「株式会社ひとり」について
私のようにサラリーマンをやめて個人で独立開業する場合には、個人事業でいくか株式会社でいくかという選択肢があります(他にもLLPとか合資・合名会社等ありますが省略)。私の場合は、最初から株式会社として始めましたので、個人事業と比べてどうなのかという話はあまりできないのですが、個人ベースで独立開業を考えられている方のために株式会社設立の際の経験談を書いておきます。
1.資本金について
今だと、資本金1円、取締役一人で株式会社を設立できますが、現実的には資本金1円だと開業初日から債務超過になってしまいますので、ある程度の運転資金に相当する資本金を用意すべきです(当たり前)。そもそも資本金の額は登記簿に載ってしまいますので、資本金1円ですと、大手企業との契約段階で登記簿を提出したりする時にちょっと恥ずかしいことになります。それから、私も最初、勘違いしていたのですが、資本金は別に特別な口座に寝かせて置く必要はありません。株式会社が設立された瞬間から会社の口座に移動して運転資金として使えるようになります。ゆえに、運転資金をまるごと資本金にしても大丈夫です。
あと、資本金はできれば1000万円未満にしておいた方が最初の2年間は消費税を払う必要がないのでお得です。TVJPは、最初は律儀に売り上げでは消費税を取っていなかったのですが、別にそんなことをする必要はなく、売り上げに対して消費税を付加してしまってもよいようです(つまり、資本金を1000万円未満にしておくと、最初の2年間は売り上げが5%増えたような状態になります)。
2.会社設立の手続きについて
行政書士さんに全部お願いという手もありますが、自分でやってもやれないことはありません。最新の入門書を1冊買えば大丈夫です。法務局との往復がめんどくさいことはありますが。ただし、公証役場での定款の認証については、自分でやると収入印紙代を払わなければなりません。電子認証でやると印紙代がかかりませんが、電子認証のための手続きやソフトに結構な金がかかります。ということで、定款の認証だけは電子認証サービスを提供している行政書士さんにお願いするのが一番得です。電子認証だけやってくれというのは難しそうなので、定款の作成と認証をお願いすればよいでしょう(それでも自分でやるより得です)。全部お任せでないと受けないという行政書士さんもいらっしゃるかもしれませんが、根気よく探せば、定款作成と認証だけでも受けてくれる人がいると思います。まあ、もちろんすべて行政書士さんにお願いして、その分空いた時間を営業活動に使った方がよいという人がいても否定はしません。
3.経理と税金について
株式会社化するとこの辺は厳密にやる必要がありやはり多少はめんどくさいですね。とは言え、一般的な個人がITコンサル系で開業する場合は、手形も仕入も固定資産もないのが普通なので経理業務はそんなに大変ではありません。実際に入力するのは、販管費の精算、請求、入金、給与くらいです。5パターンくらいしかありませんので、弥生とかの経理ソフトを買ってちょっと練習すればすぐ慣れます。
TVJPでは、税理士さんに関しては決算の時のみお願いしました。毎月の経理入力から決算までワンストップでなければ受けないという税理士さんが多いかと思いますが、決算処理だけでも受けてくれる方も探せば見つかります(毎月の経理入力が自分でちゃんとできてることが前提ですが)。もちろん、全部税理士さんにお任せというパターンも当然ありです。
ところで、決算以外にも税務署関係でやることがいくつかありますが、その中でも特に重要なのは源泉徴収した給与所得税の納付(毎月の給与から源泉徴収した個人の所得税を税務署に払う)です。小企業の場合、通常は特例を使って6ヶ月分をまとめて払うわけですが、この締め切りに遅れると否応なしに10%の延滞金を取られます。これは1回やってしまいましたが、結構イタイです(6ヶ月分の10%なので)。
4.「株式会社ひとり」は得なのか?
税法が変わったことで、これから先は、完全に一人でやる株式会社および家族だけで経営しているような会社と個人事業では税金上の扱いはほとんど同じになりました。なので、税金の問題だけで個人で株式会社を設立するメリットはほとんどありません(追加:平成19年の税制改革でまたちょっと変わったようです。場合によっては株式会社化が有利なケースもあるかも)(友人と共同経営にするとかの話であれば別です)。
ただ、ITコンサルタントとして大手企業とやり取りする場合には、やはり株式会社の肩書きはあった方が良いような気がします(自分は個人事業主として活動したことがないので厳密な比較はできませんが)。
まあ、総合的に言うと、個人がITコンサルタント業務を株式会社化するのはそれほどめんどうではない(物販とかの商売だとどうかわかりませんが)ということで、ネームバリューとか本人の気分の問題だけでも、そして、当然ながら将来の事業拡大を考えれば株式会社化しておく価値はあるのではと思います。