栗原潔のテクノロジー時評Ver2:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) 栗原潔のテクノロジー時評Ver2

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Nupediaについて

2007/01/16

Wikipediaの前身プロジェクトでNupediaというものがあったことを知りました(Wikipedia上のNupediaの項目)。Nupediaは、Web上でフリーの百科事典を提供するという目標はWikipedia一緒だったのですが、誰でも執筆できるわけではなく、原則、博士号取得者のみが執筆可能、厳重な査読プロセスを経て初めて発行可能という仕組みになっていました。しかし、結局、ほとんどコンテンツが集まらず盛り上がらないままで終了。Nupediaのサブプロジェクトとして始まったWikipediaの方が普及してしまったわけです。

選ばれたプロが作るという従来型の出版モデルがうまくいかず、誰でも作れて誰でも直せるという参加型のモデルがうまくいったというのは重要な教訓でしょう。しかし、現状のWikipediaは当初の予想よりもはるかにうまく動いているわけですが、問題なしというわけではありません。匿名性が強すぎるがゆえの問題もいろいろと出ています(池田信夫氏のブログ・エントリー参照)。現状のWikipediaはもう少し統制を強めることが必要とも思えます。

要は、何でもそうなんですが、自由と統制のバランスをどう取るかというお話です。統制がきつすぎても、自由にさせすぎてもうまくいかないということです。多くのWeb 2.0系のコミュニティの成功を見ると、かつて考えられていたよりも自由側に振った方が成功するのは明らかなようです。要は、「間違いを起こさないようすることよりも、間違いがあったらすぐ直せることにフォーカスする」ことが大事なのは確かです。とは言え、「必要最小限」の統制機能を置くことも同じくらい大事でしょう。この「必要最小限」のさじ加減が難しいところなわけですが。

栗原 潔

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コメント
ゆきち 2007/01/16 11:33

荒しなどへの行動への干渉はしても内容への干渉はしないのがWiki(not wikiepdia)の考え方です。もし、編集するなら、編集内容そのものに基づいて議論を経た上で行うというのが基本ルールです。
そのあたりをもっと考えていくと、Wikiという思想がなぜひろまっているのか、理解できると思います。
いや、現状でも、Wikipediaの規制は強い方だと思いますけどね。ほぼ毎日、相当量の投稿規制をおこなっていますよ。

半日庵 2007/01/18 00:32

匿名性の問題ですが、どうも既存のメディアで今まで安全な位置からいろいろ意見を言えた人が、ネットの登場によっていままでは耳に入ることがなかった反論をくらうことに対する反発から出ている場合が多いような印象をもちます。
池田氏のブログで取りげられた「Wikipedia」の話も自分の項目への反発が主なもののように感じられます。普通の人間なら当然の起こるであろう感情なので致し方ない面もありますが、客観的な意見とは感じられないです。

統制をとる場合に問題になるのはその基準です。Linuxはリーナス氏という特異な存在のおかげで上手く回っている例で、どちらかといえば例外にあたると思います。多くの他の広く知識を一般に求める手法と取っている組織は、それなりに内部に問題を抱えているようです。オープンソースコミュニティの分裂などはそれほど珍しいことではないと思います。また個人的にはsambaの国際化(多バイトコード化)をやっている人からアメリカの人達の対応の悪さへの愚痴を聞いたこともあります。

キツイ統制をとるより、自由にしておいて、混乱を起こす不届き者をできるだけ排除する方が益は多いと思います。ただその過程で不届き者の被害者がでてしまうことはあるでしょうね。

mohno 2007/01/18 01:20

池田氏の wikipedia に対する指摘は、自分の項目を例に挙げただけで、客観的に見ても、もっともなものだと思います。最近、たまたま知り合いの名前を見つけたのですが、やはり修正バトルになっていました。
> 混乱を起こす不届き者をできるだけ排除する
ために、匿名性が否定されてしまうのでは?

半日庵 2007/01/18 22:46

>> 混乱を起こす不届き者をできるだけ排除する
>ために、匿名性が否定されてしまうのでは?

そうですかね。匿名か実名かはあまり関係ないでしょう。実名をなのらなくてはいけなくなっても、実態はあまり変わらないように思います。特に「Wikipedia」では、名誉毀損になるような酷い書き込みではなくてもバトルになることが多いと思いますので。

匿名だからといって信頼できないとは限りません。良い例が新聞記事です。現在も多くの記事が匿名(無記名)です。さらにデスクまで含めるとぼぼ無記名です。
実は匿名かどうかよりも、良識ある人が書いているかどうかが重要だと思います。そのあたりの判断は、日ごろの書き込みで判断できればOKだと考えています。新聞の場合も良識ある記者やデスクを雇っているという前提で記事を読むわけで、それは今までに発行された新聞の記事で判断しているはずです。
そういう意味では使い捨てのハンドルやペンネームで書かれると判断できないので問題ですね。この当たりを判断基準にすればいいように思っています。

mohno 2007/01/18 23:12

もちろん、匿名でも良識のある記事はあります。先のハンドルでリンクしたエントリに書きましたが、良識の無い匿名記事(コメント)の増加、つまり匿名性の悪用によって、匿名であることが全体として否定されつつあるのではないかという意味です。
かつてのパソコン通信時代がそうだったように、実名(あるいは追跡可能なハンドル名)でもバトルはあったのですが、そうした激論は、今日見られる荒らし行為とは質が違うと感じます。
ちなみに、匿名性とは関係ないですが、意見を持つ新聞記事が無記名で書かれることは好ましく無いと思っています。

mohno 2007/01/19 02:01

池田氏のブログからもリンクされていて気になっていたので追加でコメントしますが、Nupedia というのは運営側のモチベーションが続かなかった「失敗例のひとつ」でしかないでしょう。http://www.alc.co.jp/ で利用できる「英辞郎」という辞書がありますが、匿名の一般人によらず(*)、EDP という特定グループ(当初は個人)のモチベーションが続いた「成功例のひとつ」です。たとえば、自由度の高いシステムで新たな英和辞書を作り上げようとしても「英辞郎」を超えられる気がしません。
池田氏は「モチベーションを上げる決まった方法はない」と指摘しつつ、「自由度が高いほどモチベーションを高めやすい」と書いていますが、これは普遍の法則ではありません。
(*)一般からデータを買い上げることはあるようです。

ゆきち 2007/01/19 06:01

なんかいろいろ誤解があるようですが、Wikipediaを「匿名で書ける場所」と思っているのは日本人だけです。英語版なんかは、IDユーザーが過半数を占めているはずです(うろ覚えですが、7割程度? 日本は6割がIPとか)。そもそも、「匿名文化」と呼べるものが海外に無いことは念頭においていいと思います。また、GFDLの都合上、完全な匿名はありません。常にIPがその名前に代用されます。そのIPからブロックしたりプロバイダに通報するのは日常茶飯事です。
その一方、外国人からは、「日本人は良くノートを使う」と言われています。実際、英語版は編集合戦がひどいものです。


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