クラウドとグリッドの違いとは?
#「次回に書く」と言っていたわりにもったいぶってすみません。お盆明けにアップした方がよいかなと思ったので。
網羅的に調べたわけではないですが、ベンダーの人と話したり、文献を調べたりすると、クラウドとグリッドの違いについては以下のような考え方があると思います。
1.クラウドとグリッドは同じだよ派
ASPとSaaSの関係のように、基本的な概念は同じだけどマーケティング的な理由で新しげな言葉を使ってみたということだと思います。以前のエントリーのコメントにあるように、クラウドは利用者側から見たパラダイムで、グリッドは実装側から見たパラダイムという見方もできるかと思います。
2.グリッドはクラウドのサブセットだよ派
IBMはこの立場のようです(実は、記者発表では触れてませんでしたが業界アナリスト向けの電話会議で私が米国のクラウド責任者に質問しました)。
グリッドは広域分散の超並列アプリケーションの基盤、クラウドは超並列でない通常のアプリケーションも扱う(たとえば、SFDCのCRM)なので、グリッドより範囲が広いということです。
ただ、このグリッドの定義はグリッドという言葉が出てきた時の最初の定義であって、その後、グリッドの定義は大きく拡大して、今のクラウドと同じような意味、つまり、ネットワーク上のどこからでも資源にアクセスできる環境という意味で使われてきたと思います。この傾向は、Globusとか、WSRFでグリッドとWebサービスを融合なんて動きが出てから顕著になったと思います。「グリッドは並列アプリケーションだけを対象にしているわけではない」という話は何回も聞きましたし、「ユーザーの状況に合わせて好みの音楽が自動的にストリーミングされてるネットラジオ」をグリッドのユースケースとして挙げてた研究団体も知ってますので、グリッドの定義が一時期大きく拡大していたのは確かです。
まとめると、2の立場の人にとっては、「グリッド=分散並列アプリ」→「グリッド=ネット資源の仮想化(=クラウド)」→「グリッド=分散並列アプリ」ということで、グリッドの定義は一度拡大して、また、元に戻ったということですね。
3.グリッドなんて知らないよ派
今、クラウドを推進している中心的ベンダーであるグーグル、アマゾン、SFDC等はグリッドについてはほとんど何も発言してないので、あまり違いを気にする必要はないですね。
4.自分でもよくわかってないよ派
自分でも定義がよくわかってないバズワードを他人に対して解説する人もいるというのは否定できませんね。
そういえば、以前某ベンダーのCTOにインタビューした時に「貴社のクラウド戦略は?」みたいな質問をしたら「君がクラウドは何かを定義しないとその質問には答えられない」と言われたことがあります。賢明だと思いました。
個人的には、議論のしやすさから、2.の立場を取りたいと思っています。