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もしも洞察力があったなら……。

スローガンとキャッチコピーに見る早稲田ラグビーの強さの変化

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今シーズンの大学ラグビー選手権は帝京大学の創部初優勝で幕を閉じた。個人的に応援している早稲田ラグビーは決勝戦に届かないという残念な結果となった。

実力があっても、ちょっとしたことで試合結果は左右されるのがアスリートの世界。ここでチームワークやキャプテンシー、プレイの技術などについては言及しない。しかし、チームを束ね、ここ一番のときによりどころとなるチームスローガンについて触れてみたい。

今シーズンのナカタケラグビーの標語は「Explosion」だった。Explosionとは、爆発、である。チームとして力を出し切って爆発する。そして、見たこともないようなプレイをする、そんなイメージが思い浮かぶ。きっと、監督やファンにはとてもわかりやすい言葉だったに違いない。

しかし、ちょっとだけ気になる。選手一人一人のここ一番のプレイで実力以上の力を出そうというとき「Explosion」はマジックワードとして働いたのだろうか。もちろん、きっと多くの選手には効果があったのだろう。すばらしいタックルやランを魅せた選手もたくさんいたはずだ。重要な問いは、全員がそうであったかどうか、である。人は、厳密に、科学的に言えば爆発しない。いや、してはいけないのだ。スポーツの世界で言う爆発とは、上述のように、総力を発揮して、相手を凌駕して勝利する、である。つまり、圧倒的な攻撃を行うことを爆発と言う。(すごいタックルによって守備することを、爆発する、を起点に翻訳できている選手は、一流のタックルをするに違いないが)

つまり、選手のプレイが爆発するためには以下の2つの条件が必要となる

1)攻撃側である
2)「爆発」という間接的な表現がきちんと理解されていて、実際の行動までの翻訳に手間がかからない

この条件がそろっていないときには、ひょっとしたら「Explosion」は、不発やくすぶって終わっていることがあったかもしれない。

過去と比較するのは現役のチームに失礼な話だと思うが、2001年から数年の早稲田ラグビーには「Ultimate Crush」というスローガンがあった。訳すと、「究極のぶつかり合い」だ。選手の理解はしやすい。ここ一番や、困ったときはなりふりかまわず「究極のぶつかり合い」をすればいいのだ。これは攻守かつすべての選手に当てはめることができるし、何より選手のプレイという現場に直結した「指令」なので、行動に移しやすい。結果論だが、早稲田ラグビーはこの後常勝集団となっていったのだ。

ExplosionもUltimateCrushも、英語だし、なんとなくかっこいい。しかし、スローガンやメッセージの重要なことは、「その言葉の受け手に行動や思考の変化を与える言霊」になっているかどうか、である。これが徹底されることによって、人々の関心を集める「キャッチコピー」からチームや選手を動かす「スローガン」や「メッセージ」へと変化を遂げていくのだ。

いずれにしても、次年度の早稲田ラグビーの再起・再生による勝利、そして優勝を願ってやまない。

Kamiigusatt
photo by TT 2004 at Waseda Univ. Kamiigusa Ground


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