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JASRACの「人道支援」について

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JASRACが、能登地震の被災地に対して著作権使用料の徴収を一時的に行わない(と言っても3ヶ月間だけですが)とのプレスリリースを出しました。新潟地震の時も同じようなことがあったと思います。

まあ結構なことではありますが、JASRACが管理している著作権は、本来的にはJASRACの持ち物ではなく、JASRAC会員である作詞家・作曲家の持ち物である点には注意が必要でしょう。法律上は著作権はJASRACにあるのですが、JASRACは会員との契約により著作権を一定期間信託管理しているだけです。

信託管理とは、投資信託をイメージするとわかりやすいですが、人から財産を預かって、その財産を元にバリューを生み出して、財産の元々の持ち主等に還元する仕組みです。財産を預けた人は信託管理者(受託者)がそれをどう活用するかについてはいちいち口出しできません(投資信託でどの株を買えとかいちいち指定できないのと同じ)が、受託者は財産が生み出すバリューを最大化する忠実義務を負います。仮に投資信託受託者が、被災した企業の経営を支えるために、人道的見地から株を買い支えたりしたらそれは忠実義務違反ではないかと思います。

JASRACによればこれは理事会の決定なので、会員全体の意向とみなされるそうであります。では、被災地の人を元気づけるためのチャリティコンサートを行う場合はどうかというと、これは減額はされる可能性はあるが、しっかり著作権料は徴収されるそうです(参考記事)。

正直、ずいぶん恣意的なオペレーションだなあと思います。もちろん、人道的支援を否定するものではありませんが、しっかり著作権料は徴収して会員に還元した上で、会員や職員の中から寄付をしたい人が被災地に寄付すればよいのではと思います。JASRAC役員の方がポケットマネーから寄付すれば、天下り批判も多少はやわらぐかもしれません。

話はちょっと変わりますが、このように信託管理をしているために、昔は、「自分が作った楽曲だけをコンサートで演奏してもJASRACに著作権料を徴収される」という、一見、不合理な事態が発生していました。今では約款の改正により、事前に申請すれば自分の曲を演奏するための著作権料は払わなくてすむようになったようです。(07/05/06追加: これは非営利の場合のみでした。Webで自分の作品を無料公開するとかそういう場合に適用されるということです。)

さらに、全然別の話ですが、ついでに見付けたプレスリリースで例の川内康範氏への対応について

同氏から要請があった場合は、その内容等を慎重に検討して対処することとしています。

等々と書いてあります。しかし、前にも書いたように同一性保持権については著作者本人にのみ専属しますので、JASRACの管理対象ではありません(そもそも、他人にライセンスしたり、譲渡したりということができません)。JASRACのサイトにも

JASRACも著作者人格権の問題には関与できません。

と書いてあります。

この後に「(ただし、政治的影響力の強い方についてはこの限りではありません)」と付記した方がよいような気がします。

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