あるいはファシリテーションが得意なコンサルタントによるノウハウとか失敗とか教訓とか

働きがいと働きやすさ、あるいはプロジェクトと投票立会人

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働きがいについて考え始めたのは、10年くらいまえだろうか。
何かの講演会で堀場製作所の方の話を聞いた時だ。

堀場製作所は、働きがい会社ランキングというものに選ばれました。
うちは立派な福利厚生を用意したり、休みを沢山あげたりはできない。けれども、社員にとって、働きがいを感じられる職場を作ることならば、チャレンジできます。社是は「おもしろおかしく」です。


これは共感できる話だった。
やたらと福利厚生を充実させる、みたいな方向性は僕は好きではない。それよりも、もっと本質的な所をウリにしたい。それは、お給料と仕事のやりがいのはずだ。

ちなみに堀場製作所さんは「おもしろおかしく」が社是ということだが、僕らケンブリッジの合言葉は「Have Fun!!」だから、多分言わんとする所は一緒だろう。


堀場製作所さんが選ばれたのは「Great Place to Work」、日本語で「働きがいのある会社」ランキングという調査だった。
これ、日本語訳がすごくいいと思う。「働きやすい」ではなく「働きがい」。この2つは似ているようで、全然違う。
そして僕が追求したいのは、自分の会社(とお客さんの会社)を、働きがいのある職場にすること。


働きがいと働きやすさは違う。
働きやすいけれども、働きがいのない仕事というのも、あるだろう。
今パッと思いついたのは、選挙の立会人のバイト。小学校の体育館に座って、投票者が来ると投票用紙を渡したり、見守ったりする仕事です。

1箇所に10人くらいいるけど、投票する住民はチラホラしか来なかったりするから、やたら暇そうですよね。民間企業なら1/3くらいの体制でこなす仕事に見える。
しかも「俺が休んだら仕事が回らずに大変なことになる!」というたぐいのプレッシャーもなさそう。
経験したことがない人にしか分からない気苦労や肉体的負荷についても、どう想像してもなさそうだ。
はたから見ると、すごく働きやすそうに見える。選挙がたまにしかないのが玉に瑕かな。


一方で、選挙立会人のバイトって、僕にとっては「働きがい」を実感できない仕事の最右翼だ。

と言うと、
「なに言ってるんですか!選挙立会人は民主主義の根幹を支える、とても大事な仕事です!」
という真面目な人もいるかもしれない(たぶんそういう人は、このブログを読まないけど)。

もちろん、それは正しい。誰かがその崇高な仕事をやらなければならない。
でもそういう理念って、仕事にとって「ないよりいいけど、それだけで働きがいを感じられるもんではない」というものだと思いませんか?

中華料理屋さんで出される古典的なチャーハンの一番上に3粒だけ乗っているグリーンピースみたいな感じ。あるとちょっと嬉しいけど、チャーハンの美味しさを決定的に左右する訳ではない。


就活中の学生さんと話をすると、「仕事を通じて社会貢献を」とか「理念に共感した会社で働きたい」みたいな立派なことをいう人が多い。
もちろん、面接用のトークという事情もあるだろうけれども、言っている本人も、何度も喋っているうちに、本気でそう思ってそう。

でもさ。1日8時間とか10時間、30年も40年もバリバリやる気を維持するには、理念だけというのは、あまりに脆弱だよね。チャーハンのグリーンピースだけでは、腹が膨れないのと同じ。

例えばウチの会社にもビジョンやミッションはある。共感する社員もいると思うけれど、「ビジョンを目指して、毎日頑張れます!」という話は聞いたことがない。ウチの社員はもっと行動主義的な人が多いように思う(社員のなかで、僕はこういう話がまだ好きな方かも)。

仕事は時にシンドイし、何かを達成するには粘り腰が必要。
その割に誘惑は多い。特にウチの会社は裁量労働制だから、明日の打ち合わせの準備をおざなりにして帰っても、別に給料が減るわけではない。仕事中にTwitterやってても、その人の勝手だ。

つまり、いい仕事をするにはもっと頼りになる「働きがい」がないとだめなのだ。

では、働きがいとはなにか?
選挙立会人の仕事にはないもので、働きがいを感じられる仕事にあるものってなんだろうか?いくつかあげてみよう。


1)人は、チャレンジに働きがいを感じる

選挙立会人の仕事って、大事なんだろうけど簡単ですよね。スキルが不足している焦りとか、失敗のストレスもない代わりに、やり遂げた達成感もない。

「誰もがやりきれるか半信半疑だったプロジェクトに挑む」というのは、理屈なしにやりがいありますよ。


2)「俺の」という思い入れが働きがいに転換する

働きやすい仕事って、基本的に替えが効く仕事だと思う。
「あなたじゃなくてもできる仕事だから、いつでも休んでもいいよ」という仕事に働きがいを感じるのは、難しい。

育児や介護を抱える社員の立場が分かりやすいのだが、突発的な休みを取れる安心と、働きがいの両方を追い求める難しさはここにある。
あなたならではの仕事、でもいざという時はピンチヒッターを頼める、というのはマネジメント難易度が高いからだ。
それくらい、働きがいと「俺ならではの仕事」というのは密接な関係がある。

