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AJAXで一番大事なのはAでは?

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新野さんのエントリーを読んで思ったのですが、AJAX(Asynchronous+Javascript+XML)で一番大事なのはA(非同期通信)なのではないでしょうか?Google Mapやgoo MapなどのAJAX系のWebアプリケーションを使うと、あたかもローカルなアプリケーションのようなスムーズさに感動しますが、これは、ユーザーの入力と関係なしに(非同期的に)、今見ている画面の周辺データをバックグラウンドで先読みしてるからですよね。これに慣れてしまうと、ボタンをクリックして、サーバとやり取りして、画面が更新されるのを待つという従来型のWebアプリケーションのUIがずいぶんとまだるっこしいものに感じます。

AJAX系のUIははユーザーとシステムがヘビーに対話する領域に向いていますので、オフィス系のアプリケーションにはベストフィットですよね。マイクロソフトのWebベースのメールクライアントであるOWA(Outlook Web Access)も、AJAX的な仕組みで動いているようです。前の会社でOWA使ってましたが、(ネットワーク帯域幅が潤沢にあるという条件で)ローカル・アプリケーションと遜色ない使い心地に感心しました。

そうなると、ワープロやスプレッドシートをAJAXで実装しようという考えが出てくるのは当然です。グーグルとサンの提携が発表された時にも、「Google Office登場か?」みたいな憶測がありました。ところが、サン社長のジョナサン・シュワルツ氏は、OpenOfficeのAJAX化にはあんまり乗り気ではないようで、自身のブログのエントリーで「アプリケーションの価値はプログラミング言語には関係ない」なんて主張をしています。

確かに、AJAXのJA(JavaScript)だけを考えればそうかもしれません。Java言語で書いたアプリケーションをJavaScriptで単純に書き換えただけではメリットはないでしょう(単に、ソースコードがわかりにくくなるだけ)。しかし、A(非同期通信)によるWebアプリケーションのUIの大幅向上を考えると、必ずしもそうは言えないのではと思います(シュワルツ氏本人にメール打って教えてあげたいくらいです)。システム・アーキテクチャ的には同期的にやり取りするのも非同期的にやり取りするのもそんな大きな違いはないかもしれませんが、ユーザー・エクスペリエンス的な違いは結構大きいのではないか(evolutionalではなくrevolutionalな違いがある)と思います。

さらに、非同期通信の効果を出すためには、ネットワークやエッジ・サーバの処理能力が高いことが求められますから、サンに限らずエンタープライズ系のベンダーにとって、AJAXは自社製品のデマンドを増加させる推進要因としても重要なのではと思ったりします。

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