「自費出版」について
ちょっと前ですが米Amazonの子会社CreateSpace社がオンデマンド出版のサービスを始めたというニュースがありました。出版したい人はデータだけ用意しておけば、Amazonに商品として掲載され、注文があるたびごとに、物理的な本が印刷されて、買い手に届けられるという仕組みです。売り手の立場から言うと在庫のリスクがないのがなかなかうれしいところです。
テックバイザーでも、調査レポートや技術解説書等を出版したいと前から思っていました。PDF形式で会社のWebサイトで販売してもよいのですが、やはりAmazonで売ることができれば販売数を圧倒的に増やせます(その分、単価も安くできます)ので、是非、日本でも同じようなサービスを始めてもらいたいものです。
実は日本のAmazonでもe託販売サービスというのを昨年から始めているのですが、これは本をAmazonで売ってくれるというだけで、本の製造コストと在庫リスクは自分で負わなければなりません。しかも、Amazonに売価の40%も抜かれてしまいます。オンデマンド印刷を行ってくれる業者さんの価格設定を調べてみたこともあるのですが200ページくらいの本を1500円くらいで売ろうと思うと、印刷と製本のコストで原価割れになってしまいます。また、Amazonとのやり取りは物理的な本になりますので、仮にオンデマンド印刷の場合でも、少数の在庫は自分で管理して、Amazonの倉庫に送るという作業が必要になってしまいます。
一方、米Amazonの仕組みだと、本の製造費に200ページの場合で、製造コストとして1冊あたり5ドルくらいかかって、かつ、売価の30%を抜かれますので、1冊1500円で売るとすると1冊ごとに450円くらい儲かることになります。これでも手取りは結構少ないですが、在庫リスクもなく、手取りも多くというのは無理な相談なのでしょうがありません。とは言え、編集やデザインのコスト・手間を考えれば、普通の出版社で普通に出版してもらうのが一番お得な感じもします(Amazon以外の普通の本屋でも流通するわけですし)。
と言いつつ、最近は出版社さんもあまり冒険できないことが多いようで、よっぽど売れ筋のトピックでもないとなかなか企画が通らないことも多いので、そういう時はいっそのこと、リスク覚悟で自費出版もありかなという気もしてきました。
だいぶ前の話ですが、米国のベンダーがWebサービスについて語り始めた時期に、某出版社にWebサービス本の企画を持って行ったことがあるのですが、「Webサービスというトピックに需要があるとは思えません」との理由で門前払いになってしまったことがあります。その半年後くらいにWebサービスは結構なブームになって、セミナー等も多数開催されました。その某出版社主催のWebサービスセミナーでの講演依頼が来たこともあります。何だかなーと思いました。もう少しして日本でもAmazonでのオンデマンド出版の環境が整った後に、同じようなことが起きたら、自費出版してしまうかもしれません。