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フリーライダーを許すビジネスモデルについて

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ペニーギャップ(「無料」と「ほぼ無料」の間には消費者意識に大きな差がある)という話を以前書きました。

ペニーギャップが本当にあるとするならば、たとえば、100万円の収益を上げなければならない場合には、一律100円の料金で1万人に売るよりも、無料で多数の人に利用してもらってそのうちの1000人がプレミアム版やグッズの料金として1000円出してくれることを期待した方がよいケースがあり得ます(もちろん、売ろうとしているサービスや製品の特性にもよりますが)。

こういうモデルをフリーミアム(freemium)モデルというそうです(プレミアム(premium)のシャレです)。もちろん、フリーミアムモデルにも、誰も有償版を買ってくれないリスクがあります。しかし、ペニーギャップが存在するならば、100円なんてただ同然だからみんな買ってくれるだろうという売り手の期待が成り立たないリスクの方が高いと思われます。

フリー版を大量に配って高機能版(あるいはサポート付き版)を有償で売るソフトウェアとか、ネット上で無料で(広告課金のみで)公開しているテレビ番組(一部のコアなファンがDVDを買ってくれることを期待)、CDを無料で配ってコンサート料金で稼ぐ等がフリーミアム・モデルの例です。

日本でもネット系のサービスはニコ動のようにフリーミアムぽいモデルを採用しているところが多いですが、コンテンツ販売だとそうでもない気がします。逆に一律数百円というような課金方式にしてペニーギャップを乗り越えられないケースが多いような気がします。

これは単なる私の感触なんですが、日本人には、フリーライダーの存在を許容するようなビジネスモデルが感覚的に合わない人が多いのではないかと思います。フリーライダーがいても全体として収益が上がればよいという考えではなく、如何にフリーライダーを排除するかということばかりを気にする人が多いような気がします。

ところで、もうそろそろ出版予定のChris AndersenのFreeという本ですが、こういう「無料経済」についての議論が盛りだくさんと期待されます。早く読みたいです。と言うか、本当は私が訳したかった(私は翻訳者としてはS社専属ではないので出版社の皆様よろしくお願いしますねw)。まあ、今回は別のビッグタイトルの翻訳の仕事がすでに入ってたのでどちらにしろスケジュール的に無理だったですけどね。

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