これを書いていて思い出した。
僕が最初にSEとして就職した時に、友人と飲んでいたら「SEとかって、俺ならではの仕事って感じがしないんだよね」と言われた。
彼は新聞社への内定が決まっていたので、「俺ならではのクリエイティブな仕事やるぜ!」と盛り上がっていたんだと思う。

仕事に「俺ならでは」を求める、彼の姿勢は正しいと思う。
ちなみに僕自身は、SEやコンサルタントという仕事が「俺の」という要素がない仕事、とは当時も今も思っていない。
彼が記者になってしばらくしてから書いた「地方競馬のスタンドの改修が終わりました」という社会面の記事を読んで、「自分が書いたものが紙面に載るのは嬉しいだろうけど、ぶっちゃけ僕の方が、自分ならではの仕事をしてるよね」と思っていた。
まあ、20年前の話です。おーい窪田ー。元気かー。


3)努力と成果の関連が(ゆるくでも)感じられる

単純な仕事であれば、努力すれば成果にすぐに跳ね返る。
だが難しくて複雑な仕事になればなるほど、努力しても、すぐに成果に結びつくとは限らない。

それでも、全く感じられないと、働きがい上はシンドイ。頑張っても頑張らなくても結果が変わらない状況で頑張る人は、どこかで思考停止している。

・2年前に勉強したことが、今度のプロジェクトでお客さんと議論するときのベースになった
・毎回、分析資料を一生懸命作る。3回に1回しかうまくいかないけど、一生懸命やらない時の勝率はゼロだ
くらいの緩さでもいいから、努力と成果の関係を感じ取れるといい。


4)価値の実感

やっぱり、価値がある仕事だ、と感じられるのは大事だと思う。
さっき、「理念だけで働きがいは得られない」と書いたけれども、ここでいいたいのは、理念というふわふわしたものよりは、もっと手とって感じられるような価値のことだ。

例えば、プロジェクトが成功したので、お客さんのビジネスがうまく回るようになった、とか。
僕らとプロジェクトに取り組むのを、お客さんが楽しんでくれていて、いきいきとしている、とか。
一緒に仕事をしたお客さんの若手社員がエースに成長したとか。

そういう、実感できる価値のことだ。
これは働きがいに直結する。



以上、色々かいたけれども、「働きがい」というのは、個人的な感覚だ。
働きがいよりも働きやすさの方が大事、という人もいるだろう。
僕とは違う基準で、働きがいを感じる人もいるだろう。
別にそれでいいと思う。
僕らは僕らなりの働きがいを追求していきたい。そういう人に、多く集まって欲しい。

入社する、という意味でも、僕らとやりがいのあるプロジェクトを一緒にやる、という意味でも。


はじめて「働きがいのある会社」ランキングを知ってから、約10年。当時はウチの会社は小さすぎてランキングに参加できなかった。
そのうちに小規模会社部門ができたけれども、忙しくて応募せずに放置していた。
ようやく去年参加し、先日、初登場2位という知らせを聞いた。
ランキングに入ること自体は、まあ、当然な気もする。ずっと働きがいのある会社を作ろうと努力してきたから。
とは言え、1位ではないし、順位は関係なく、もっともっとやりたいことはある。もっと働きがいのある会社にする、ノビシロは沢山ある。頑張ろう。




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僕らは働きがいを制度ではなくカルチャーや仕事の選び方などで達成しようとしていますが、「しかけ」「取り組み」みたいなものは、沢山作っています。
まずはWebサイトに、ケンブリッジが考える働きがいについて簡単にまとめたので、そちらを御覧ください。

この手のノウハウはOPENに公開するポリシーですし、文章には落としにくいので、メディアの取材や情報交換などをご希望であれば、お気軽にご連絡ください。

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当ブログの、関連する記事をあげておきます。

仕事を任される
http://blogs.itmedia.co.jp/magic/2011/09/post-f7b4.html

楽しんで仕事をする
http://blogs.itmedia.co.jp/magic/2015/03/havefun.html

リーダーシップの引き出し方
http://blogs.itmedia.co.jp/magic/2012/12/post-7c12.html

自分ならではのプロジェクト
http://blogs.itmedia.co.jp/magic/2015/04/the_project.html

裁量労働制
http://blogs.itmedia.co.jp/magic/2014/06/post-74b7.html

カルチャーの作り方
http://blogs.itmedia.co.jp/magic/2014/12/post_3.html

顧客や株主よりも、社員が大事なこと
http://blogs.itmedia.co.jp/magic/2014/11/10-22f6.html

ワークライフバランス
http://blogs.itmedia.co.jp/magic/2014/07/post-2236.html

成長は自己責任
http://blogs.itmedia.co.jp/magic/2014/04/post-111c.html

評価制度
http://blogs.itmedia.co.jp/magic/2012/06/post-8ac8.html

仕事を通じての育成
http://blogs.itmedia.co.jp/magic/2011/10/post-db92.html

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