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米CBSのコンテンツ・オープン化戦略について

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従来型メディア企業とネット系企業との提携のニュースは最近では珍しくもなくなってしまいましたが、これはちょっと注目すべきと思ったのが、数日前のの米CBSの発表(英文)です。(この元記事、見逃していましたが、heatwaveさんの 「P2Pとかその辺のお話」というブログで知りました。このブログ、タイトルだけ見るとちょっとあやしげですが、コンテンツ産業の将来をまじめに考えている良ブログです。おすすめです)。

さて、今回のCBSの発表のポイントは、Brightcove, Joost, Veoh Networks, Sling Media, AOL, Microsoft, CNET Networks等の多数の動画サイトと提携してCBSのコンテンツを広告料モデルで提供することをを発表しただけではなく、これらの提携は排他的ではないとしている点です。たとえば、CBSは既にYouTubeと提携してますが、今回の発表後もその関係が変わることはありません。つまり、CBSは媒体に関しては全方位外交でいくということであり、排他的な提携によりコンテンツと媒体をバンドルしようとする従来の一般的やり方とは正反対の方向性と言えます。

そもそも、エンターテインメント・ビジネスを考えるときにはメディア(媒体)とコンテンツは明確に分ける必要があると思います。従来型テレビ局はメディア(=放送電波)とコンテンツ(=番組制作)が一体になっているわけですが、これは別に一体である必要はありません。せっかく金をかけてコンテンツを作ったのだからできるだけ多くのメディアを通じて消費者に提供することで利益を稼ぐというのは当然の戦略です。

前にも書きましたが、この考え方は、コンピュータのオープン化にもたとえられると思います。ハードウェアが高価でかつベンダー独自であった時にはソフトウェアはハードウェアに従属する存在でした。しかし、ハードウェアがコモディティ化して、オープン化したことで、できるだけ多くのプラットフォームで稼動できるポータブルなソフトウェアのビジネス(マイクロソフト、オラクル、SAP等)の有効性が増したわけです。そして、ハードのオープン化とソフトウェア・ビジネスの独立化によりユーザーは大きな利益を享受でき、その結果、IT市場全体も拡大しました。その一方で、独自ハードとソフトのビジネスは消え去りはしないものの、主流の存在ではなくなりました。

コンテンツについても、コモディティ化(=多様なコンテンツが比較的安価に制作可能になった)とオープン化(=コンテンツをTVでもネットでも携帯でも観られる技術的基盤が整った)により、同様の動きが生じるのは当然と思います。

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