ピクサー映画に見るソフトウェア開発の理想
ちょっと前の話ですが試写会のチケットが当たったので観てきましたよ「妖怪大戦争」。タイトルにちょっと引きましたが、意外と(失礼)面白かったです。キャラクターが立っている点、テンポよく話がサクサク進んでいる点は邦画ぽくなくて良かったです。特撮が貧乏臭いのも味として楽しめました。ただ、やはり、伏線が不足してるところとか、不要と思えるシーンが何箇所かあったのは気になりました。こういう点はやはり(できのよい)洋画には負けるかなと。
で、できのよい洋画と言えば、自分にとってはピクサー映画ですね。CGのテクニックは言うまでもないですが、シナリオの完璧さは特筆に値します。重要なポイントは全部伏線張られてますし、キャラクターの性格付けなんかもすごくしっかりしています(こういう完璧主義性がかえって嫌いという人もいるくらいです)。
ピクサーのDVDの特典映像等を観るとわかりますが、彼らは絵コンテ(ストーリーボード)作りにめちゃくちゃ時間をかけるんですよね。絵コンテにしたがってスタッフが実際に演じて見たり、ストーリーボードを使った簡易アニメーションバージョンを作って上映して、観衆の立場からシナリオを徹底的にレビューするわけです。この段階で大幅な手直しも辞さず、シナリオを練りに練ってから初めてアニメーションの作業に入るわけですね。たとえ監督お気に入りのシーンであっても、冗長と判断されれば容赦なくカットされてしまうようです。
これは、ソフトウェア開発で言えば、プロトタイプ・システムを作ってユーザーの立場から要件を徹底的にレビューするのに近いと言えないでしょうか(ちょっと強引^_^;)。そして、せっかく作ったのでもったいないからこの機能を入れようとか、お偉いさんがこの機能を入れろと言ってるからとかのしがらみに惑わされず、ユーザーの立場で真に必要な要件に絞って、最後に実装に入っていくということだと思います。
そういえば、Mr.インクレディブルでは、長女バイオレットの長髪のモデリングが非常に大変で、アニメータ達が「ショートヘアーのキャラに代えてくれ」と懇願したそうですが受け入れられなかったそうです。結局、長髪モデリング用の専用ソフトを開発したそうです。また、バイオレットが海中にいるシーンがストーリーボードのレビュー段階でカットされた時、アニメーターの人たちは狂喜したそうです(水中でゆれる長髪のモデリングはもっと大変だから)。こういう要件定義チームと実装チームのやり取りも、まさにソフトウェア開発プロジェクトそのものだなと思ってしまいました。