【書評】「テレビはインターネットがなぜ嫌いなのか」
現状のテレビ放送局のビジネスモデルの「おいしさ」加減についてまとめた本です。最近出た本の中で、これほどタイトルに惹かれたものはありません。この手の本が日経BP社から出たことも重要ではないかと思います。内容的には非常に読みやすく小一時間で読めてしまいます。
池田信夫氏や小飼弾氏も書かれてているように、現状についてはよくまとまっているものの、なぜこうなったかの経緯、これからどうすべきかの提言みたいな内容がほとんどないのでちょっと物足りないですが、現状の全貌を把握したい方にはよいのではと思います(私もいくつか新しい発見がありました)。あと、池田信夫氏の「電波利権」も一緒に読むことをおすすめします。
ところで、今、放送と通信の世界で起きつつあるパラダイム・シフトは、コンピュータの世界で独自ハードからオープン・システムへのシフトが起きた時に似ていると思います。独自ハードによる顧客の囲い込みというおいしいビジネス・モデルに慣れ切ってしまい技術の変化を拒絶したベンダーは市場から消え去りました。ハードによる囲い込みを犠牲にしてもオープンの世界に飛び込み、新たな価値(ソフトやサービス)を提供できたベンダーは成長できました。ハードのオープン化により、ISV(独立系ソフトウェアベンダー)の重要性が増しましたが、これは独立系制作会社の重要性が増していることにたとえられると思います。最も重要なポイントは、既得権が破壊されても、市場が崩壊することなどまったくなく、今まで以上に市場が拡大し、消費者がより大きな利益を受けることができるようになった(そしてその結果、(適切な戦略を取った)ベンダーも成長できるようになった)ということです。放送の世界のこれからを考える時には、コンピュータの世界の歴史から学べる点は多いのではないでしょうか?