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Web 2.0時代のCSRについて

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新人パンクロックバンドが中島みゆきの歌をパクッたという騒ぎでアルバムが販売停止になったというニュースですが、私もいわゆる検証サイト(ここにはリンク書かない方が良いと思うので興味ある方は自分で探して下さい)で両曲を同時に聴いてみて、これは言い逃れできないなと思いました。これだけ有名な曲のツカミの部分なので、いわゆるリスペクトとかオマージュであれば中島みゆきサイドの許可を取るべきですし、作曲してるときに無意識に他の曲に似てしまった(これは結構あるはず)のならば、当然、出版までの間に関係者の誰かが指摘してあげるべきでしょう。音楽産業で仕事してて、中島みゆきのファイト!を聴いたことない人はまさかいないはずですから。

似たような話として、某漫画家が別の漫画家の構図をトレースしてた件がやはりネット上を中心に騒ぎになり、作品が絶版に追い込まれたという話もありました。これもまた検証サイトで両作品を重ねて表示されてしまった以上、言い逃れができなかったということが大きな要因になっていたと思います。

旧来の情報発信型Webしかなかった一昔前にはこういう告発騒ぎがあっても、なかなか世論として広がっていくと言うことは少なかったと思います。特にマスメディアが無視するといlくら騒いでも少数派の変な人たちが騒いでいるだけと思われますし、告発された側が力でもみ消すということも可能であったと思います。

しかし、今やネット世論は以下のような複合的な要素で形成されています。

匿名ネット掲示板: ノイズは多いがビジビリティ抜群。専門家が大っぴらにはとても言えないことを匿名で書いたり、インサイダーが内部情報を書くこともあり得る。

SNS: 匿名掲示板よりノイズははるかに少なく、責任ある意見交換が行われる。

匿名ブログ: ネット掲示板よりは信頼性がある。履歴がわかりやすい。トラックバックにより情報が連携していく。

Wiki: しっかり管理されていれば正しい情報の整理・集約に役立つ。掲示板よりも見やすく、情報を最新に管理しやすい。

検証サイト: 動かぬ証拠を突きつけることができる。

実名ブログ: 信頼性ある(少なくとも責任がある)意見が見られる。トラックバックによる情報連携。

しかもこれらの要素が相互にリンクで結び付けられていますので、非常に強力な世論が形成されます。どんなに強い政治力があっても、ネット世論を押さえつけることは不可能と言ってよくなっていると思います(下手に圧力をかけると、それをネタにされて、ますます不利になってしまいます。)ネット世論に動かされてマスメディアが動く(動かざるを得なくなる)ということもあります(のまネコの時がそうでしたね。)

で、何が言いたいかというと、企業としてのCSRやPR戦略を考える時に、このようなネット世論のパワーを過小評価してはいけないということです。ブログ、Wiki等々のWeb 2.0ぽいテクノロジーにより、ネット世論は飛躍的にパワーアップしたと思います。

結局、何か問題が発生した時には、今まで以上に、迅速かつ真摯な(少なくとも真摯に見える)対応を取らなくてはならないということです。「ネット上で一部のオタクが騒いでいるだけ」と高をくくっているととんでもないことになるというケースが増えてくると思います。

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