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検索エンジンの著作権問題についてのFAQ

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ちょっと今さら感もある話題ですが、先日やったセミナーで質問が出たりもしたので、ここで一度まとめておきたいと思います。

Q1. なぜ日本では検索エンジンが著作権侵害と言われているの?
A1. 検索エンジンでは、著作物を含む他人のウェブ・サイトをコピーしてキャッシュ(と呼んではいるが実際には永続的ストレージ)を作ったり、サムネールを作ったりしています。これは、著作権法上は複製にあたります。日本の著作権法では、権利者の許諾なく、著作物の利用(複製等)をできるケースを限定的に規定しています(引用だとか、教科書での使用だとか)。検索エンジンでの複製はこのような限定的ケースに含まれていないため、法律を厳密に解釈すると著作権侵害ということになってしまうわけです。

Q2.どういう人がこういう解釈を主張しているの?
A2. 以前から検索エンジン違法説は学識者の間で唱えられていましたが、昨年の10月に出された文化庁の「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会平成19年度中間まとめ」(PDF)において日本における検索エンジンの運営は法的リスクが否定できないとの一応の結論が出されています。もちろん、「引用」、「黙示の許諾」、「権利の濫用」という考え得る法的解釈を検討した上で結論です。「検索エンジンは日本では違法」説は一部の変わり者が唱えている極論ではありません。

Q3.、常識的に考えておかしくないですか?
A3. たしかに常識的にはおかしいですが、勝手にその場その場の解釈で法をねじまげてしまったのでは法治国家の意味がありません。「悪法も法」です。必要なのは、常識に合うように迅速に法律を改正することです。ということで、そのような動きが進んでいます。

Q4. 結局誰もが無視しているので実害はないのでは?
A4. 法が実際に機能していない状況を「法が弛緩している」と言ったりしますが、これは二重の意味で問題と思います。第一に、「みんながやってるからOK」の領域と「本当にまずい」領域の区別が不明確になってしまうこと、第二に「赤信号みんなで渡れば~」の状況は、公権力の権利の乱用のネタになりがちということです(警察が気にくわない人を「おまえ今赤信号無視しただろ」ということで逮捕できてしまうような状況)。社会常識的な善悪の問題と、法律的な合法・違法の問題はできるだけ整合性が取れているべきです。

Q5. これは日本の技術開発に悪影響を与えているの?
A5. これはなかなか把握しにくい問題です。法律問題が実際に外に見えるのはごく一部のケースだからです。「ネットを活用した新しいビジネスモデルを考えたが、弁護士にやめろと言われたのでやめました」と社外に発表する人はいません。部外者の人が「検索エンジンが著作権法上問題になったケースなんて聞いたことがない」と思っても、それは問題がないということではありません。
また、弁護士や企業の法務部門は基本的にリスク回避型で動きますので、文化庁が組織した専門家集団が法的リスクを回避できないと言っている以上、同調せざるを得ません。法律勉強中のブロガーが大丈夫だと言っていますと言っても何の意味もありません。また、上記中間まとめへの意見募集に寄せられた意見(PDF)(検索エンジン関係は241ページから)でも「早く法律改正して安心して技術開発できるようにしてください」という多くの声が聞かれています。

Q6.日本の検索エンジンプロバイダーはこれを理由にサーバを海外に置いているの?
A6.一般にはそう言われていますが、真偽のほどはQ5と同様で判断しにくいところがあります。「日本で検索エンジンを運営するのは法的リスクが高いので海外にサーバを立てました」などという、万一裁判沙汰になった場合に不利になるような発言を企業が自らするわけはないからです。

Q7. 現実に検索エンジン会社を訴える人なんているの?
A7.欧米では既にGoogleを訴えているケースが何件かあります。米国では、検索エンジンでの複製はフェアユースということで一応のケリがついています。Google Newsのようなタイプのサービスだとさらに微妙な問題となっています(ベルギーでは違法に)。また、日本においても前述の意見募集に対して寄せられた意見集の中で以下のような意見が見られます。

著作権法上の権利制限規定は、公益的な目的があるなど例外的な場合に限って認められた規定であり、私企業が運営し、広告収入等により膨大な収入を上げている一般の検索エンジンサービスに対してまで例外の範囲を拡大すべきではない

誰がこんなことを言っているのかなと思って見ると、はい、JASRACでした。

Q8. 具体的にどのような法改正を行うの?
A8. ここがなかなか難しいところです。著作権法で「検索エンジンとは~」と定義して検索エンジンでの複製は許諾不要としてしまう方法もありますが、そうするとWeb魚拓とかRSSはどうするのという話になります。かと言ってあまり権利制限の範囲を広げすぎてしまうと、ザル法になってしまうのでこのバランスが難しいところです。このあたりについてはまた後日書くことにします。

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