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プログラミングでメシが食えるか!?

最近のソフト開発の仕事の傾向

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下期も残り2ヶ月ちょっとになりました。社内ではそれぞれの部・チームのリーダーが今季の成績見込みを見ながら、目標達成への追い込みをどうするか悩む時期です。

社内の事情を暴露するのもどうかと思うのですが、ブログを見てくださっている同業者の方もいらっしゃると思い、最近の仕事の傾向がどんな感じかを、中小企業のソフト開発系の会社の立場から書いてみれば参考になるかも知れませんし、情報交換のきっかけになるかも知れないということで、書いてみます。

受託開発では個々の案件の規模が小さくなっている

数年前までは、1案件で500万円を越える仕事はそれなりにありました。人月で考えると5〜6人月分でしょうか。1千万円を越える仕事もちらほらありました。ところが最近は大きくて300万円くらいで、100万円を切るような仕事が多くなりました。
背景には、

  • 大手SIerさんが抱える仕事が少ない状態のため、プロパーをできるだけ使い、部分的に小出しで下請に依頼する
  • そもそもエンドユーザさんが大きな開発をしない:景気もあるが、クラウドとかも影響?

というあたりではないかと感じています。
案件規模が小さいということは、隙間ができやすく、稼ぎにくいのです。仕事は大きくても小さくても調整期間が必ずあり、その間はお金になりません。また、案件規模が小さいと管理費やマージンを入れにくくなります。もちろん逆に、まとめてであれば一括でここまでやりましょう、ということがやりにくくなるので、個別のものを合計した方が高くなることもありますが、手間がかかることは間違いありません。

指し値をしてくることが多い

もともと予算はこれだけだけど、できる?という感じで相談いただくことが増えた気がします。昔は見積を提出してから値引交渉というパターンでしたが、下請法の関係などから値引を要請しにくいこともあり、予算を先に提示してくるケースが増えていると感じます。個人的には見積ほど面倒な作業はないので、以前から「予算を言ってもらえれば、それで最大限やりますよ」というお付き合いが多かったので、やりやすいとも言えるのですが、お客さんによっては指し値にあうように見積を細かく作成して、と言われることもあるみたいで、手間がかかるばかり、ということもあるようです。

常駐を希望する仕事も増えた?

情報セキュリティの観点もあると思いますが、常駐を希望する仕事も増えた気がします。常駐はお客さんにとっても良し悪しで、人手を欲しいというなら良いのですが、成果を期待するなら、マイナスも多いものです。来てくれた人のスキル以上の結果が期待できないからです。当社のような技術オタクメンバーが揃った会社では、それぞれの得意分野を出し合いながら仕事をすることが何よりも高い成果を出せます。同じ金額でうけるなら、明らかに常駐でない方が幅広く高い技術を提供できます。まあ、そういうパターンの仕事も当社の場合は増えているとも言えますが。

立ち上がりが遅く、短納期

なかなかGoがかからないのに、納期だけは決まっていて、結果的に非常に短納期、となる仕事が増えた気がします。下請法によれば発注前作業は禁止されていますが、やらないと間に合わないケースも多いと思います。背景には、エンドユーザさんがコストダウンなどで複数の業者に交渉していてなかなか決まらない、ということなどがあると思いますが、極端な短納期は結果として表に出ないまでも作りの質は下がることは間違いなく、トータルではあまり良くないこともあると思います(うける側の意見ですが)。

どう対処していけばいいのか?

こんな感じの傾向に、どう対処していけば良いのでしょうか。私はやっぱり受託開発業界は、すでにある意味円熟産業なのではないかと思っています。どこでもできる開発なら、価格や納期の戦いに巻き込まれるのは、どの業種でも同じことです。大手であれば、オフショアなどでコストの戦いでも挑めますが、中小企業はコストの戦いでは不利です。やはり、他ではできないような部分を狙わないと駄目だと思います。それは技術面や仕事の仕方など、様々なところで、とにかくお客さんが満足してくれるような対応をすることです。形式的な仕事ではまず儲からない時代になったと言えるでしょう。

しかし、どれだけ良い仕事をしていても、それを知ってもらえなければ仕事が集まりません。満足してくれたお客さんの口コミに期待、というのもありますが、開発の仕事というのはそう簡単に公開しませんから、せいぜい社内の横展開くらいでしょう。どうやって自分たちの仕事ぶりを知ってもらうかは、重要なポイントです。もちろん、他にはない技術などがあれば、それをアピールする方法はいくらでもあると思います。難しいのは、アピールするものがない場合でしょう。

私は受託開発にこだわりすぎないのもポイントかな、と考えています。当社の場合、受託開発で長年成果を出してきましたが、一部のメンバーは自分たちの技術を活かして、表舞台に立ちたい、つまり、自社製品を出したい、という動きをしています。売れれば儲かるのはもちろんですが、自社製品として名前を出せることによるメンバーのモチベーションUPや、製品から技術力を知っていただいて、開発の仕事をご相談いただける事も多く、そういう仕事は元々得意分野なので、効率も品質も高く、メンバーもやる気になるので、結果としてお客さんも喜んでいただけるものです。

このように考えてみると、結局は、「当たり前の仕事をしていては、儲からない時代」という、ごく当たり前の状況にソフト開発業界もなっているだけ、ということです。しかし、IT技術は今後ますます業種を問わず必要になる分野であり、その中でどれだけ自分たちの地位を固め、知ってもらえるかがポイントということです。受け身の姿勢では無理で、積極的な気持ちで取り組まなければ駄目ですね。

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