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悩ましい商標の普通名詞化問題

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あえて言うまでもないですが、指定商品の普通名詞を商標登録することはできません。たとえば、パーソナル・コンピュータという商品に対して「パーソナル・コンピュータ」や「パソコン」を登録商標にすることはできません。理由は大きく二つあります。普通名称では、その商品の出所(メーカーや販売者)が識別できないということと、こういう一般的な名称を特定の企業に独占させることは不適切であるいうことです。

ちなみに、普通名称かどうかの判断は指定商品との関係で判断されますので、たとえば、お菓子を指定商品にして「パソコン」という商標が登録される可能性はあります(実際にカバヤ食品の登録商標となっています)。ただし、たとえば、プリンタを指定商品にして「パソコン」という商標を登録すると「商品の品質の誤認を招く」という理由で登録されない可能性が高いです。

ここで、企業側にとって怖いのは、せっかく自分で考え出した言葉であっても、それがあまりに普及しすぎて普通名詞化してしまうリスクがあることです。いったん商標が普通名詞化してしまうと商標登録できなくなりますし、仮に登録されたとしても実質的に効力がなくなって他社の使用を差し止めできなくなります。普通名詞化してしまってもう登録できない商標の例としては正露丸などがあります(だから、大幸薬品は、「ラッパのマークの正露丸」という言い回しで自社商品をアピールしているのです。)登録商標になってますが、実質的に普通名詞化して他社の使用を差し止めできないと思われる状況になっているものとしては、三洋電機が所有する「デジカメ」などがあるでしょう。

企業にとってみると自社製品の商標が広く使われて有名になるのはありがたいのですが、あまりにも広く使われすぎて普通名詞化するとまずいわけです。よく、記事等に「xxxはyyyの登録商標です」みたいな断り書きが書かれていることがありますが、これは商標の普通名詞化を防ぐための手法です。また、他社が無断で使用している時も、「まあ、別に使われても困らないから」と見過ごしているとますます普通名詞化が進行してしまいますので、差し止め請求とまではいかなくても、断り書きを入れさせるくらいのアクションは取るべきであることが多いです。

さて、ここで、Web 2.0ですが、ITの世界では普通名詞化していると個人的に思います。CMP Media社がWeb 2.0を商標的に使っていきたいと思うのであれば出願をした時点でTM(TradeMark)表示を付けておくべきだったでしょう。もし、そうすれば、Web 2.0という言葉は今のようには普及しなかったと思いますが、それはそれでしょうがないことです。

それからついでに書いておきますが、以前に書いた特許権の場合と同様に商標権も財産権です。したがって、企業がM&Aされると商標権も移転します。ある会社が「自分はこの商標権を行使する意図はない」と口約束しても、別の会社に買われた時にどうなるかは何とも言えないわけです(特許権と異なり商標権は常に企業のビジネスとのからみで判断されるので多少の違いはありますが)。

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