を楽しみにしています。

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