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広告市場はゼロサムゲームなのか?

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今、インターネット広告の市場規模はだいたい広告市場全体の4%くらいです。電通総研の予測だとネット広告は2009年まで年率16%で伸びていくとなっています。しかし、その先はどうなってしまうのでしょうか?池田信夫氏の「電波利権」に広告市場は最大でもGDPの3%1%強くらいの規模の市場だと書いてありました。実際、ここ数年間広告市場全体のパイはそんなに拡大していないようです。そもそも、広告費は製品やサービスを売るための販管費ですから、自ずから上限があるはずです。(ところで、広告料の上限について考えると、諸星大二郎の「広告の町」というマンガを思い出してしまいます(マニアック過ぎ>自分))

AdSenseに代表されるロングテール指向の広告方式により、今まで広告主にならなかった(なれなかった)顧客を獲得できてパイが大きくなるということはあるのでしょうが、基本的にインターネット広告は雑誌、ラジオなどの広告市場を食って(テレビ広告の市場の一部も食って)成長していくことになるのではと思います。要するに、広告市場は基本的にはゼロサム・ゲームであり、ネット広告市場も永遠の右肩上がりは期待できないと思うわけです。

そうなってくると、今のほとんどのネット企業が依存している広告料収益モデルもいずれは成長の限界を迎えてしまいます。ついでに言うと携帯電話向けネット・サービスにおける通話料との一括請求のモデルもフルブラウザ型サービスの普及により限界を迎えつつあります。利用者に抵抗なく料金を徴収できる二大モデルが両方とも限界を迎える時がいずれは来るということです。

結局、いずれは、ネットビジネスの永遠のテーマ、少額課金をどうするかという問題が再燃することになると思います。ここでのポイントは課金の仕組みをシステム的にどうするかという話(これは技術的にはそれほど問題ではないでしょう)もありますが、如何にユーザーに抵抗なくお金を出してもらうかというビジネス・モデルの話の方がより重要でしょう。ヤフオクくらいスティッキネスがあれば、クレジットカード登録で月額利用料金徴収というモデルでも全然OKなんですが、それ以外の場合には結構大変な気がします。また、バリューチェーンの破壊・再構築が起きるのかもしれません。ソフトバンクによるジャパンネット銀行への間接出資もその第一歩なのだと思います。

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