栗原潔のテクノロジー時評Ver2:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) 栗原潔のテクノロジー時評Ver2

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著作権管理事業における競争原理についての考察の続きです。ちょっと時間がないのでWikipediaレベルで調べたレベルの(仮)の内容です。

ケーススタディとして米国の状況があります。米国ではBMIとASCAPという二大著作権管理団体が競争状態にあります。そもそも、日本で著作権等管理事業法ができて複数の著作権管理団体を作れるようにしたのも米国の制度をロールモデルにしていると思います。

では、米国においてこういう複数の著作権管理事業者がある状態で良い意味での競争原理が働いているかというと坂本龍一さんは以下のように言われています(ソース

「北米における演奏権については、私はASCAPと契約している。ASCAPの場合は、一般企業と同様にビジネスとしてやっており、契約の時も先方から 会いに来た。そのときに、市場原理が働いていることを実感した。著作権の管理業務についても、なるべく市場原理で自立させるべきではないか。」

また、ミュージシャンの野中英紀さんは以下のようにおっしゃっています(ソース

アメリカの場合は、BMIとASCAPという管理団体があって、それぞれが著作権使用料の徴収分配についてサービスの優劣を競い合っている。(中略)

当時僕が一番驚いたのは、BMIが作成したステートメントがJASRACのものとは比べ物にならないくらい詳細だったことだ。

たとえば、アメリカのどの都市でどの曲がラジオで何回オンエアされた。一回につき使用料はいくらなので合計いくら、みたいな情報が載っていて、これを見るだけで自分の楽曲がどういう地域で人気があるのかが一目瞭然だった。

一方でJASRACのステートメントは、ラジオ、テレビ、オルゴール(オルゴール!?)などのカテゴリーは全て一緒くたに成っているから、内訳がどうなっているのかなんて分かるわけが無い。まるでブラックボックスなのだ。

ということで、権利者の立場から見て競争原理のメリットが得られているらしい事例がいくつかあります。利用者の側からはどうなのかという話はまだ調べ切れていませんが、BMIの発表によると同団体は昨年度にライセンス収益を7%増加させつつも、間接費を12.7%削減したそうであります。こういう経営努力は競争原理からこそ生まれるものではないでしょうか(少なくとも1団体独占体制ではなかなか生まれにくいものでしょう)。

それから、BMIが生まれた経緯にも着目すべき点があると思いました(ソース)。

1930年代の大恐慌でレコードの売り上げが急激に落ちたことから、ミュージシャンを守る立場のASCAPとしては、それまで低く抑えていたラジオでのレ コード放送使用料の値上げをラジオ局に対して要求することになりました。それは一度は認められたのですが、1940年代に入り、その契約が切れる時期にな り再びそれが問題となり、契約の延長を拒否した放送局側は突然、新たな著作権管理団体BMIを設立。そこで扱うアーティストは当然放送料を低く設定させよ うとしたわけです。これに対してASCAPは所属するアーティストすべての楽曲をラジオで使用できないようにしてしまいました。そうなるとラジオ局は非常 に困るわけですが、BMIに所属するアーティストだけでやって行くしかありません。そうなると、今度は目ざとい音楽プロデューサーたちは自分で会社を立ち 上げ、BMIへの所属によってチャンスをつかもうと考えるわけです。

こういう風に1回カオスになって、自由競争による新しい秩序が生まれていくというのはあるべき姿だと思うのですが、いかがでしょうか?

ここで、ラジオ→動画投稿サイト、ASCAP→JASRACと置き換えて考えてみると、今の日本の現状で著作権管理団体の競争原理が全く働いていないとは言い切れないような気もしてきました。競争原理とは複数の団体が利用料値引き合戦をやるとかのあからさまなものだけではありません。

たとえば、JASRACはニコ動とかなり好条件で包括契約したと思いますが、これはやはり他の著作権管理団体があってこそだったと思います。JASRACが「今ニコ動と契約しておかないと他の団体と先に契約されてしまうかも、そうなると公衆送信権だけ他団体に移す権利者がでてくるかも(それを禁止すると公取委がうるさいし)、今はニコ動の売り上げなんて微々たるものだがいつ化けるかわからないし(着うただって最初は微々たるものだったし)」と考えて柔軟な対応を取ったと考えられなくもありません(あくまでも推測に過ぎませんが)。JASRACが完全独占の状況であれば「著作隣接権を侵害しているサイトには許諾しません」で突っぱねても、もっと高額の(たとえば、通常の営利配信サイトと同じ程度の)利用料を設定してもよかったのですから。

それから前回の続きですが、「ポリリズム」には代替がないというたとえは、確かにミクロレベルでは合ってるのですが、マクロレベルではミスリーディングだと思います。たとえば、著作権管理団体AとBがあって、Aのライセンス料金が異常に高額であったとします。利用者、たとえば、テレビ局としてはAだけが管理してる曲をどうしても使いたいのであれば、Aから許諾を受けざるを得ないですが、全体としてはできるだけAの管理曲を使わない方向に進もうとするでしょう。結果的に、各管理団体には他と比べて高額の料金設定をする逆インセンティブが働きます。ということで、複数の著作権管理団体があって、管理曲数もある程度バランスが取れていれば、それなりの競争原理は働くと思います。もちろん、全くのコモデティと同じようには行かないと思いますが。

時間ができたらもう少し調べて書き直します。

栗原 潔

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栗原 潔

株式会社テックバイザージェイピー(TVJP) 代表取締役 弁理士
IT、知財、翻訳サービスを中心とした新しいタイプのリサーチ会社を目指しています。

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