オルタナティブ・ブログ > 栗原潔のテクノロジー時評Ver2 >

知財、ユビキタス、企業コンピューティング関連ニュースに言いたい放題

キヤノンのインクカートリッジ訴訟の二審が知財高裁大合議へ

»

キヤノンがカラーインクジェットプリンタのリサイクル業者を訴えた事件の第二審が知財高裁の大合議で行われることが決定しました(参照記事)。

知財高裁の大合議は重要な知財関連裁判を裁く場で、その第1件目はジャスト-松下、このキヤノンの事件は3件目です(2件目は、日本合成化学工業という会社による取消決定の取消訴訟)。

キヤノン事件については、一審の判決が出たときに旧blogに書きました。キヤノン側は、使用済のインクカートリッジにインクを再充填してリサイクル品として使えるようにするのは、インクカートリッジの生産行為に当たるので、キヤノンの特許権を侵害すると訴えたのですが、一審では認められませんでした。インクの詰め替えが生産にあたるというのは、めちゃくちゃな理屈のようですが、使用済み使い捨てカメラのを再生して販売するのは生産にあたり、特許権を侵害すると言う判例があったので、真っ当な主張ではあります。

この生産にあたるかあたらないかという話は、実は、ジャスト-松下事件にも関係してます。松下特許は装置特許(1989年当時はソフトウェア自体が特許の対象となっていなかったので、やむなく装置の特許として出願)であり、ジャストがソフトウェアを生産したり販売したりすることに効力が及ぶのかという争点があったのです。結論から言うと、ソフトをインストールすることは装置の生産にあたり、松下の特許を侵害する。そのためのソフトを生産・販売する行為は間接侵害に当たるという判断がされました。

一太郎判決に対する松下電器のコメントで、

一方で、当社の特許発明の間接侵害が成立するとされた点、すなわち当社が主張した「ソフトウェアが特許権の侵害品となり得る」という一般論が認められた点は評価できるものと考えております。

と書いてあるのは、このことを意味しているわけです。要するに、ちゃんと進歩性・新規性等の要件を満足しているソフトウェア特許であれば、形式上は装置特許であっても、ソフトウェア自体の製造・販売を差し止め得るということです。これは結構重要な判例かもしれません。

Comment(4)