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日経ITPro記者さんのクラウドに関する疑問に勝手に答える

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ちょっと前になりますが、日経ITProの記者の眼のコーナーに「調べれば調べるほど分からなくなる『クラウド』」 という記事が載りました。クラウドを企業コンピューティングの世界で活用しようとする時に、ある程度企業ITを経験した人であれば誰もが思う疑問だと思いますので、ここで勝手に私なりの回答を書いてしまいます。

1.データの移行はどうするのか?

システムにリプレースがあるように,サービスのリプレースもある。A社のSaaSからB社のSaaSにリプレースする場合,A社のSaaSに蓄積されたマ スター/トランザクション・データをB社のSaaSに移行しなければならない。その際,どういう形式でデータを出力できるのか,どうやってデータを運搬す るのか。

この質問に対する答は、「ユーザーは、今までOSのAPIやプロセッサの命令セットにより囲い込まれてきたように、クラウドの世界ではデータにより囲い込まれる」ということだと思います。いったん特定のOSやプロセッサを使い出して、上位のアプリケーションが蓄積してくるとそう簡単に他のOSやプロセッサには移行できなくなります。これが、マイクロソフトやインテルに圧倒的な成功をもたらした理由です。

同様に、クラウドの世界では、いったんあるクラウド・サービス内に重要データが蓄積すると、そう簡単に他のクラウド・サービスには移れなくなります。Salesforce等、データのエキスポート機能を提供しているサービスは多いですが、現実に、エキスポートしたデータを変換して、他のサービスにインポートする作業には相当な負荷を要するでしょう。ということで、サービス事業者のリプレースはそう簡単ではないでしょう。

これは、Tim O'ReillyがWeb 2.0企業のビジネスモデルについて"Data is the Next 'Intel Inside'"と行ったのと同じ考え方です。

2.誰が障害を復旧するのか?

障害発生時のオペレーションを構築するのも難しそうだ。一般的に,情報システム部門は,システム障害に備えて緊急時の連絡網を整備している。そこには,情 報システム部門の担当者のほか,インテグレータ,製品/サービス・ベンダー,利用部門の責任者など関連する会社や担当者の連絡先が網羅されており,ミッ ションクリティカルなシステムではいつでも必要な担当者が駆けつけられる体制を敷いている。

というような体制をクラウド事業者は提供できるのか?という疑問ですが、これに対する私の答は「そもそもそういう堅牢な体制を必要とするシステムをクラウドで稼働してはならない」というものです。

現状のクラウドの可用性の典型的SLAは99.9%、つまり、年間合計9時間程度はダウンしていることを想定しろいうものです。重要な点として、それを越えてダウンしても、料金が返還されるだけで、業務上の損失が補償されるわけではありません。

「コンピュータが発電所のようになる」というのは口で言うのは簡単ですが、企業コンピューティングの要件は単に一定電圧の電力を供給するという単純なお話ではありません。

3.エンジニアはどう確保するのか?

「C/SやWeb時代のノウハウが通用しなくなってしまうのでは」という疑問です。私もしばらくは混乱状態が続くと思いますが、若い世代はどんどんノウハウを蓄積していくと楽観視しています。安く容易に実験できるのがクラウドの良いところのひとつだからです。

ここでの最大の課題は、SQLがGQLになってどうのこうのという話よりも、より巨視的な設計規範の問題だと思っています。特に、レイテンシやトランザクション境界を今まで以上に意識した設計が必要となってくると思います。このあたりのお話は10/30のグリッド協議会のセミナーでちょっと触れる予定です(30分のセッションなのであまり深くは語れないと思いますが)。

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