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なぜ「キャリアは自己責任」なのか?あるいは主体性とリーダシップの話

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ウチの会社にも新入社員たちが入ってきた。まあ、中途採用をやっているので年がら年中入っては来るのだが、やはりちょっと新鮮ですよね。新卒は。
で、彼らは入社2日目くらいに「キャリアは自己責任です」と言い渡されます。
成長して次々とチャンスを掴むのも、ゆっくりとしか成長しないのも、停滞するのも、本人次第ですよ、という意味だ。

これは随分と親切なことだと思う。
ほとんどの会社で「キャリアは自己責任です」なんて社員に言わない。でも、うちの会社は違う、と思っている人がいたら要注意。
本質的には、結果的には、どこの会社だってキャリアは自己責任なはず。グダグダな社会人生活を過ごして、ポンコツにしかなれなかったとしても、別に会社が何とかしてくれる訳じゃない。



「キャリアは自己責任」というと、会社が社員の教育を放棄していると受け取る人もいるかもしれない。ウチの会社の場合は、全くそうではない。

最初に学ぶべき知識、身に付けるべきスキルの全体像が示される。
トレーニングもたくさんある。
OJTではみんな、超面倒見がいい(やや良すぎるのが問題)。
OJT期間が終わっても、現場での修行は続く。
コーチもいる。
トレーニングを企画する事で学ぶ事も奨励される。
その時はもちろんサポートしてもらえる。
人事評価も超厳密で、得意なこと、苦手な事は分かりすぎるくらい分かる。


でも、そういうのって「学ぶための環境は必死で整えますよ」というだけの話だ。その環境を活かして成長し、いい仕事を任されるかどうかが本人次第なことには変わりない。
沢山ある知識体系の中から何を学ぶか、どういうコンサルタントになりたいのか、どういうリーダーになりたいのか、は全て「自分で」決めなければならない。
(もっと言うと、決めない自由もある。僕自身は決めたことがない)


結果、伸びる人と伸びない人はいる。(伸びる人の方が、ずっと多い)
あっちに伸びる人も、コッチに伸びる人もいる。
数年停滞した後、いきなりブレイクする人もいる。

いかにも外資系的な個人主義といえばその通り。新卒で一括採用して、護衛船団方式で同期が足並み揃えて成長しよう、というモデルとは対極だ(今どきそういう会社も少なくなったが)。



さて。
なぜ「キャリアは自己責任」と一見突き放すような方針なのか。
それは、自主性を伴った学習でなければ、僕らの仕事(変革プロジェクトをファシリテートすること)には役に立たないからだ。


うちの会社のビジネスモデル上、
・現状を所与の条件として受け入れず、
・思考停止せず、
・主体的に考え続ける、
・リーダー
を育てることが死活問題だ。ビジネスの成否はほとんどそれだけにかかっている。

そうだとしたら、

「君、レベル7になったらラリホーを覚えたまえ」
「は、勉強してきました」

では、だめなのだ。
「お客さんのためになることってなんだろうか?」
「どうやったらこの難しいプロジェクトを成功させられるだろうか?」
「そのために、自分は何ができれば貢献できるだろうか?」
を主体的に考え続けなければ、主体的に仕事をするリーダーにはならない。


簿記の知識とかデータベースがどうとかプロジェクト管理とかよりも、リーダーシップが最も価値のある能力である。そして、主体的に学ぼうとしない限り、その、最も価値のある能力が伸びない。
「言われた事を、どれだけ要領良くやるか」というマインドから抜け出せないからだ。

例えばメソドロジー(方法論)。
僕らには膨大な量のメソドロジー体系がある。これを身につける事は大事だし、結構大変だが、その通りにやる、という思考停止は厳禁だ。
プロジェクトは毎回違うから、「レシピの通り」にやっても上手くいかない。
いつも「こんなメソドロジー、俺が改良してやる」と狙い続けなければならない。
僕はウチの会社に入ってから、あるメソドロジーを使う度に「これよりいい方法を考える」とトライし続けてきた。
(ちなみに、何回トライしても複雑になるだけで改良できなかったので、10年後についに諦めた)


コンサルタントとは、人に影響を与えるのが仕事。そして変化をリードするのが仕事。どちらにせよ、主体的な人間でなければできない。
「君、これを学びたまえ」式の方が、知識をさっさと身に付けるという意味での学習効率は上がる。
でも、効率より主体性の方がずっと大事なのだ。



と言う事で、大変有用なトレーニングに出ない社員(別に不真面目な訳でなく、お客さんとのプロジェクトに熱心すぎるだけである)の背中を蹴っ飛ばしたくなるのを我慢し、いつか学ぶ気が起きるのを気長に待つ日々である。




※この記事は岩田健太郎さんの「主体性は教えられるか」を読んでいる途中に書きました。ま だ半分しか読んでいないけど、僕の問題意識ととても近いです。

 

 

 

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