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パブリックドメインのジャズ楽曲について

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前回ご紹介した「P2Pとかその辺のお話し」というブログ経由で、A Jazz Anthology:Public Domainというサイトを知りました。パブリックドメインとなったジャズの楽曲を無料で視聴できるサイトです。昔の録音であっても、ジャズの場合は歴史的価値だけではなく充分に鑑賞に堪える演奏が多いので喜ばしいことであります。ただ、逐一、確認してるヒマはないのですが本当にパブリックドメインなの?と気になるトラックがあるのは確かです。録音が古くても、作曲者が長生きであれば著作権は存続してますので。

実は趣味関係でネットで自分の演奏を公開する時のために、ジャズのスタンダード曲の中で何がパブリックドメインなのかを調べたことがあります。まず、ジョージ・ガーシュインは1937年没なので、日本ではだいぶ前からガーシュインの曲はパブリックドメインとなっています。TV CMでガーシュインの曲(S' Wonderful等)が使われることが多いような気がしていましたが、この件と関係あるのでしょうかね?

また、ジェローム・カーン(1945年没)の全作品については、昨年の5月に著作権が切れてます。大スタンダードのAll The Things You Are等が日本ではパブリックドメインになっているわけです。これは大変素晴らしいことですね(ジャズ好きの方しか有り難みがわからないかもしれないですが)。たとえば、新人ジャズバンドがプロモーション用にCD-Rを作る時に、ジェローム・カーンの作品であればJASRACの許諾を得る必要はありません(仮に無料で配るCDであっても、JASRAC管理曲を使用する場合には許諾と利用料の支払いが必要です。)

なお、上記はあくまでも日本国内の話です。米国では著作権の存続期間は著作者の死後70年なのでジェローム・カーンの曲の著作権はまだ存続しています。また、競作の場合は競作社の中で最後に亡くなった人の没年で計算されます。歌詞の著作権は、また別の話です(作詞者の没年に依存します)。さらに、CD音源や他人の演奏の録音については著作隣接権にも注意する必要があります。自分の演奏の録音や自分で作ったMIDIファイル、許諾を得た他人の演奏の録音については問題ありません。

ところで、日本における著作権存続期間の計算には、第二次世界大戦中には著作権が正当に守られなかったということで、連合国側(英米等)の著作物については戦後約10年間を著作権存続期間にプラスするという戦時加算という制度があってちょっと計算がややこしくなっています。単純計算だとジェローム・カーンの曲は1995年にパブリックドメインになってるはずですが、そう簡単ではないのです。なので、ジェローム・カーンの作品については、著作権存続期間が確かに満了していることをJASRACに確認してます。問い合わせるとすぐに返事が来たのではありますが、JASRACの使命には「音楽文化の普及・発展に尽くす」(Webサイトより)こともあるようなので、パブリックドメインになった重要作品については、JASRAC側からもっと積極的に情報発信しても良いのではと思います。

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