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商標と企業の多角化とWeb 2.0について

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ちょっと前のアップル・レコードとアップル・コンピュータの訴訟問題でもわかるように、商標権の権利関係ではどの製品(サービス)で使うかということが重要なポイントです。

そもそも、商標権を単にある言葉を独占的に使える権利と誤解している人がいて、たとえば、「阪神優勝」が登録商標になったなんてニュースが出ると、「もう阪神優勝という言葉は勝手に使えないのか」なんて話が掲示板に書かれたりしますが、そんなことはありません。仮に「阪神優勝」が登録商標になったとしても、阪神優勝と記事で書いたり、阪神優勝というノボリを作ったり、阪神優勝記念セールをやったりするのは自由にできます。

商標権とはある言葉を自社が提供する商品(サービス)のブランドとして使える権利なわけです。なので、商標登録出願を行う場合には、必ずどの商品(サービス)に使うのかを指定して行う必要があります。「阪神優勝」商標の騒ぎの時は「衣服」が商品として指定されてたと記憶しています。なので、仮に登録されていると、阪神優勝というブランドのTシャツ等を勝手に販売できなくなる可能尾性があるということで問題になったわけです(なお、もうこの登録は無効になっていますので、もう問題となることはありません。)

そして、商標の類似判断等もあくまでもその商品(サービス)の範囲内で行われます。ゆえに、朝日新聞、アサヒビール、アサヒペイント等々は共存できるわけです。また、一般名称かどうかの判断も指定された商品(サービス)の範囲内で決められます。リンゴの名称にアップルと付けるのはまずいですが、コンピュータにアップルと付けるのは(アップル・コンピュータ登場前であれば)OKなわけです。

ただ、ここで難しいのは、企業が元々始めたビジネスからどんどん多角化していく可能性があることです。たとえば、アップル・コンピュータはコンピュータ・メーカーというよりも、オーディオ機器メーカー、音楽配信サービス提供者と呼んだ方が適切になってきています。これこそが、まさにアップル・レコードとの確執の根底にあるわけです。

こういうケースはこれからも出てくると思います。特に典型的だと思うのが広告サービスで、Web 2.0時代にはソフトウェア・ベンダーが広告サービスで収益を上げるというパターンも増えてくると思われますので、思わぬ権利衝突が生まれるかもしれません。この前書いたライブメディアジャパン社の「Web 2.0」の商標登録出願も、広告サービスが指定されてますので、イベント事業よりも広告サービス業界においてインパクトが大きいかもしれません。

多角化による商標権のコンフリクトを防ぐ一番良い方法は、今までなかった言葉、既存のどの言葉とも似ていない商標(企業名)を作り出すことでしょう。そういう意味では、Googleはうまくやったなと思います。

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