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システム内製化の三菱東京UFJ銀行とアウトソーシングのカルビー

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昨日のパネルディスカッションは圧巻だった。

ITR主催の「IT Trend 2009 特別コンファレンス」のパネルディスカッションで、カルビーの中田社長と三菱東京UFJ銀行の根本常務のお話が聞けた。司会は館野真人氏。

カルビーは、日進月歩のIT技術の中で、自前で社内システムを維持していくことは得策ではないと考え、ERP導入を機に完全アウトソーシングに切り替えた。
経営の右腕とも言える情報システムを外に出すにあたっては、以下の対策を取った。
1.SLMを遵守するための監視・報告体制を、やはりアウトソーシングした。
2.システムのアウトソーシング先へは、ユーザ部門が直接コンタクトできるようにした。
3.システム開発もアウトソーシングするが、これは2社以上にコンペさせる。
4.カルビー社内には、4名の少数精鋭のシステム企画要員を置く。

カルビーの中田社長は語る。
こうすることで、カルビー側は低コストで優良なサービスを手に入れることができ、アウトソーシング先は、景気の波に左右されない安定した経営を手にできた。監視体制を別会社としたことで、SLAが形骸化することはない。システム企画要員の育成をきちんとやれば、先々に問題が起こることもないだろう。

三菱東京UFJ銀行は、逆で、システムの内製化で今回の合併を成功させた。
銀行業務の根幹は情報システムであり、日進月歩のIT技術をいち早く取り入れグローバルな競争に打ち勝っていくためには、アウトソーシングは考えられないという立場を取った。
銀行のシステムというのは、社会のインフラでもある。これをアウトソーシングしたのでは、社会的責任も果たせないとも考えた。さらに、単に同業他社と競争するだけではなく、自社システムを同業他社に利用してもらうことを進めて行く。ビジネスだ。
システム要員の教育には500のプログラムを用意している。銀行業務が分かり、システムが分かるプロフェッショナルを育成できる。

中田さんは、システム開発というのは、開発が終わってからが楽しいのではないですが?とおっしゃる。私は思わず大きくうなずいてしまった。開発したシステムをユーザがどう使ってくれるか、現場に行って喜ぶ顔を見たくはないですか?。不具合があったら訂正し、使いやすくする、そして自分のやった仕事に確信を持つ。そうしてプロとして成長していくのではと。
開発が終わったら次の仕事では、楽しくないし成長もないでしょうとおっしゃる。我が意を得たり。

根本さんは、IT人材に求められているのは人間力だという。ハートウェアが大事だという。ソフトウェアとハードウェアだけではだめで、心が大事だと言う。その心は、柔らかい心、熱い心、そして強い心だという。偉業を成し遂げた方の言葉だけに心に沁みる。

お二人からは、これ以外にも目からウロコだったり、思わすひざを叩いてしまうお話を伺うことができた。100年に一度のチャンスだからイノベーションを思い切りやりましょうという共通の発言もあった。

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