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はてなテレビについて

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海外出張後はどうしてもばたばたして、更新が滞ってしまいますね。これからキャッチアップの予定です。もう古いネタになってしまいましたが、YouTubeの動画をWiiで観るためのサービスを何と「はてな」が始めたというニュース

Wii用にUIを最適化してくれるようです。もちろん、著作権上の問題(たとえば、本人が投稿した素人動画であっても、JASRAC管理曲がBGMに使われてるとどうなるのという話があります)、および、ビジネス・モデル上の問題(YouTubeが投稿者に収益を還元するモデルを採用した際に、動画を間接的に使って商売してる人をどう扱うべきなのか)などはありますが、将来楽しみです。

このニュース、二重の意味で興味深いニュースです。第一に、YouTubeもあっと言う間にお茶の間のシェアを争う候補のひとつなってしまったという点です。長期的にコンサル案件でお付き合いしている某社さんと、昨年やった予測がどれくらい当たったかみたいな議論をしたのですが、YouTubeについてはちょっと過小評価だったねということで意見が一致しました。去年の夏時点の議論では、著作権問題がどーのこーのというところにとらわれすぎてしまったかと思います。もちろん、著作権問題が重要であるのは間違いないですが、長期的かつ大局的なパラダイムシフトの観点で見ると、実はたいした問題ではなかったのかなという気もしています。

そしてもうひとつの要素はWiiです。Wiiは「家族で楽しめるゲーム機」として着実に進出してますが、当然単なるゲーム機では終わらないでしょう。ネット接続率も結構高いようですし、ホーム端末で問題になりがちなUIについても、「はじめてのWii」で半ば強制的に(笑)習熟させられています。若い世代がオジサンの理解を超える速度でケータイのボタンで文字入力するように、Wiiリモコンでものすごいスピードで文字入力する世代も登場するでしょう。また後で書こうかと思いますが、日本におけるセカンドライフ的な仮想世界サービスのポジションは、Wiiが獲得するのではと思っています。

で、このはてなのサービスの名称はそのまんま「はてなテレビ」というのですが、hatena.tvというドメインのサイトを観てみると、ちょっと様子がおかしいです。確かに動画は観られるのですが、どうみてもWii向けに最適化されてないですし、アダルト広告が出るサイトにリンクされたりします。よく調べると、はてな株式会社がやってる「はてなテレビ」の正式ドメインは、tv.hatena.ne.jpでした(サービス自体はまだ始まってないようです)。

hatena.tvが、どういういきさつで始まったのかは知りませんが、ことと次第によっては、不正競争防止法2条1項12号あたりが関係してくるかもしれません。

不正の利益を得る目的で、又は他人に損害を加える目的で、他人の特定商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章その他の商品又は役務を表示するも のをいう。)と同一若しくは類似のドメイン名を使用する権利を取得し、若しくは保有し、又はそのドメイン名を使用する行為

なお、ここで「不正の利益」とはドメインを高額で買い取らせることだけではなく、他人の信用にただ乗りして収益を上げることも含みます。ドメインを転売対象にしてないということだけで、不正競争防止法の適用を免れられるということはありません。

追加: コメントにあるように何と4日あとの記事ではサービス名がrimoになってました。もうサービスも開始されているようです(この件とは別にhatena.tvは何とかした方がよいのではという気はしますが)。あと、記事中では、法的問題はYouTubeサイドでクリアーしてるので大丈夫みたいなことが書いてありますが、JASRACがBGMの利用料を徴収しに来る可能性は結構高いと思います(米国では、Fair Useの法理でOKでも、日本ではしっかり金取られると思われます)。

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