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著作権法における複製とコンピュータについて

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Copyrightという言葉からもわかるように著作権制度の根本は複製をコントロールするところにあります。そして、何回も書いているように視聴行為そのものはコントロールの対象ではないというのが、少なくとも現在までの考え方です。

コンピュータが直接関係ないフィジカルな世界では(コンピュータも物理法則にしたがって動いているのではありますが)、視聴と複製は明確に区別できます。本の立ち読みは視聴ですから、著作権法ではコントロールできません。一方、本をデジカメで写したりたり、コピー機でコピーしたり、さらには、手書きでメモすれば複製行為となるので著作権が利いてきます。(私的複製だからOKだとか、本屋が店舗の管理者としてコントロールできるのではという話もありますが、今の議論とは関係ありません。また、本屋の本は合法的に売られているのだから、違法コンテンツとは別ではという話も全然関係ありません。ここでの議論は、非デジタル・コンテンツでは視聴と複製が明確に区別できるというお話しです。)

一方、言うまでもなく、コンピュータの世界では、視聴と複製の区別は必ずしも明確ではありません。デジタル・コンテンツを見たり聴いたりする際には必ず内部的にコピー処理が行われています。著作権法では、複製を「印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいい(後略)」と定義していますので、これをそのまま適用すると、ストリーミング再生時にキャッシュが作られるのも著作権法上の複製ということになってしまいます。

ついでに言えば、画面表示のためにVRAMにデータを書き込むのも複製ですし、プロセッサのL2キャッシュからL1キャッシュにステージングするのも複製になってしまいます。さらには、ルーター等のネットワーク機器の中でも複製は行われています。

なお、プログラムの著作物については、著作権法47条の2第1項において「電子計算機において利用するために必要と認められる限度において」複製ができるとされていますが、デジタル・コンテンツについてはこのような規定はありません。

解釈論あるいは法改正で揮発性メモリへの一時的複製は複製としないという対応をすることも考えられますが、そうなるとPocket PCのように電源を切ってもフラッシュメモリーでメモリ内容を維持する場合はどうするのだとか、ディスク上のスワップファイルに書き込んだ時点でアウトになるのかと考え出すと切りがありません。

さらに考えるべき課題として、サーチエンジンのキャッシュがあります。これは前から気になっていましたが、サーチエンジンの「キャッシュ」はいわゆる一時的保管場所という従来の意味のキャッシュとは違いますよね。元のページがなくなっても残ってるくらいですから。本来なら「アーカイブ」とでも呼ぶべきでしょう。サーチエンジンの「キャッシュ」については法的な対応が予定されているそうなので、コンピュータ内の「キャッシュ」についても早く何とかしてほしいものです。

このようなお話しは、当然、今までも議論になってきています。たとえば、「著作権法概説」(田村善之)のp118-p120などです。田村先生は、上記の著作権法の「複製」の定義規程に関して、

定義規程とは法の趣旨を実現する手段に過ぎず、法の趣旨を離れて定義規程だけが一人歩きすることは慎むべきである。特に立法当時、予想されていなかった事態に関しては、むしろ法の趣旨に遡って解釈すべきであるといえよう。

と書かれており、上記に書いたような視聴に伴うコンピュータ内のコピー処理は著作権法上の複製には該当しないと解すべきであろうと結論付けられています。

私的にも、是非、この線で法改正してもらいたいものだと思います。

Comment(1)

コメント

エクサ

著作権法でいうところの
>有形的に再製すること
の文句における「有形的」の定義が気になるところです。
定義によっては「これは複製にあたる」「複製に当たらない」という区別で、
たとえば「CPUレジスタやVRAMへのコピー、メモリへのバッファリングはセーフ」
みたいなことにはならないもんでしょうか。

その場合でも「ブラウザキャッシュ」とかは「複製」の定義に
当てはまってしまいそうですが・・・。
ブラウザキャッシュやテンポラリファイルなんかは
「ユーザーから見て、名前と場所が特殊」なだけで
ファイルシステムから見たら普通の一般的な「ファイル」以外の
何者でもないですからね。

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