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おからこんにゃくの特許について

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ちょっと前になりますが朝のテレビでおからこんにゃくという食材が紹介されてました。肉と食感が似ており、健康的な代用食品となるようです。これを考案した主婦の人が特許を取ったと放送していたので調べてみたところ、ちゃんと登録されているものでした(たまにある、特許取得済みと言いつつ実は出願してるだけだったという話ではありませんでした)。

特許3498087号です。2ページしかないシンプルな特許なので公報(PDF形式)をここにアップしました(page1, page2)。

この特許の権利範囲を表す請求項の記載は以下のようになっています。

こんにゃく粉を湯でゼリー状にまで混和し、これに生卵とおからを混和し、水酸化カルシウムをぬるま湯に溶解したアルカリ液を上記混和物に混和し凝固成型し、これを適宜に切り分け、加熱して残余のアルカリ分を除去し食肉感を与えたことを特徴とする食材の製法。

これくらいのアイデアでも新規性・進歩性が満足されれば特許化は可能です。結構いろいろ条件が書いてありますが、原則的にこれらの条件を全部満たさないと特許の侵害は成立しません。つまり、たとえば生卵なしでおからこんにゃくを作っている人に対しては、この特許権の効力が及ばない可能性が高いです。では、生卵という条件をはずして特許化すればよいではないかと思われるかもしれませんが、そうなると今度は範囲が広すぎで新規性・進歩性が満足されなくなる可能性が出てきます。特許出願の仕事は、新規性・進歩性を満足できるギリギリのできるだけ広い範囲の権利を取ることに本質があるわけです。この辺が弁理士の腕の見せ所です。単に法律の知識だけではなく、特許の技術分野の専門知識がないと難しい仕事なわけです(なので、自分はソフトウェア特許専門の弁理士としてやっていこうと思っているわけです)。

ビジネスモデル関連特許やソフトウェア特許などでも、新規性・進歩性を満足するために、かなり条件を絞っているものが多いようです。名称だけを見ると「インターネット広告の配信方法」などのようにものすごく広そうに見えても、実際に中身を見ると条件がいろいろ付加されていて権利範囲が狭い(回避しやすい)特許も多いです。

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