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RFCの産みの苦しみ

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実に3ヶ月ぶりのエントリとなります。お久しぶりです。

RFCというのは、インターネットの技術標準を始めとする技術文書が並ぶドキュメントシリーズで、もともとはRequest For Commentsの略でした。そういえば前に、こんなエントリを書きましたね。

40歳の「コメント募集」

日本人にもIETFで活躍してRFCの著者となる人が増えてきましたものの、技術開発に携わる方々がほとんどで、運用者からのものはありませんでしたが、今回8月に1本、日本の運用技術者から1本RFCが発行されました。

RFCにはいくつかのカテゴリーがあって、単なる参考情報であるInformationalから、インターネットプロトコル標準である Standard Trackまであり、当然ながら Standard Trackを通すのが最も大変。今回のRFCは堂々のStandard Trackです。

IPv6アドレスの表記方法の統一に関するもので、NEC BIGLOBEの川村 聖一さんと、NECアクセステクニカの川島 正伸さんによる共著です。

RFC5952 : A Recommendation for IPv6 Address Text Representation

今回川村さん川島さんにJPNICのメールマガジンへの寄稿をお願いしまして、
とても素敵な記事が仕上がりました。

IPv6アドレスの推奨表記、RFC5952ができるまでの道のり [前編]
~IPv6アドレス表記の柔軟性が引き起こす問題とRFC5952の解説~

http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2010/vol779.html
こちら、川島さんによる内容の解説

IPv6アドレスの推奨表記、RFC5952ができるまでの道のり [後編]
~一つのRFCができるまで~
http://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2010/vol780.html
こちら、川村さんによる「産みの苦しみ」

彼らの動機は単純で、かつ深刻でした。IPv6アドレスは、IPv4アドレスに比べ劇的にアドレス長が長く、今までの表記方法で短縮表記が認められていたのですが、規定が柔軟でした。柔軟というと聞こえがいいですが、表記に揺れがあるということで、特にログを機械処理するような局面で深刻な問題があったんです。
これを統一することで問題を解消したい。これが、単純で力強い動機です。

表記仕様を固めるのは、ルータベンダの技術者である川島さん、それをIETFで通していくのは、米国出身でバイリンガルの川村さん、という役割分担です。

川島さんの内容解説編は、このRFCの内容と意図するところを非常に分かりやすく書いてあります。日本人がRFC5952を理解する上で必携といっていいのではないでしょうか。

川村さんの「産みの苦しみ」編は、技術者ならずとも一見の価値があります。

IETFにおける技術標準の制定プロセスは、rough consensus and running code という標語とともに、その概要は運用技術者にも広く知られているのですが、実際にそれを通していく過程の大変さは実際にやってみた人でないと分かりません。このRFCは統一的なアドレス表記方法に限った標準なので、プロトコル一つ書き起こすのに比べると数段シンプルなのですが、それでもやはり大変な作業な作業だったようです。

そのプロセスが、非常に克明に(生々しく?)語られています。是非一度ご覧下さい。


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